思いがけない景色
ボンダイビーチからタマラマビーチへの散歩道で、思いがけず心に深く残る景色に出会った。
シドニーでの生活が続く中、無理している自分に気づき始めた。周りに気遣うあまり、自分を後回しにしてしまっていたし、毎日がなんとなく空回りしているような気がしていた。日本に帰る日が迫る中、気持ちが沈んでいくのがわかった。
そんな時、ふと夕日が見たくなって、ボンダイビーチへ足を運んだ。学校をサボったことを少し後ろめたく思いながらも、ただ、海の景色に包まれたくなった。
なぜ人は夕日を見たくなるのだろう?美しくて儚い夕日は、どこか心を落ち着けてくれる気がする。日が沈む瞬間には、その日一日が静かに終わる感覚があり、自然と心もリセットされるような気がする。無意識のうちに、何かを終わらせるために、その美しさに身をゆだねたくなるのだろう。
空の青さ、力強く押し寄せる海の波、崖沿いに並ぶ穏やかな街並み――その全てがただ美しくて、気づけば涙が頬を伝っていた。
日本に帰らなければいけない寂しさや憂うつな気持ちが心の片隅にあったけれど、この景色を見ている間は、そんな思いも忘れていた。
広がる空と寄せる波、自然の大きな息づかいが、何も言わずそっと背中を押してくれるようだ。
空や海に心を動かされることはこれまでもあったけれど、泣くほど感動したのはこれが初めて。
この景色と、ここで感じた温かさは、きっとこれからも私の中に静かに残り続ける。