書籍『世界一やさしい「才能」の見つけ方』を試してみた
才能とは何か?
「あなたにはどんな才能がありますか?」と聞かれたらどう答えるだろう。習得済みのスキルだったり、学力や身体能力から答えたくなるかもしれない。だが本書の定義は違う。才能とは個々人の行動の特性に関連したものであり、単なる能力の高低ではないのだ。
誰かに頼まれたわけでもなく、損得勘定の結果でもなく、それでも「ついついやってしまうこと」。これこそが、自身の中に秘めた才能の現れだという。「努力している」とか、「頑張っている」とか、そのような自己認識もなく、当たり前のように繰り返している行動こそが才能なのである。
実は、同じ理屈を最近聞いたばっかりだった。才能研究について発信するPodCastの番組、「みんラボ」のシリーズをここ数ヶ月聴いていたところで、メインパーソナリティの佐野氏(通称たかちん)も同様の考え方を繰り返し発信していたのだ。
ということは、近年の才能研究はそういう趨勢になっているのだろう。
ドリル形式
そのような定義に基づいていることが本書の第一の特色だとしたら、第二の特色は「書籍のガイドの通りに手を動かし、考えれば自分のついついやってしまうことが明らかになる。」とドリル形式になっていることである。
一番基礎的なワークは、以下のような問いに対して自問自答をすることである。
他人にイラっとすることは?
親や先生によく注意されたことは?
やっちゃダメと禁止されると辛いことは?
あなたの短所を「だからこそ」と言い換えると
なるほど、確かに自分がついつい繰り返してしまう行動が浮き彫りになっていく。
このようなワークを活かしつつ、最終的には自分の行動特性(才能)を見出す。面白いのは、それが自分の才能だと確信を持てるように、実際のエピソードを複数添えておくように指示があるところだ。
自分の「才能」はこんな感じ
ということで、実際にワークをやってみた。
![](https://assets.st-note.com/img/1697808170866-mGAZtoMiof.png?width=1200)
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…なにか恥ずかしさを感じたので、5つ見つけた「才能」のうち3つだけ、それも恥ずかしいエピソードは隠す形にしてしまった。
自分を人材として評価しようとするとき、どうしても「習得済みのスキル」とか、「学力や身体能力といったパラメーター」について考えてしまう。
このような行動特性でまとめてみて見ると、自分という人間の別側面が出てくるようで面白い。それに、具体的なエピソードを添えると「確かに自分はこういう人間だ」という確信が湧いてくる。
そもそも、最大の特性らしい「コツコツと積み上げる」というポイントについて、自分はあまり自覚的でなかったかもしれない。
また、結婚式の終了後にスピーチ原稿を改訂したエピソードからは自分の異常性も垣間見える。
こういった特性を活かせる業務であれば、確かにストレスなく延々と取り組んでいけるし、努力している自覚もなく勝手にスキルアップしていけそうだ。これからの自分のキャリアの進め方にはいろいろな選択肢があるわけだが、「弱みを補う」というのは悪手で、こういった強みを活かす道を考えた方が良いらしい。
読書や字幕活動に劣らないぐらい、コツコツ積み上げるに値するものは何だろうか。完成度にこだわる人間ならば、アウトプットの質は上がり、数は減りそうなものだがどうしたものか。
そんなことをじっくりと考えることができ、中々に有意義な体験だった。
参考論文リストは形式に違和感
さて、本書を読んだことで、才能研究の最前線に興味が湧いてきた。そこで参考文献リスト・参考論文リストをチェックしてみた。まず困るのは、そもそも本文中での引用がされていないため、著者の主張がどの書籍・論文に基づいているのかは不明瞭なことだ。まあ一般書ではよくあることだが、著者は「私は色々な情報をまとめてわかりやすく提示することに才能がある」と言っているわけだし、だったら引用がしっかりできるところも見せてほしかった。
また、参考論文リストは見たことのない形式だった。
例えば以下のリンク
パーソナリティ特性の研究
https://psycnet.apa.org/record/2010-25587-001
このURLからは、”Validity of observer ratings of the five-factor model of personality traits: A meta-analysis.”という論文のページに飛ぶ。
うーん。サイトの引用のノリでやっているのだろうか。(だったら最終閲覧日も添えて欲しいが。)論文タイトルを直接書くのではダメだったのか。
こういうマナーで引用するのってカドカワでは常識なのだろうか。
「ついついやってしまうこと」こそが才能であるという論旨はかなり興味深いものであるだけに、その論旨が学術的にはどこからきたのか、それを確認したいのだが、それに速やかにアクセスできないことには不満が残った。