【気管支喘息,COPD】閉塞性肺疾患に対するβ遮断薬の使用【禁忌なの?禁忌じゃないの?】
β遮断薬は,心筋梗塞や心不全症例での予後改善エビデンスがあります.
しかし,気管支喘息やCOPDのような閉塞性肺疾患を合併していた場合,呼吸機能の悪化を懸念して,使用が敬遠されます.
今回は,閉塞性肺疾患合併症例に対するβ遮断薬の使用に関して解説します.
気管支喘息に対するβ遮断薬
非選択性β遮断薬は,β1受容体だけでなく,β2受容体も遮断します.
これが悪いんです.
そもそも,β2受容体は気管支にも存在し,β2受容体が刺激をされることで気管支平滑筋が弛緩,気管支拡張作用となります.
ゆえに,気管支喘息の方は,β2刺激薬の吸入をするわけです.
β2作用を遮断することは,β2刺激薬を効かなくするだけでなく,気管支攣縮のトリガーとなることもあるんです.
ゆえに,基本的には気管支喘息症例へのβ遮断薬の使用は禁忌とされます.
では,気管支喘息症例には絶対にβ遮断薬を使用しないか?
答えは,NOです.
使用します.
ただし,注意点があります.
注意点➀
喘息発作のコントロールがついていない場合,β遮断薬の導入はしない.
まぁ,当然といえば当然ですよね.危険です.
喘息だって悪化したら死にますからね.
注意点➁
β1選択性の高いβ遮断薬を選択する.
これは先ほど述べた通り,気管支への悪さをするのはβ2遮断作用なので,β1選択性が高ければ高いほどgoodです.
内服薬で最もβ1選択性が高いのはビソプロロールであり,ビソプロロールは予後改善エビデンスもあるので,実質,気管支喘息症例に用いるβ遮断薬はビソプロロール1択です.
注意点➂
投与は少量から行い,増量時は漸増させる.
これは,気管支喘息に限ったことでもないですが,β遮断薬は少量から開始し,ゆっくり漸増させるのが安全です.
ビソプロロールであれば,0.625mg/日から開始し,2-4週間おきに,1.25mg→2.5mg(→3.75mg)→5mgと増量しましょう.
(3.75mgを挟むか否かは,喘息発作の具合などで考える.)
注意点➃
高齢者や重症喘息症例への使用はさすがに控える.
どうしても必要な場合は,呼吸器専門医と相談する.
➀~➂の注意点に注意すれば,気管支喘息症例であってもβ遮断薬を使用することはほぼ問題ありません.
ただし,これまで気管支喘息症例に対するβ遮断薬の使用の安全性が確認された研究報告は,比較的若年(平均年齢40歳程度)で,軽症~中等症の症例を対象としており,高齢者や重症喘息症例へのエビデンスは確立していません.
よって,高齢者や重症喘息症例への使用をどうしても検討したい場合は,呼吸器専門医への相談が必須となるので,くれぐれも注意しましょう.
COPDに対するβ遮断薬
結論から言います.
普通にβ遮断薬を使った方がいいです.
「心不全症例の20%にCOPDを認める」といわれるので,知らなかった人にとっては朗報でしょう.
メタ解析やシステマティックレビューによると,COPD症例にβ1選択性β遮断薬を使用した場合,呼吸機能やβ2刺激薬への反応性を悪化させないことが確認されています.(Respir Med. 2003 Oct;97(10):1094-101.)(Ann Intern Med. 2002 Nov 5;137(9):715-25.)
これは,軽症~重症のCOPD症例を含み,アメリカやヨーロッパのガイドラインなどをみても,COPD症例に対するβ遮断薬の使用は許容できる・禁忌ではない,と明示されています.
(気管支喘息症例と同様に)β1選択性の高いビソプロロールであれば,推奨通り使用して問題ないと考えましょう.
ビソプロロール以外の予後改善エビデンスのあるβ遮断薬のカルベジロールは,閉塞性肺疾患に使用できるか
カルベジロールのβ1選択性は低いです.
通常であれば,閉塞性肺疾患には用いるべきではありません.
しかし,α遮断作用に気管支拡張効果があります.
そのためか,COPDに対するカルベジロールの忍容性の報告はあります.(J Am Coll Cardiol. 2004 Aug 4;44(3):497-502. )
ただし,COPD合併心不全でカルベジロールとビソプロロールを交互に使用したstudyだと,ビソプロロール群の方が1秒量が改善したらしく,選択できる状況であれば,ビソプロロールを選択するのがbetter.
また,気管支喘息症例に対するカルベジロールの安全性は確立されていません.
COPDならまだいいですが,気管支喘息症例に対してカルベジロールを使用することは基本的には避けましょう.
まとめ
・中等症以下の気管支喘息と,重症を含めたCOPDに関して,β遮断薬は推奨があればしっかり使用するべき.
・これらの閉塞性肺疾患にβ遮断薬を使用する場合は,β1選択性の高いβ遮断薬を選択するのが原則.エビデンスのあるものならビソプロロール1択.
・高度の徐脈がある,ベースの血圧が極めて低い,などの理由でどうしてもビソプロロールが使用しづらい時,COPDならカルベジロールを選択してもいいが,気管支喘息にカルベジロールを使用することはやめておいた方がいい.
こんな感じです.
まぁ,一言でいえば
閉塞性肺疾患→ビソプロロール
です.
今回の話は以上です.
本日もお疲れ様でした.
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