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ある格闘技オタクの緊張対処法
自分には緊張感と向き合う独特の方法がある。それは「試合前の格闘家の緊張感を想像する」というものだ。
もともと自分はふてぶてしい方だ。人前で話すのも嫌いではない。それでも、やはり場が大きいほど緊張感は高まっていく。
最近、ちょっと大きい発表の場があり、さすがに緊張してしまった。そこで久々に上記の方法で精神を統一して、落ち着きを取り戻すことができた。ごく一部の格闘技オタクにしか刺さらない記事になるが、書いておきたい。
レベル1:格闘家の抱く緊張感を想像する
格闘技の放送を見ていると、控室の映像が映し出されることも多い。ミットうちをしている選手もいれば、座って前座の試合を見ている選手もいる。ここでは、まだ緊張感はそこまで伝わってこない。
試合直前、選手入場を待っている舞台裏も写し出される。格闘技は競技でもあり、イベントでもある。だから選手入場の前に「煽り映像」というものが上映され、その後に格闘家がお気に入りの曲とともに入場していく。
「煽り映像→入場」の尺はそこそこ長い。選手は身体を冷やさないよう、それでいて体力を消耗しないよう、うつむき加減で小刻みに身体をゆすっている。斜め下を見つめるまなざしは集中しているようでもあり、覚悟を決めているようでもある。ピリピリとした緊張感が伝わってくる。
格闘家が1試合ごとに負うリスクは大きい。大ケガのリスクもあるし、築き上げてきた地位を失うことへの恐怖もあるだろう。生涯に行える試合の数だって多くない。一試合一試合が血の一滴のように重要なはずだ。
リングに上がる前に選手が感じている緊張感はどれほどのものだろう。これを想像すると、自分がこれから臨む場面というのが小さく見えてくるのだ。「恥をかいたらどうしよう」という程度の場面で緊張している場合じゃねえ。そうやって開き直れるのである。
レベル2:特に怖い格闘家への挑戦者を想像する
格闘家にも色々いるのだが、「対峙したら本能的な恐怖を感じるだろうなぁ…」と思わせるような、獰猛なスタイルの格闘家も存在する。
自分の場合、メルヴィン・マヌーフとヴァンダレイ・シウバが代表格である。
メルヴィンマヌーフやヴァンダレイシウバとの試合を控えた選手は、何を考えていただろう。
自分がこれから臨む場は、メルヴィンマヌーフの待つリングより怖い、そんなことが果たしてあるだろうか。
うまく行かなかったとして、ヴァンダレイシウバにボコボコにされるよりもひどい事になるだろうか。
そう考えると、自分が抱いている緊張感がちっぽけすぎて、乾いた笑いさえ出てくるのである。
レベル3:ヴァンダレイシウバの控室映像を思い出す
”それ”を見たのは2003年、PRIDEGP決勝だったと思う。素晴らしいイベントだった。吉田秀彦vsヴァンダレイシウバを自分は生涯忘れないだろう。
この大会で、全選手入場のオープニングセレモニーのあと、ベスト4に残った4選手のこれまでを振り返るような映像が流れた。サラ・ブライトマンの『Time to say goodbye』に合わせ、fight for what?というテーマで各選手の映像が流れていく。
ここで、ヴァンダレイ・シウバの控室映像に胸を打たれた。
彼はひざまずき、パイプ椅子に肘をついていた。
両手を合わせ、眼を閉じ、ブツブツと何かをつぶやいていた。
ある瞬間、彼はすっくと立ちあがると、胸の前で十字を切った。
彼は格闘家の顔になっていた。
あの無敵のバイオレンスヒーローですら、神に祈りをささげ、彼なりのやり方で恐怖と向き合っていたのだ。
勝負の場に立ち向かう困難さは誰でも大なり小なり抱えていて、自分なりのやり方で対処している。いい大人が「恥をかきたくない」という程度で緊張していることのなんと見苦しいことか。そんなもん、さっさと向き合って消化してしまえ。
あの控室でのヴァンダレイ・シウバの姿を思い出すと、こんな気持ちになるのである。
予期せぬ作用
上記の3段階が、自分がたまに利用する緊張対処法である。これには思わぬ作用もある。脳内が格闘技の幸せな思い出に満たされるのである。
本来、緊張に満ちた場面で他のことを考える事は難しい。「何かポジティブなことを…えーい終わったらカロリー気にせずスイーツ食ってやる」なんて考えてみても、どこかわざとらしくて空虚だ。
しかし、ヴァンダレイシウバについて思い出すということは、格闘技の幸せな時代を思い出すことと密接に結びついている。
吉田秀彦対ヴァンダレイシウバは良かったなぁ。そういえば同じ大会でミルコvsノゲイラまであったではないか。一つの大会としてはアレが金字塔かな。いや、PRIDE武士道だって…
連想ゲーム的に脳内が満たされていき、気づけば緊張感はどこかにいっている、なんてこともある。いや、これは気を逸らしすぎで、適度なレベルに緊張感を保つのがいいのだが…
ということで、困ったときはヴァンダレイシウバを思い出しましょう。