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子どもの頃に出してしまった一歩

 セミがジージーと鳴いている夏の日に、ぼくは割と頻度高く遊んでいた仲間たちと近所のスーパーにいた。

 暑さを誤魔化すためにいたのもそうなのだけれど、そのスーパーに置いてるゲーム機に友人たち数名で屯(たむ)ろっているのがスキだった。

 今から30年ほど前になるけれど、当時の記憶は薄れもせず、しっかりとぼくの脳に定着していて、未だに"あの時"の行動に対しての後悔は消えはしない。

 その時、なぜだかは理解できないけど、悪ふざけが過ぎてしまった。ダメなのだと思っていたのに、自制できなかったし、周りに対しても自発的な言動や行動を取れなかった。そのことについて書いてみる。

 誰かがワクワクした表情で言い出した。

 「おい、なんか食べようぜ!」

 スーパーに入る前には学校のグラウンドで遊んでいたし、そのあとも自転車でほうぼうに走り回っていたのから小腹が空いたのは間違いない。何よりも暑くて暑くてたまらなかったから、避暑地的にスーパーを選び、いつものゲーム機の前に屯っていた。

 存分に何をするわけでもなく、カラダを動かしていたので、お腹が空いてはいたし、それを何かしらの食べ物で満たせるのであれば、言うことはない。

 そこにいたメンバーは5名での中に、他のメンバーに対しても施しをできるような裕福な人間はおらず、ズボンのポケットを叩いてもビスケットはふたつになるどころか、一枚も入っていなかった。 

 そう、ぼくたちはお金を持っていなかった。

 一人が言った。

 「おい、やろうぜ。」

 もう一人が同調する。

 「そうだな、やろうぜ。」

 なんのことか判断もできないし、理解もできなかったが、なんだか興奮度合いが高まっているのだけは感じ取れたので、「何を!?何をやるの!?」なんてニコニコとしながら言い出した彼に聞いた。

 「もらっちゃおうよ」

 まだ何を言っているのか理解できなかった。スーパーで何をもらえると言うのか。誰にもらえるのか。どうやってお願いするのか。まったく持って言っている内容を把握できないまま、話がドンドンと進んでいく。

 5名中、1名は自宅に帰った。話の内容を理解し、それをやろうと血気盛んになっている連中を見て嫌気がさしたような顔をしていたのを、今でもはっきりと覚えている。

 「なんだよ、あいつ」「つまんねーの」

 そんな風に言う周りの人間に対して何も言うことができず、ただただ、空気に支配され、佇むだけだった。

 特にうまくいく方法を考えるわけでもなく、ただただその場所へ行き、目的物を入手するだけのずさんな戦術で、今考えてもうまくいくはずがなかった。

 そして、決行。

 周りに大人の気配がなくなるまで、ウロウロし、気配がなくなったのを確認したら手を伸ばし、服のどこかへ......

 ぼくは服の中に入れては出し、入れては出しを繰り返し「こう?こうやればいいの?」とわかっているのに、ただただ、そう聞きながら出し入れを繰り返した。

    見つけて欲しかったのかもしれない。

    自分が、ただただ流されて取り組んでしまってる愚行を、強制力の働かせられる大人に止めて欲しかったように思う。

    「おい、早くしろよ!」

    なんて具合に急かされたものの、ぼくは行為をやめるつもりはなかった。その間、30秒もなかっただろう。結果、店員の男性に見つかり、事務室まで連れてかれた。

     その店員さん含めて、大人の姿は何名か見えたが、結局、その人だけが対応にあたってくれた。おそらく、複数名のお店で対応したら……と気を使ってくれたのだろう。

     懇々と怒られた

    ぼくは泣いた。

    ダメなことだと理解していた。

    だけど、それを自制することも、逃げ出すことも、止めることも出来なかった。

     そんな自分が恥ずかしくて、情けなくて、悔しくてたまらなく嫌に思えた。

    ぼくたちは未遂犯として、こっぴどく叱られた。

    ぼくはものすごく納得しながら泣き、謝った。

   そして、安心した。

    自分が考える最悪を自分の手で達成せずに済んだことに、心底安堵したんだ。踏み出してしまった一歩は、きちんと把握され、きちんと整理された。

    いまに至るまでも、後悔は消えないし、恥ずかしい気持ちにもなる。そして、当時の店員さんである、あのオジさんが真剣に訴えかけてくれた表情と言葉は残り続け、訴えかけてくるものがある。

     あの時から30年ほど経ち、共に生活する長男は、そんなぼくを諌めるかのような真っ直ぐな男で、何だかこそばゆい。

    でも、彼なら当時のぼくを止められる。すっかり、越されてしまった。

    彼が迷ったりした際には、ぼくのこんな話をしながら、『自分ならどうするか』聞いてみようと思う。

     そんな話のタネになるのであれば、ぼくがした気恥ずかしい経験した事柄も無駄じゃなかったかもしれない。

    今日もお読みいただき、ありがとうございます。あなたはどんな失敗の一歩を踏み出したことがありますか?

ぼく:遠藤 涼介/Endo-san (@ryosuke_endo

#スポみら (元 #スポーツの未来に僕たちができること )オーガナイザー。 第一弾、新潟経営大学イベントの資金調達を目的に行ったクラウドファンディングは3サイトで募集し、すべて目標達成(総合達成率140%)#新潟 を #前向きな空気の溢れるエリア にすべく活動中。

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ゑんどう ≒ 遠藤 涼介
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