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日本語話者による労働供給制約社会で生きる是非

労働供給制約社会がくる

これはリクルートワークス研究所の特設ページである『Works未来予測20XX』内にある報告書「未来予測2040 労働供給制約社会がやってくる」のタイトルである。

リクルートワークス研究所は、日本が労働力供給不足に陥る「労働供給制約社会」になることはほぼ確実で、日本は高齢化と少子化が引き起こす労働力の需要と供給の平衡性崩壊が大きな課題であることを指摘している

特に、物流や建設・土木、介護・福祉、接客などの「生活維持サービス」の分野で既に需給ギャップが顕在化しており、著しい人手不足に陥っているため、この問題を放置することは私たちの生活に大きな影響を及ぼすことになると警告している。

今回は、この報告書を解説することにチャレンジしつつ、労働者・就労者が個人としてどう生き残っていけばいいのかを模索する機会にしようと思う。
どうも、ゑんどうです。

現象として起こることが確実な”労働供給制約社会”とは

まず、早速で申し訳ない。余談になるのだが、よく現代はVUCAの時代だと言われる。予測ができない時代、変化の激しい時代だと。

"VUCAの時代"とは、不確実性(Volatility)、不安定性(Uncertainty)、複雑さ(Complexity)、曖昧さ(Ambiguity)という4つの特徴を持つ時代を指すもので、辿っていくとアメリカ軍が冷戦期に使用していた言葉だ。

その後ビジネス分野でも広く用いられるようになり、今となっては教育など幅広い分野に使われる、つまり一般化した。

ボクとしては「もう、いい加減にして欲しい」と思うものでしかない。

そうやって横文字を並べてそれっぽく危機感を持ったような書き方をして恐怖心を煽ることが目的なのだろうが、VUCAの時代を使う人ほど何も言っていない。要は、VUCAの時代と書くことによって思考停止しているのだ。

しかし、使い勝手がよく、VUCAの時代と書けばそれらしい言葉として認識されるであろうことからパワーヒットしているのだろうと踏んでいる。

リクルートワークス研究所が行った労働需給のシミュレーションによると、2040年には1100万人余の労働供給が不足すると予測されているが、もう少し手前の2030年には341万人余が不足すると予測されている。

この問題は、高齢化に伴う人口動態の変化が主な原因であり、物流や建設・土木、介護・福祉、接客などの「生活維持サービス」に影響を及ぼす可能性があるが、こんなことは完全に予測できたことだ。不確実でもなければ不安定でもないし、複雑でもなければ曖昧でもない。

人口動態なんて出生数と死亡数が把握できれば、10年後や20年後が見える、徹底的に虚実入り混じらない純粋な数字なのだから、小学生で数字を読む力があれば問題なく数字を見た上でどういう未来がくるのかを予測することが可能だ。全然VUCAではない。とにかく労働力の供給、絶対量が不足するのだ。

労働需給のシミュレーションから見える「パターン」

労働供給量は2027年頃から急激に減少する局面に入り、2030年には約6,337万人、2040年には5,767万人へと減少していく見込みだ。

その一方、労働力を求める労働需要は2040年までほぼ横ばいのまま推移すると予測されており、高齢人口が増加する業種での労働の消費量は増加する可能性が高い。

具体的には、輸送・機械運転・運搬職種において2030年には37.9万人、2040年には99.8万人の労働供給不足に達することが推定されている。また、介護サービス職種においても2030年には21.0万人、2040年には58.0万人の供給不足が見込まれるそうだ。

東京都以外のすべての道府県において、2040年には労働供給が不足する状況が推定されており、供給不足の状況が以下の4つで推移することがほぼ確定している。

① 2030年・2040年を通じて不足率が高く、早い段階から供給不足が顕在化し継続する地域
② 2030年は比較的足りているが、2030年から2040年にかけて急速に供給不足が顕在化する地域
③ 2030年はやや不足しているが、2030年から2040年にかけてその状態を維持する地域
④ 2030年・2040年を通じて比較的不足率が低く推移する地域

その中で、東京都は2030年・2040年を通じて労働需要が充足しており、労働供給制約に直面しない。つまり、労働供給制約社会の実態が見えないのだ。

このことが日本の政治・経済における労働供給制約への議論を阻害するおそれがあるとリクルートワークス研究所は警鐘を鳴らしている。

労働者を含めた無駄を減らせるのかにカギがある

このような状況は、従来の労働需給の枠組みや仕組みを大きく変化させなければならないのだが、その流れや仕組みが整うまでに企業経営にも大きな影響(特に打撃)を与えることが予想される。

サービス水準は低下し、後継者不足の地場企業は事業を畳むことを余儀なくされるだろう。

2023年現在、人手不足が深刻化しているとされているが、この状況ですら序章にすぎず、2040年までの人材獲得はますます困難になることは上記してきた通りで、企業による人材獲得競争が一層激化することが予想されている

先日、個人的なネットワークにおいて会計領域のコンサルタントをされている方から話を聞く機会に恵まれた。その人が所属する組織でも人材の獲得に苦慮されていると述べており、人材エージェントに支払うフィーが通常の倍以上になっている旨を嘆いていた。

持たざる者は、いよいよ与えられることがなくなるだけでなく、望んで獲得することすらできなくなっていく世界線に突入しているのである。

労働供給制約社会への対策として、リクルートワークス研究所は「機械化・自動化」、「ワーキッシュアクト」、「シニアの小さな仕事」、そして「仕事におけるムダ改革」を提案しており、これらの対策によって、労働需要を減らすことと供給を増やすことを同時に実現しようというのだ。

機械化・自動化は、長時間労働を解放する、身体的な負荷を下げる、人間が本来必要とする業務に集中できるなどのメリットが挙げられるが、何よりも人手不足でどうしようもない業界が機械化することによって業界破綻の危機を乗り越えることが本筋だ。

ワーキッシュアクトとは、労働市場において、労働以外のさまざまな活動を含めた、より広い意味での「働き方」を重視する考え方だ。リクルートワークス研究所は、娯楽や趣味、コミュニティ参加などの活動が労働供給につながることを示し、豊かな持続可能な社会を作るために重要であると述べている。

今後、「働くとは何か」を個々人が定義するようになるのだろう。いや、定義できるような人材でなければ働くことができないと言えるかもしれない。機械化や自動化、無駄を省くこととはそういうことである。

働くことの定義が個々に出来上がってくると、必然的に趣味と実益を兼ねた活動が増え、「それって仕事なの?」と5年前に言われていたようなことは、それぞれの定める「働くこと」によって仕事とみなされるようになるはずだ。

リクルートワークスの報告書では、全体的に、人間と機械が有機的に連携して新しい働き方が生まれることが求められ、担い手の増加に向けた柔軟な発想が必要であることが強調されているものの、無駄を省いて合理的に業務をスリム化していこうとすればするほど、人に仕事をさせない就労環境を整えることが重要になってくる

効率化と合理化の先にあるのは人による生産的な就労環境ではなく、無機質な無味無臭空間の機械的な世界なのだ。

おわりに

長々とレポートをなぞるだけなぞってきたのだが、労働供給制約社会の問題に直面する日本の中で、マスの問題を個人で背負い込むことはしなくていいはずだろう。

個人は国の枠を超えて働くことで新たな機会を見つけることができる。インターネットが張り巡らされ、グローバル化が進んだ現代では、国際的な経験や異文化理解力を持つことが個人の競争力を高める要素になる。

仮に、国境を越えて働くことができれば日本では得られないような高収入を得ながら、治安の良さやコストパフォーマンスの高い国での生活を選択することも可能になり、それも幸福の形だろう。

国としては労働供給制約社会の問題に取り組むことが求められるだろうから、国全体の労働力不足や高齢化による経済停滞を防ぐためにも、国や企業が働き方改革や教育制度の改善に取り組むことが重要なことは理解できる。
理解はできるが、国が抱える課題や問題と個人の幸福を同一視することはできないし、すべきでもない。

ボクの世代では日本語話者の就労者が不足していく未来を変えることはできないだろうが、少なくとも30代前半や20代の人たちは未経験者であろうとも関係なく、受け入れてくれる企業が増えてくるだろう。「34歳?まだまだ若手だよ!」なんて世界線だ。

さらに、ボクと共に暮らす子どもたちは少なくとも10年後の2033年の世界戦から社会に飛び込んでいくのだろうことを踏まえると、あらゆる業種や職種を選び放題になっていることも考えられる。

誰かのピンチは誰かのチャンスになると聞くが、その世界線がチャンスなのかどうかは判断が難しい。ただ、少なくともボクにとってはどちらでもなさそうである。なんとか必死に生き延びることを考えていこう。

ではでは。
ゑんどう(@ryosuke_endo


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