コロコロ変わる名探偵
ウエーブした黒髪が、金色のモヒカンを尾ける。
銀貨泥棒の一味だと目されている。
金の鶏冠が右、左、右と揺れて。
軽快なステップで車を避け、道路を横断して行く。
後を追う黒髪がダルマのように転ぶ。
一斉にクラクション。
金のニワトリはあちらへ飛んでいく。
ウエーブした黒髪をしならせながら、一人の女が歩み寄った。
「グエッ、コケッ」
撒かれた銀のコインチョコレート、夢中で拾うコケコッコ。
追いついた黒髪ダルマ。
「何をなさっているのです、警部」
女は、ダルマのウェーブ黒髪を剥ぎ取る。
「わ、私は名探偵コスティーナに憧れて」
「一体全体、信念というものがおありかしら。この間までポアロ、その前はホームズ、過去には金田一耕助」
「それは」
「コロコロと変わってばかりいるから、だから貴方は」
啜り泣く真っ白な脳細胞。
女は左の第八肋骨を引き抜くと、警部のウィッグをしまい、元に戻した。
「では、ごきげんよう」
彼女の名は、名探偵コスティーナ。
<了>
(400字/ ルビ込み403字)
「名探偵コスティーナ」でお題十本、何とか完走できました!
ご覧くださってありがとうございます。読み切りなので、どこからでもお楽しみいただけます。けれどけれど、順番にご覧いただくと、「登場人物のおかしみ」が感じやすいかもしれません。また、「コロコロ変わる名探偵」は、最終がオススメでございます!
1.アナログバイリンガル
2.しゃべるピアノ
3.金持ちジュリエット
4.数学ギョウザ
5.君に贈る火星の
6.空飛ぶストレート
7.1億円の低カロリー
8.違法の冷蔵庫
9.株式会社リストラ
10.コロコロ変わる名探偵