DPP4阻害薬はなぜ第一選択薬になれないのか
日本でシェア1位の糖尿病薬・DPP4阻害薬.
低血糖は起こりにくく,従来薬のSU薬のような体重増加の懸念もなく,膵β細胞の疲弊も起こりにくいとされる.
一見すると,理想の糖尿病薬にも思えませんか?
なぜ,DPP4阻害薬は第一選択になれないのでしょう.
結論:エビデンスの欠如
結論としては,DPP4阻害薬が第一選択薬になれないのは,全死亡抑制や心血管イベント抑制効果などのアウトカムを改善させたというエビデンスがないからです.
安全性が高く優秀な薬剤なので,発売当初から様々な臨床試験で評価されましたが,信憑性の高いアウトカム改善エビデンスは今に至るまで確認されていません.
その他の懸念:薬価,肥満
また,高いコスト,すなわち薬価の問題もあります.
日本のように保険診療の敷居が相当低い環境でもない限り,なかなか使用しづらい,というのが世界の現状です.
また,世界標準のエビデンスとして,まず対象となりやすい欧米人は,日本人などのアジア人に比して肥満患者が多くなります.
DPP4阻害薬は肥満患者に効きにくい特徴があることも,全世界的な推奨度を上げにくい要因となっています.
ライバルの台頭
さらに,より新しい薬剤であるSGLT2阻害薬が,DPP4阻害薬のアキレス腱であったエビデンスの点で好成績を残してきています.
先日,DPP4阻害薬とSGLT2阻害薬のガチンコ勝負でも,DPP4阻害薬が打ち負かされたことが,BMJ誌2020年9月23日号掲載された観察研究で報告されていました.
それでも使用されるDPP4阻害薬とは
やはり,使いやすさ,安全性の点で,DPP4阻害薬が魅力的な薬剤であることは,間違いありません.
ますます高齢化していく社会の中で,副作用の少ない薬剤を選択した方が良い場面は少なくありません.
DPP4阻害薬を使用する際は,メリットデメリットを意識して使用していきましょね.