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武装少女とステップ気候

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クルドの少女による、ハードボイルドマカロニウエスタン系童話
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2015年11月の記事一覧

Ω:血と精液に塗れたラヴ&ピースをあなたに

Ω:血と精液に塗れたラヴ&ピースをあなたに

 高良清彦は日本国陸上自衛隊に所属する自衛隊員のひとりでした。受験勉強に明け暮れた高校三年の冬、そして大学を卒業してからというものの、特に目的もなく、普通の恋人が居て、普通の人生……そう形容するのがぴったりだと、彼は思っていました。彼が自衛隊に入ったのは、一枚の写真が切っ掛けでした。当時の9・11テロ、それからイラク戦争……戦場カメラマンの捉えた破壊された街の写真を見て、彼なりに、漠然と、世界に対

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9.海を知らぬ少女の前に麦わら帽の我は (4)

9.海を知らぬ少女の前に麦わら帽の我は (4)

 色を失くした世界で、少女は煙の昇る拳銃を構えていました。
 アノニマと呼ばれた少女は、瞳孔がきゅうう、とピントを合わせるのが分かって、倒れた男を見やりました。それはヨーイチ・ハルノ=ホセアと呼んでいた男の肉体でした。そしてそれはぴくりとも動かず、仰向けになって、間違いなく心臓を貫いた銃弾の風穴の開いた、赤茶けたメキシカン・ポンチョを、吹雪にいたずらに揺らしているのでした。
 少女は銃口を外しまし

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9.海を知らぬ少女の前に麦わら帽の我は (3)

9.海を知らぬ少女の前に麦わら帽の我は (3)

 浅く雪の降り積もる黒の海の中に、ぽっかり浮かぶ火の島がありました。人間の原始の発明は、冬の寒さを凌ぐために不可欠のものでした。そうでなくとも冬至の近付く北半球では、夜の長さは日々延びてゆき、馬とロバ、それに男と女の二匹と二人は、合わない歯の根をがちがち言わせながら、虚無の宇宙空間へ放熱してゆく孤独の寒さに震えていました。森の中で炎は揺らめいており、そして伸びる影も同様でした。
(花は私を嘲笑う、

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9.海を知らぬ少女の前に麦わら帽の我は (2)

9.海を知らぬ少女の前に麦わら帽の我は (2)

 ニガヨモギという名前の星が落ちて、アノニマは狼の毒(トリカブト)を瓶から井戸に垂らしました。そうして、薬草アルテミシアから抽出・蒸留された、『不在(アブサン)』という名前の酒を一口飲むと、コブクロの痛みはなんとなく治まってくるようでした。
「なんで、毒を?」
流れ星に祈りを捧げていた小さな母親が、向き直って尋ねました。夜の雪はしん、と青白く黙っていてアノニマは答えました。
「敵が追ってきている。

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9.海を知らぬ少女の前に麦藁帽の我は (1)

9.海を知らぬ少女の前に麦藁帽の我は (1)

 ステップ気候は雨季でした。空から落ちる雨粒は急速に冷却されて、結晶となり、柔らかな太陽の光を乱反射させて雪になりました。
 色を失くした世界で、少女は煙の昇る拳銃を構えていました。
 アノニマと呼ばれた少女は、瞳孔がきゅうう、とピントを合わせるのが分かって、倒れた男を見やりました。それはヨーイチ・ハルノ=ホセアと呼んでいた男の肉体でした。そしてそれはぴくりとも動かず、仰向けになって、間違いなく心

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