2024年のマンガ読み③
レッドブルー
総合格闘技マンガ。期待していなかったが、かなり面白い。
何がいいって、主人公、青葉のキャラクターである。少年マンガの主人公って好感が持たれるようなキャラであるべきなんだけど、青葉はちょっと特殊だ。とりあえずざっくりと属性を言うなら、彼は陰キャでありサイコパスである。
青葉の同級生にはケンシンという格闘技の神童がいる。青葉は彼の陽キャで自信満々なふるまいを嫌悪する。青葉は思う。「いつか彼を絞め落したい」と。そして青葉は格闘技を始める…(?)
そんな青葉は寝技の実力をつけていき、新人発掘的なトーナメントに挑む。トーナメントの次戦の相手はスポーツマンシップに溢れた打撃のホープである。青葉は彼の動きを見て気づく。「こいつ腰痛めてるんじゃないか」。試合が始まると、青葉はこの仮説に基づき、飛びつきの関節技を仕掛ける。相手は青葉の全体重を腰に受けながらのディフェンスを強いられる。この躊躇なさよ…
どうだろう、青葉というキャラクターが何となくでも伝わるだろうか。
そんなヤバい青葉に、それでもどこか共感してしまうし、応援してしまう。一つには、一部の陽キャへの不快感を多くの人が共有しているからだろう。それに加えて、青葉は常に彼の価値軸の中では真っすぐで、矛盾なく努力をしているからなのかもしれない。
総合格闘技の描写としては、迫力やケレン味はイマイチではある。だが、展開や技術の説明はしっかりしていて、攻防が面白い。迫力だけで格闘技としての中身がスカスカなマンガもあるが、格闘技オタクの自分としては技術論がしっかりしている方が好きである。(なお、技術論と迫力の両方で最高峰なのが、ある時期までの『はじめの一歩』であると考えている。)
ワールドトリガー
キャンペーンに乗じて231話までグイグイ読んだ。
作者はきっと、FPS形式のチームバトルを描きたいというモチベーションが第一なのではないだろうか。そして、それをe-スポーツマンガではなく、ジャンプ漫画に落とし込んでいる。
一読者としては、ストーリーもキャラクターも魅力的なので物語をゴンゴン進行させてほしいのだが、戦闘自体が面白いマンガなので、ずっと戦っている印象が強い。
また、チームバトルの性質上、登場人物も4人ずつとかそういう次元で増えていく。それでも読めてしまうのが凄い。最近の富樫よりもよっぽど整理がうまい。
作者の健康問題がありそうで心配だが、まだまだ先を楽しみにしたい。
(物語の核として、人間→ブラックトリガーの変化が可逆的であるか、がポイントになるだろう。それは空閑の目的でもある。そして、これがポイントならば、チカが一度ブラックトリガーになる展開があり得るのではないか。オラワクワクしてきたぞ。)
グッド・ナイト・ワールド
ザ・ファブル(第二部)
第2部。佐藤がレンタルおじさんになっている1話からして最高である。
内容としては、その後のアキラ、ヨウコ、アザミ、ユーカリが普通に生きようとしていて、でも不器用なのがすごく良かった。レンタルおじさんも不器用にやっているし、それで顧客に喜ばれることで「普通」の手ごたえを得ていく。
ヨウコはタコ社長への想いが恋心になっており、不器用に押しかけて失敗する。ナンパ男をつぶしまくって遊んでいた姿からは想像できないが、本人にとって本当に真剣な初めての恋だったのかもしれない。
殺し屋として育てられてしまった面々が、必死に普通を獲得しようとする光景が愛おしくて好きだ。一方で暴力団や殺し屋同士の抗争は、ストレスのたまる描写がじっくりと続くので苦手かもしれない。ファブルvsルーマーの全面対決は面白かったが、自分が読みたいのはそこじゃないという感じがあった。
最後、ファブルの構成員たちはボスの指令で散り散りに暮らすことを余儀なくされる。ボスにしかけられたチップも外さないことを選ぶ。まだ彼らは普通になれない。ただ、彼らは別れを惜しむことはできた。それはかけがえのない前進だろう。それに、組織は殺し屋よりも効率のいい方法を見出している。彼らが殺し屋として再び必要とされることもないのかもしれない。
だから自分はラストを、「普通」への道半ばではあるけど、色々と希望があるんだなという想いで見届けたのだった。
ヘブンの天秤
可愛い絵柄でダーク・グロ・残酷な世界観。そのなかで本当の救済とは何か、本当の天使の役割とは何かという感じ。それがタコピーだとわかりやすかったけど、こちらは終盤が弱かった(ようにみえた)。
こういうマンガで終盤が弱いと、グロや残酷さで読者を驚かせていただけか~という気持ちになってしまう。伝えるべきものがあって、手段としてのグロ、手段としての残酷だと納得させてほしかったな。
グッド・ナイト・ワールド・エンド
続編。前作は良かったのだけれど、これはわかりづらすぎる。作者のイメージを読者に伝えきれなかったのでは?