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ヘッダーは2019年に納棺体験をした時の写真です。
輪郭を透かし合わせてみてみればはみだしている
どこもかしこも
遠くへとあなたが投げた祈りへと一目散にぼく犬になる
♭が割れたリンゴのはんぶんに見える 運命の果実は毒
ブックマーク、電子の海の活字より一節を栞で掬うこと
Love Like Favoriteはごちゃまぜ 青い鳥も教えてくれたでしょ
所有されることの遣る瀬無いことと所有されないことの淋しさ
こわいことわからないこと滔々と喋れたのならここにはいない
思い出せない曲名を思い出す 検索候補の下から二個目
スピッツの「青い車」の理由って海の擬態色だからなのかな
アルコール消毒しています心を 身体感覚曖昧にして
ちかちかと純度の高い夕暮を宥めるような紫の夜
人生の腐りかけてるところだけ切り売りしたら売り切れました
裏切り者は敗走し訴える 愛と平和の痛みについて
聖書より引用されたことばたちどんなきもちで並んでいるの
なんかいも踏みとどまったなんかいも踏みとどまったまた夜の淵
常識のようにくすりの商品名諳んじるひとが嫌いでした
眠剤も安定剤も効かないなプラシーボの対義語はなんなの
だらだらとただ生きている いきているだけなのにただれていく あかく
当然のように息して生きられるひとたちきっと鰓があるのよ
鰓呼吸という響きのかわいさに思いを馳せて沈む浴槽
死ぬとわかっていて掬う命こそあれ、百円玉を香典として
さかなには素手で触れるな 全身を強く打っており、また大火傷
アスファルトに散った温水てのひらでかき集めれど滲みてゆく傷
新しいのもいるかいとおじさんの心配りを泣いて断る
水色のプラスティックの洗面器棺に変わる短い浅瀬
名付けるかどうか迷って愛着の湧かないように「おさかな」とだけ
泳ぎ舞う鮮やかな赤襦袢とて死骸となれば青臭く浮く
てのひらで掬って箸でつまみ出す 命より失われるすべて
庭先に小さな墓を建てたっけあの水仙の咲いてるあたり
つまんない語彙で詰んでるリズムだけ重ねて積み木遊びに似てる
なんとなく見たことあるような言葉それっぽく並べたなら啖呵
いつだって自分がいちばんかわいいよ 言いたいことがあるんじゃないの?
以上です。金魚の連作は幼少期の悲しい思い出です。