フリーランス・事業者間取引適正化等法案、通称「フリーランス保護法」の成立について
組織に雇われず個人として働くフリーランスを保護する「フリーランス・事業者間取引適正化法」が2023年4月28日、参院本会議で全会一致のうえ可決、成立しました。
この法律を簡単に説明すると、企業に対し、仕事の内容や報酬額などを書面や電子データで示すことや、報酬については60日以内に支払いを義務づけるなど、これまで唾棄されてきた最低限のルールを定めることになっています。
さらに、正当な理由のない業務内容の変更や報酬の減額など、あるまじき契約状況が発生することも禁じており、これらに違反した場合は公正取引委員会が立ち入り検査や是正の命令などを行い、従わない場合は50万円以下の罰金。
これについて「よう、わからん!」って人もいると思いますので、ちょっと解説みたいなことを在宅フリーランス(引きこもり失業者)の当事者として、やってみようと思います。
どうも、ゑんどう(@ryosuke_endo)です。
事業者間契約を明確にすることを目的とした法律
これまで、フリーランスが仕事を受ける際に保護を受けられる対象となる法律は下請法しかありませんでした。
下請法とは、今回成立したフリーランス保護法と類似する発注者からの下請けとなる事業者(個人法人を問わず)を保護する法律でしたが、発注事業者の要件に「資本金1000万超」といった要件があったことから、それ以下の発注事業者を取り締まる法律ではありません。
以下は『特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案(フリーランス・事業者間取引適正化等法案)の概要』ですが、条文を確認しても資本金の記載はなく、あくまでもフリーランスに向けて発注をする事業者に対する全ての事業者が対象となることが明記されています。
これまで義務化されていなかったことが信じられないというか、フリーランス側もきちんと求めろよって話ではありますが、契約条件の明示が義務化されたことで契約書や発注書、メールやチャットなどで明文化することも義務化されました。
ただ、これはフリーランス同士の取引においても必要となるため、いい加減な受注をしなくて済んだだけでなく、フリーランス側もいい加減な発注ができなくなったので、この点は留意が必要でしょう。
さらに、発注者側の支払い期日にまで法案の中に記載されており、業務の完了や納品から60日以内に支払いが義務化されており、どうしても立場が上となる発注者からの言い分を鵜呑みにして支払い日を先延ばしにされることがなくなることになります。
これ以外にも、契約の中途解除には30日前までに事前予告が必要となりましたし、育児や介護等への配慮をして、継続的業務委託を保持するよう努めることが求められるようにもなっています。
雑な言い方ですが、フリーランスも法律の傘のもとに入ることができるようになるのが、今回のフリーランス保護法だということです。
成立後も残る課題
この法案が成立したことによって、着実に増えはじめているフリーランスが堂々と活躍をできるような状況が整いつつあるといえますが、それでも課題がないわけではありません。
出産や育児などに関わる話で、労働契約を結ぶ従業員には育児によって仕事ができない時期でも育児休業給付金を受領することができるが、フリーランスは雇用契約ではないため受領することができません。
フリーランスの多くは国民健康保険への加入者でしょうから、出産手当金も各自治体による「任意給付」のため、出産したフリーランスは受領することができないわけです。
もちろん、事業を持続的・継続的にできるような仕組みを整えることがフリーランスの実力だといえばそうでしょうが、少なくとも「働く女性」という意味では雇用契約があろうがなかろうが一緒なわけですから、そこに格差があることは課題だと言えるでしょう。
さらに、実質的には雇用契約を結んでいる従業員と全く同じ働き方をしているのに、雇用主側の財源がないことからフリーランス(個人事業主)として契約を結びながら働く、隠れフリーランス問題も今回の法律では触れられていません。
労働者と同じ働きをしているのにも関わらず、契約上は個人対企業との間で事業契約を結んでいることになっているのだから、発注事業者からすると働かせ放題といったことが可能になりますので、これも課題だといえます。
フリーランス側もいい加減な受注をしないこと
今回の法案が通ることを見越してか、経済産業省からは副業・兼業支援補助金が2023年3月31日から公募されています。これは企業が副業や兼業人材を送り出したり受け入れたりする際に発生する経費への助成をするもの。
いきなりフリーランスとして独立した働き方や契約を結ぶことをせず、副業や兼業といった形で複業者を増やしつつ、フリーランスへの足掛かりになることを考えると、企業側としても経費負担が減るのなら…と手を伸ばしやすくなると言えるかもしれません。
ただ、今回のフリーランス保護法。2024年秋までに施工を目指す形で整備されていくわけですが、それ以降であってもフリーランス側はフリーランス側でいい加減な受注をしないことも注意する必要があります。
安請け合いをしてしまったがために、想定以上に大変な仕事だったり、受けるべきではない(法令に触れるような仕事など)を受けてしまったりと、フリーランス側のリテラシーが問われるような事態は増えるでしょう。
今回の法案には契約内容を明示することが付記されていますが、これまで、それを求めてこなかったフリーランス側にも問題があったといえます。
発注者側の立場が強くなるのはわかりますが、翻ってみると、それはフリーランス側が見合った成果物を納品してくれないからであり、事業者側からして代替が効く存在でしかなかったわけです。
ほんと、自分で書いておきながら非常に情けなくなってきますが、そういういい加減な実力しかないのにフリーランスと名乗りながら、事業者から契約を切られたからといって叫ぶのはお門違いだと言えるでしょう。
事業者間契約なのですから、成果物や納品物は事前に協議できる交渉力自体が必要であって、それができないのならフリーランスなんてやめて会社員をやっていた方が身のためだと言われても仕方のないことなのです。
おわりに
冒頭にも書きましたが、ぼくはそんな実力も交渉力も持ち合わせていない、弱小な自称フリーランスの在宅ワーカーです。別の言い方をすれば、引きこもりの失業者。
失業者だから、身銭を稼ぐことに必死にならざるを得ないわけで、仕事をもらえるのであれば喜んで尻尾を振ってしまうような節操のなさが売りだったりします。
いろいろなお仕事をいただくことで、それぞれの仕事が他の仕事にも影響を受けてうまくいくような状況になることが多く、それが失業者なりにお仕事を受ける中で感じるおもしろさです。
そんなわけでお仕事の相談、お待ちしてます。
ではでは。
ゑんどう(@ryosuke_endo)
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