あらゆる組織でDX(テック導入)の前にすべきこと
どうも、ゑんどう(@ryosuke_endo)です。
(ごめんなさい。今回、ちょっと長くなってしまいました。)
ぼくが住んでいる街の名前は新潟県新潟市です。東京や大阪、福岡といった大都市や地方都市の中でも先行事例的に取り上げられるようなことの多い年と比較すると、あまりにも平易で何もないけれど景色とご飯と人がいいって「どこにもある謳い文句」を使いたくなるような地方都市です。
地方だからってわけではありませんが、ぼくがお邪魔する機会のある中小規模の事業者さんはテクノロジーの導入に遅れを取っていると言わざるを得ない企業が少なくありません。
たとえば、とある企業では、依然として手作業や紙による在庫管理や、古いバージョンのExcel(なんと2010!Microsoft Officeの買い切りソフトで導入して以来、インターネットにも接続しないからという理由でそのままに…)を使った決して効率がいいとはいえない環境下で業務が行われていました。
そういった事業者は自然淘汰される流れにあるのだろうとする意見は重々理解できますし、ぼく自身、どちらかといえば、そちらの考え方に賛同する人間ですが、お邪魔するような関係性になってしまうとどうにかしたくなってしまうものです。
素晴らしい生産技術や商材を持っているという素地、あるいは土台があるので、それを活かせばまだ闘えます。
しかし、そういった環境であるがために生産性が低く、競合他社と競り合う上で大きなハンディキャップとなっているのは否めない状況です。が、ただ嘆くだけでは解決しませんし、どうせなら当人たちがその気になっているのであれば変えていきたいじゃないですか。
DX|《デジタルトランスフォーメーション》って言葉は好きではありませんし、安易に使っていきたいとは思わないのですが、テックを導入し生産性を抜本的に改善することは都市部の企業にだけ適応すべきものではありません。
地方にある埋もれた名も知れぬ中小企業でも十分に取り組むことができ、そして取り組むべきですよねってことをどういうプロセスを経ていったらいいのか、なんてところからツラツラと記載していくことにします。
業務改革やDX導入前のステップ
まず、DXだろうが業務改善や業務改革であろうが関係なく、何かを取り組み成功させるためには、導入前の準備が非常に重要です。
準備というか、現状の認識と何が不足しているのかといった情報の収集に全力を挙げて取り組むべきで、それをしておけばどんな問題解決にも対応が可能です。特に中小企業のように極めて限られたリソース(経営資源)を最大限に活用する必要がある場合には、それ以外にすべきことはありません。
業務プロセスの棚卸し
まず最初に、現在の業務フローを詳細にマッピングします。現状の業務フローを阻害している要因は何かを明確にします。
これ、特に製造業なんかでは業務プロセスの改善をひたすらに取り組んでいたりします。何銭単位を業務工程の中から省こうとするって現場に出会したことが一度や二度ではありません。そうやって無駄なステップやボトルネックを明らかにすることで、品質の担保だけでなく安心や安全を確保しようってことなんですよ。
ただ、製造業以外の中小企業では古|《いにしえ》から続く謎ルールや改善することを忌避するお局的な存在がいたりすることによって客観的にみたら明らかに生産的ではない、なんてことが起こっていたりしますので、この段階こそが何よりも重要になります。
KPIの設定
業務プロセスを改善に限らず、仕事には何かしらの目標を明確にする必要があります。いわゆるKPI(Key Performance Indicator: 主要業績評価指標)を設定します。
たとえば、顧客対応時間を20%短縮するとか、製造にかかるコストを15%削減するなど、具体的な数値目標を設けることが有用なのはいうまでもありませんが、少なくとも「その業務プロセスを改善することによって得られる恩恵」をしっかりと立てておくことが不可欠です。
在庫管理の効率化を図ったこと(手書きしていたものをデータとして残す、Excelへ手入力による集計ではなく自動で入ってくるような数式や仕組みを入れる、など)で、どれだけのコスト削減が期待できるのかを仮説立てて検証していきます。
従業員へのインタビューやフィードバック
実際の業務を行っている従業員にインタビューを行い、フィードバックを収集します。設定したKPIが適切なのかどうかを検証することもそうですが、実態に即した改善が可能なのかどうかを知るためにも、現場を知る人たちの叡智を集めることによって見えてくるものがあります。
特にベンチャーやスタートアップに限らず、歴々の中小企業では、従業員が多くの業務を一人で担当している場合が多く、その人自体がボトルネックになってしまっているケースもありますから、その人を含めてどう改善したらいいのかを建設的に進めていくためにも、その意見を尊重する必要がありますし、何よりも非常に価値があるものですから集めない手はありません。
プロセスの最適化
棚卸しを行い、目標を定め、利害関係者にヒアリングを行うところまで行ってから初めて「最適なプロセスとは何か」を模索します。
当然、情報を収集している段階であーだこーだと頭の中に浮かんできますし、改善した方がいい点を口や形にしたくなりますが、ここまでは我慢しておきます。アイデアとしてどこかに残しておくことしてもいいですが、本格的に検討するのはここからです。
ビジネス(経営指標:財務指標)に直結するKPIの設定と、業務プロセスの無駄を排除し、効率的なプロセスを設計します。ここでもまだ、導入するテクノロジーの検討はしてはいけません。テクノロジーありきで業務プロセスを見直そうとすることは本末転倒です。テクノロジーが先なのではなく、業務プロセスの改善が先なのです。
テクノロジーの選定
ここまできてやっと、最適化された業務プロセスに合わせて、適切なテクノロジーを選定します。わかりますか。テクノロジーの導入にばかり頭がいってしまうと「導入してみたはいいものの、さっぱり生産性が向上しなかった…」とか平気で起こります。
クラウドサービスやSaaS(Software as a Service)を活用することで一気にコストが削減できることは明白ではありますが、本当に導入すべきサービス・ツールなのかを検証する意味でいうと、業務プロセスを見直すことが先であって、テクノロジーの選定は最後の最後まで取っておくべきなのです。
生産性低下のリスクとその原因
先にも触れた通り、テクノロジー導入が必ずしも成功につながるわけではありません。導入後、生産性が低下するケースも少なくありません。
たとえば、ある小売業者がPOS(Point Of Sale)システムを導入したとしましょう。経営者は嬉々として「これで精算が自動化されるから生産性爆上がりだぜ!」なんて喜びを爆発させていたとしても、従業員が新しいシステムに適応できず、かえって業務が遅くなってしまう、なんてことが存分に考えられることです。
技術とスキルのギャップ
従業員と新しいシステムとの間を埋める意味でも、その適応時間を確保する必要がありますし、どうしてもこの過程で生産性が一時的に低下することは仕方のないことだといえるでしょうから長期的な視点で見ていく必要があります。
業務プロセスの不一致
他にも考えられることとしては、ERP(Enterprise Resource Planning)システムを導入したものの、既存の業務フローと合わなかったため、業務が混乱するってことも考えられます。
(余談ではありますが、ぼくは日本の中小企業がそれぞれの業務フローを持ってしまい、独自のシステムを構築しなければならない状況になっていること自体がDXの進まない大きな要因だと思っているので、システムを業務に合わせるのではなく、業務をシステムに合わせるようにすれば定型的な機関システムを入れるだけで済むのになぁ…とか考えてます。)
従業員の抵抗
他にもありそうなものとして、地方の飲食店が予約システムを導入したところ、従業員から「電話と紙で管理する今までの方法で十分」という抵抗があり、新システムがなかなか浸透しなかった。
これはぼくの実家でも存分に想定できた事例だったりします。
平成から飲食業をはじめた人たちは、まだシステムを導入することを受け入れることはできるかも知れませんが、昭和から続く飲食事業者の場合、どうしても上記の技術・スキルギャップに心理的な敷居を乗り越えることができずに「これまで通り」を貫こうとしてしまいます。
結果、味方であるはずの従業員からの抵抗に遭い、導入したとしても使われずに文鎮と化してしまい、数ヶ月後には埃をかぶっている...なんてことも往々にしてあるでしょう。
こういったことを考えると、改めてテクノロジー導入には計画性と従業員の協力が不可欠であるという点が浮き彫りになります。特に中小企業では、リソースが限られていますから失敗は許されません。失敗しようものなら「ほら見たことか!」みたいな煽りを受けてしまいますので、しっかりとした計画と準備が必要だってことを強調しておきます。
DX推進のためのコミュニケーション戦略
で、組織における何かしらのプロジェクトを推進していくにあたり、大事だよなぁ…って考えているのは、何を置くにしてもコミュニケーション、意思疎通です。
経営者であろうと現場の一担当者であろうと、業務改善を図るためのプロジェクトにおいて成功に一歩でも近づけるためには当事者である所属する人員がすべからく、その重要性と目的を理解することが必要です。
正直、かなり大変です。
ぼくも過去にグループ企業の情報システム部門にいたときに300台以上の古いパソコン端末を新型のものに入れ替えるってプロジェクトの一端を担いましたが、嫌になりましたもん。
その際に痛感したのは、目的の共有と重要性の理解をどう促していくのかって話で、それ以上でもそれ以下でもないんですよね。
ビジョンの共有
業務改革を行う目的とその理由を明確にし、全社員に対してこれを繰り返し伝えます。全社員が目指すべき方向性を理解できるように落とし込むことも準備段階の一つです。
現場が「どうせトップダウンでしょ」みたいな態度をとるようになってしまうことのないよう、現場レベルでも恩恵を受けることができる旨をきちんと認識・理解してもらわなければ、できるものもできません。
オープンなフィードバック環境
結局、大掛かりなプロジェクトにしなければならないほど、小さな改善を重ねることもしてこなかったわけですから、常に従業員からのフィードバックを受け入れる文化や雰囲気を醸成する必要がありますし、それを今後の業務改善に活かし続けるっていう組織改革も含めての業務改革だったりしますよね。
教育とトレーニング
新しいテクノロジーに対する理解を深めるための教育プログラムやトレーニングの時間って必ず必要になるのは当然ですし、やらずにデジタルツールを入れましょうとか、なるわけがないじゃないですか。
これって、たとえばパソコンみたいな日常的に業務で使用する端末が入れ替わったとしても必要なことだったりしますし、情報システム部的な人たちは「いかにこれまでと齟齬がない状態にするか」ってところまで考えて端末のセッティングを行ったりします。
OSが変わるって使い勝手が変わるってのと同義だったりしますから、その変わる内容と極力抑えつつ、現場の業務に支障が出ないように…なんて気づかいを迫られるのがシステム屋さんにとって腕の見せどころだったりするわけで。
おわりに
書きはじめたところからダダダっと書き殴ってきてしまったのですが、ここを書き終えたら、一応は誤字脱字的なチェックをして公開しようと思います。
で、なぜにこんなことを書いたのかっていうと、以下の書籍を読んだからってのが一番大きな要因ですね。感化されやすいっていうかなんていうか。
ツールを導入することによって解決することはあるでしょうが、それよりも社内の情報整理が大事だよねって話を書きたかっただけなんですけどね。
ではでは。
ゑんどう(@ryosuke_endo)
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