「おまえのママじゃない」問題 - 仕事における戦術的相互理解
トップ画は不穏なラベルが特徴のワインボトルです。
若手の育成でよくあるのが、「事細かに指示しないと動いてくれない」「言われたことしかやってくれない」「イレギュラーに対応できない」というもので、社会人3年目からもう社会人を辞めるまで一生ついて回る問題のように思います。
一方で指示をされる側に立つと「知識がないし知識をどう入手するかもわからない」「指示が部分的すぎて仕事の全体像が見えない」「どんな人柄かわからないのでどう接してよいかわからず、緊張する」「仮に指示以外のことをして失敗したら咎められるのではないか」みたいなことでなかなか実力を発揮できない、ということもあろうかと思います。
とにかくわかりあえていないようです。
このまま仕事を進めていくと、マネジャーは将来を見通してうまくいかない未来しか見えないので、部下を叱咤し、作業量が結果に線形になる単純作業だけを指示し、仕事の進め方においては自分に頼らせ、メンバーが取りこぼした仕事を巻き取る。一方部下は先が見通せず、マネジャーに頼りきりなり、言われたことをとにかく長時間かけて忠実にこなそうとする、という状況が生まれます。そして唯一の司令塔であるマネジャーの一瞬の気の緩みから計画が狂い、プロジェクトは燃えていく。。
そうしてマネジャーはこう思うのです「こんなに世話ばかりさせて、わたしはおまえのママじゃない」一方メンバーは「こんなにやってるのに、なんでいつもマネジャーは間違うのか」
分別ついているはずの大人の集まりが、なんでこんなことになってしまうのでしょうか。
私はある仮説を考えています。おそらくですが、「仕事の中身や個別のテクニックというよりはチームでの仕事の進める上での相互理解が不足しているのではないか?」つまり戦術に関する理解を増やしましょう、というものです。具体的には
・全員が仕事の最終的な目的を一言で述べられるか
・計画やスコープが文書化されていて全員がよく理解できているか
・メンバーのお互いの得意分野、スキルセットや性格が理解できているか
・マネジャーが状況判断や成果物の作成において、お手本となるように振る舞い、メンバーがそれを学ぶ姿勢を持っているか
・「こういう局面のときはこれを優先する」といった状況判断における原則がメンバー間で共有できているか
・各自が目的に対して自分の立ち位置を把握する時間、周囲を見渡す時間、考える時間を持っているか
・判断力が低下するほど精神的・身体的負荷をかけるような計画になっていないか
などなど
なので、マネジャーはまずは「そんなことはセンスの問題、わからない人は一生わからない」といった思い込みを一旦外し、コマンダーとソルジャーではなく一緒に目的を達成するパートナーシップを築く立ち回りが必要なのでは、と考えています。若手といえどもこのようなプロジェクトベースの仕事をするようなメンバーはそれなりにものわかりが良いはずですから、響くこともあろうかと思います。
メンバーも「自分が知識上・経験上知らない事柄や、視界に見えていないもの」がある前提で、目の前の仕事に集中しすぎない、マネジャーに甘えすぎないかという観点で自分の行動を見直してもらいたいです。
その上で甘えてくるのであれば「それはあなた自身が解決することでしょう、わたしはおまえのママじゃない」と言ってあげましょう。
また、大前提となるのがライン管理職などのシニアがきちんと上記のようなゲームの組み立てができているか、に配慮していることですね。