アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬ARNiエンレスト®の解説【何がすごいの?誰にどうやって使うの?】
※2022/11/4加筆修正
新しい心不全治療薬の有効性が相次いで報告されてきています.
SGLT2阻害薬,アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNi),イバブラジンなどがそうです.
先日,イバブラジンの解説記事をアップしてから久しいですが,今回はやっとの思いでアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNi)です.
薬剤名サクビトリルバルサルタンで,商品名エンレスト®です.
更新が遅くなった理由は,内容が盛りだくさんになってしまったから...
でも,この記事を読むだけで,作用機序,ガイドライン推奨やエビデンス,使用上の注意点が,最低限網羅できるような内容にしました.
目次があるので,ゆっくりと1項目ずつでいいので,読んでみてください.
■ARNi(アーニィ)ってなに?
読み方は,カッコ書きしましたが,アーニィです.
「アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬」のアルファベット表記Angiotensin Receptor Neprilysin inhibitorの頭文字をとって,ARNiと呼ばれます.
■ARNiの作用機序:特徴は?
ARNiの作用は2つ.
RAA系の抑制とネプリライシンの阻害.
「RAA系の抑制?聞いたことあるぞ?」
そうです.ARNiの一部はアンジオテンシン受容体拮抗薬ARBです.
(≫ARBの効果を,ACE阻害薬と比較して解説した記事はこちら.)
ARBとネプリライシン阻害薬の配合剤(のようなもの)です.
「ネプリライシン阻害薬ってなによ?」.
■ネプリライシン阻害薬ってなに?:ナトリウム利尿ペプチドを増やす
ネプリライシンは,さまざまな生化学作用をもつ酵素ですが,その作用の1つにナトリウム利尿ペプチド(NP)の分解作用があります.
つまり,ネプリライシン阻害薬は,分解を阻害することで体内のNPを増やします.
「BNPって心不全で増える物質だから心臓に悪いんじゃないの?増やしていいの?」
違います.
基本的に,ナトリウム利尿ペプチドは,心不全状態の心負荷をとるように働く物質です.
むしろ,基本的に心臓にやさしい物質です.
具体的には,血管拡張作用,利尿作用,レニンやアルドステロン合成抑制作用,交感神経抑制作用,など様々な作用を発揮します.
要は,おおむね,神経体液性因子に拮抗する作用なんです.
まとめると,ARNiは,RAA系を抑制し,NP系を活性化ます.
そして,この2つの効果は,いずれも心負荷を軽減します.
■ARNiのなにがすごいの?:ACE阻害薬に勝利したエビデンスがすごい!
なぜ,ARNiが注目を集めたかといえば,やはりPARADIGM-HF試験の結果がすごい.
すごいアウトカムですね.
しかも,プラセボとの比較ではなく,既存の心不全治療の代表格であるACE阻害薬にガチンコで勝ったからすごいんです.
心不全治療の革命です.
■どんな症例にARNiを使用する?:エビデンスとガイドラインより
すっごい良さそうな薬剤であることはわかりましたよね?
では、具体的にどのような心不全に導入が勧められるものなのか?
心不全なら、なんでもかんでも導入すりゃいいってもんじゃないです.
1.HFrEF(≦40%)への推奨
PARADIGM-HFの結果を参考にすると,エビデンス的には
EF≦35%の有症候性(NYHAⅡ以上)心不全
には
ACE阻害薬(ないしARB)よりARNiが,心不全入院,心血管死,全死亡を減らす
ということ.
2021年3月に発表された本邦の心不全ガイドラインアップデートでは
となっています.
➀は,PARADIGM-HF通りですね.
既存の心不全標準治療薬(ACE阻害薬+β遮断薬+MRA)のうち,ACE阻害薬⇒ARNiという推奨.ClassⅠの推奨です.
➁は,PIONEER-HF試験の結果などを考慮して,ACE阻害薬/ARB未使用症例でもARNiの導入を考慮してもいいよ,というもの.
ただし,添付文書上は"ACE阻害薬もしくはARBからの切り替え"となっている点は注意してください.(詳記を書く上で)
2.EF>40%(HFmrEFやHFpEF)への推奨は?
先に示した本邦の心不全ガイドラインアップデートにおいて,ARNiはHFrEF以外への推奨も獲得しています.
という内容.
ここに大きく寄与したのが,PARAGON-HF試験です.
「HFrEF(EF≦35%)で得られたような効果が,EF≧45%でもみられたよ.(ギリギリ有意差はつかなかったけど)」
という内容が1つ.
さらに
「その傾向は,"女性"もしくは"EF≦57%"という条件をつけると,効果は強固になっていたよ.」
というところが大事.
PARADIGMHFとPARAGON-HFを合わせて解析した「Sacubitril/Valsartan Across the Spectrum of Ejection Fraction in Heart Failure」(Circulation. 2020 Feb 4;141(5):352-361.)がとても興味深い報告でして,
Circulation. 2020 Feb 4;141(5):352-361より引用
サクビトリルバルサルタン(ARNi)の効果(心血管死や心不全入院の減少)は,LVEFで区切ると,このようなカーブになりました.
EF40%前後の効果が高くて,とくに40≦EF<50%(HFmrEFのレンジ)は,なんらEF<40%(HFrEFのレンジ)と遜色ないですよね.
このような試験結果から
「➂利尿薬が投与されている NYHAⅡ以上のHFmrEF において,ACE 阻害薬/ARBからの切替えを考慮(ClassⅡaB)」
という推奨が生まれています.
では,ガイドラインでいうところのHFpEF(EF≧50%)はどうかというと,上のカーブ的には「(HFpEFの中でも)EFが低ければ低いほどARNiの効果は高い」と,まずは考えます.
この点は,心エコー計測におけるglobal longitudinal strain(GLS)との関係も示唆されていて,「ごく軽度であっても収縮障害を来たし始めている心不全であれば,ARNiの効果が期待できる」という風に考えましょう.
また,先ほど示した「Sacubitril/Valsartan Across the Spectrum of Ejection Fraction in Heart Failure」では,性別間でのサクビトリルバルサルタンの効果の違いも視覚化されており,
Circulation. 2020 Feb 4;141(5):352-361より引用
このように,明らかに女性では,有効なLVEF域が上方にシフトしています.
この1つの原因として,「そもそも女性は,"正常のLVEF"が男性より高いから」といわれており,ある程度合点がいきます.
ということで,「➃HFpEF に対する投与を考慮(ClassⅡbB)」というガイドラインでの推奨は,HFpEFの中でも
・軽度の収縮機能低下(LVEF≦57%やGLSの低下)を認めるHFpEF.
・女性のHFpEF.
などで積極的に検討すべきであり,EF≧60%や男性のHFpEFには安易に使用するべきではないと言えます.
■カルペリチド(ハンプ®)じゃだめだったの?:ARNiとカルペリチドの違い
革命的なエビデンスを獲得したARNiでしたが,ナトリウム利尿ペプチドと聞いて「あれ?」と思った方もいるのでは?
そう,ナトリウム利尿ペプチドといえば,ナトリウム利尿ペプチド製剤であるカルペリチド(ハンプ®)がありますよね.
「ハンプってそんなに話題になったか?」
(話題にならなかったわけではないですが)ここまでのインパクトはなかったですよね,少なくとも.
ARNiとカルペリチドは何が違うんでしょうか?
1.外因性か内因性か
カルペリチドは,外的にANPを補充するのに対して,ARNiは分解を抑制するので,内的なNPの増加です.
カルペリチドは投与すれば必ず一定量のANPが増えますが,ARNiは,自身の身体がNP合成していなければ,大して増えることはありません.
非代償性心不全症例において,BNPなどのNPが上昇していることは皆さんご存知ですおね?
つまり,非代償性心不全のような,NPの需要が高い状態ではARNiの効果でNPの効果が高まり,NPの需要が少ない安定している状態(代償性心不全)では,(合成が多くないので)無駄にNPを増やすことがないわけけです.
よって,ARNiの方が,体内での需要に沿ったNP補充の可能性があります.
2.ARNiは慢性心不全を対象にしている
カルペリチドは,ご存知の通り静注薬です.
すると,必然的に,心不全急性期の使用がメインになりますが,心不全急性期のNP過分泌時に外的にANPを補充しても,(手遅れなことが多く)インパクトのあるデータが出なかったのかもしれません.
NPの作用をみてみると,RAA系や交感神経系,ADH系など,いわゆる神経体液性因子に拮抗する作用が多いです.
心不全の破綻は,このような神経系体液性因子をトリガーとしていることが多く,NPは心不全破綻を予防する作用が期待されます.
ARNiは,内服薬であり,慢性期に使用できることで,NP系を活性化させる製剤の真価を発揮できた可能性があります.
いずれも可能性の話ですが,言いたいことは,「ARNiは,"ハンプ®の経口薬"ではない」ということです.
ARNiは,新しい薬なんです.(当たり前のことを言っています←)
■ARNiはいつ始めるか:急性期(入院中)の導入は危ないの?
このように「慢性心不全の治療薬」という位置づけで脚光を浴びているARNiですが,導入のタイミングはいつ頃がいいのか.
先ほど言及したPIONEER-HF試験では,HFrEF急性心不全入院時の退院前導入で,NT-proBNP値の低下や心不全再入院の減少に関して,(PARADIGM-HF同様に)ACE阻害薬に有意差をつけています.
TRANSITION試験(Eur J Heart Fail. 2019 Aug;21(8):998-1007. )では,HFrEF入院症例に関して,ARNi投与開始時期の比較検討(入院中 vs 退院後)したところ,入院中と退院後開始で,有害事象の発現率は変わりませんでした.
つまり,「慢性心不全の治療薬」ということにはなっていますが,急性心不全入院中(退院前)にARNiを開始しても,有効性や安全性に問題はなさそうです.
■ARNiの実際の使用感はどうか:目に見える効果
ACE阻害薬やβ遮断薬のような「予後を改善する薬」って,使用感がよくわからないですよね.
効いてるんだか,効いていないんだか...
これをよく「目に見えない治療(効果)」って言います.
「目に見えない治療(効果)」は,その名の通り,逐一は薬の効果を実感できないため,上述したようにレスポンダー(有効な症例)をしっかり選ぶ必要性が出てきます.
でも実は,ARNiには,「目に見える治療(効果)」もあるとされている点が(ACE阻害薬やβ遮断薬に比して)ユニークです.
1.ARNiには自覚症状/運動耐用能の改善効果がある
ARNiは,自覚症状や運動耐用能の改善するとされています.
この作用は,NT-proBNPの低下と相関することが示唆されており,NT-proBNPの低下が2週間前後で確認できることを考えると,かなり早期からみられる効果です.
【おまけ】で上述しましたが,ARNiにはリバースリモデリング作用も確認されていますが,さすがに導入2週間で自覚症状の改善を来たすほどリバースリモデリングすると考えるのは早すぎです.
すると,この自覚症状の改善効果は,ARNiの血行動態へ与える影響が寄与していると考えられます.
すなわち,利尿作用や血管拡張作用(後負荷軽減)です.
自覚症状の改善が得られると,導入時に薬剤の必要性に対する患者さんの理解が得られやすく,服薬アドヒアランス向上にもつながるかもしれませんね.
2.「目に見える治療(効果)」の代償:腎障害,低血圧
一方で,これらの効果(利尿作用や血管拡張作用)は導入時のネックともなりえます.
すなわち,腎障害や低血圧の問題です.
実際,PARADIGM-HF試験で,GFR<30や収縮期血圧<100mmHgの症例は除外されています.
ただし,これらの症例にARNiを使用してはならないわけではありません.
むしろ,薬理作用を考えれば,多少GFRが30を下回ったり,多少収縮期血圧が100mmHgを下回っていても,十分に有効性は期待できます.
重要なことは,この2つの懸念はいずれも脱水と関連することです.
ARNiの血圧低下作用には,NP作用やブラジキニンの作用による静脈拡張作用が大きく寄与しています.
ゆえに,脱水であればあるほど,(Stressed volumeの低下を介して)血圧の急激な低下を起こしうります.
また,腎障害に関しても,脱水であれば起こりやすいことは自明ですよね.
よって,脱水のリスクを十分に理解することは重要です.
具体的な思索としては,ARNi導入時は
・ややWetな症例
・血圧に余裕のある症例
が,有害事象少なくスムーズに導入できそうであると思うとともに,
場合によっては,利尿薬の調整をしながら導入することが必要になります.
■ARNiの実際の使用方法
ARNiの特徴,推奨,メリット・デメリットなどがわかってきたところですかね.
ここで最後に,実際にARNiを使用するときに気をつけるべき,いくつかの注意点を解説します.
➀ACE阻害薬からの切り替え移行で最低36時間の休薬は厳守する
ARNiは,実は,ACE阻害薬のようにカリクレインーキニン系を活性化します.
ネプリライシンが,(ACEのように)ブラジキニンの不活化を担っているからです.
PARADIGM-HF試験の結果などをみると,(カリクレインーキニン系活性化の影響である)咳の発生率はACE阻害薬より少ないようなので,ARNiには,ACE阻害薬ほどのカリクレインーキニン系の活性化作用はなさそうです.
しかし,(ARNiが含む)ネプリライシン阻害薬とACE阻害薬の併用が,重篤な血管浮腫を引き起こすリスクになることが知られています.
よって,カリクレインーキニン系の過剰活性化が起きないように,ACE阻害薬からの移行では,最低36時間の休薬は必ずしてください.
➁増量の仕方:基本的には100mg/2xで始めたのちに,漸増して400mg/2xを目指す
ARNiは増量していく薬剤です.
基本的には,PARADIGM-HFなどの強固なエビデンスに基づいたdoseを目指すのが現時点での推奨です.
具体的には,100mg/2x朝夕で開始し,2-4週間ごとに100mg/2x→200mg/2x→400mg/2xとすることが,PARADIGM-HF試験のプロトコルに基づいた添付文書上の推奨になります.
➂BNPによるフォローは推奨されず,基本的にはNT-proBNPでフォローする
ANPやBNPはネプリライシンが分解します,
ゆえに,ARNi内服中の症例では,(ネプリライシンが阻害されることで)BNPの血中濃度が上昇してしまいます.
これでは,心不全の経過でBNP値が上昇したとき,ARNiの効果で増加したのか,心負荷が増えて増加したのか判断がつきにくくなります.
一方,NT-proBNPはネプリライシンが分解しないため,従来のBNPのように,(ARNiの薬効を気にせずに)心負荷の指標たりえます.
ただし,このNT-proBNP,BNPと単純な正の相関にはならず,その値には慣れが必要.
以下のツイートで,NT-proBNPの値のイメージを解説しているので参考までに.☟
■まとめ
めっちゃ長くなっちゃいました.
まとめると...
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アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬:ARNiは,
・ナトリウム利尿ペプチド(NP)系を活性化し,RAA系を抑制する薬剤
です.
ARNiのすごいところは,
・(PARADIGM-HF試験において)既存の慢性心不全(HFrEF)標準治療薬であるACE阻害薬にガチンコ勝負で勝利(予後改善)したこと.
2021年3月に発表された本邦の心不全ガイドラインアップデートでは
という推奨.
PARADIGM-HF試験の結果から➀の推奨が生まれていますが,その他のエビデンスから,
・ACE阻害薬/ARB未使用症例でも投与を考慮できる.
・HFmrEF(40%≦EF<50%)においても,HFrEFと同様の効果が得られる可能性が高い.
という点は重要です.
また,これまで有効な予後改善薬が確立されていないHFpEF(EF≧50%)ですが
・軽度の収縮機能低下(例えば,LVEF≦57%やGLSの低下)を認めるHFpEF.
・女性のHFpEF.
などに限れば,ARNiは一部のHFpEFに対しても予後改善効果までもが期待されています.
ここまで広い有効性が期待されているARNiですが,比してカルペリチド(ハンプ®)などがエビデンス的にふるわなかった原因としては,
・ARNiは,NPの分解抑制なので内因性のNPを活用することで,需要にあったNP作用の活性化,である可能性.
・ARNiのターゲットは,慢性期の心不全破綻予防であり,急性期使用のカルペリチドとは病態に与える影響が異なった可能性.
などが考えられ,「ARNiは,"ハンプ®の経口薬"ではない」といえます.
実際の使用方法として,ARNiはあくまで「慢性心不全の治療薬」という立ち位置ですが,
・心不全入院中に導入しても,予後改善効果や安全性には問題はなさそうです.(ただし,あくまでも血行動態の安定した状態での導入が原則.)
ARNiは,予後改善薬(目に見えない治療)としては珍しく,目に見える効果もある薬剤です.
・利尿作用や血管拡張作用が与える循環動態的への好影響が,導入早期からの自覚症状/運動耐用能の改善効果がにつながると考えられています.
・一方で,これらの作用は導入時のネックともなり,腎障害症例や低血圧症例での導入は慎重になります.とくに脱水には注意が必要で,Wetな症例を選択したり,利尿剤の調整が必要となります.
その他,具体的なARNi使用時の注意点としては
➀ACE阻害薬からの切り替え移行で最低36時間の休薬は厳守する
➁基本的には100mg/2xで始めたのちに,漸増して400mg/2xを目指す
➂基本的にはNT-proBNPでフォローする
などが挙げられます.
今回の話は以上です.
本日もお疲れ様でした.
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【2021/5/20追記】最新の知見
先日,米国心臓学会(ACC)2021が開催され多くの最新知見が報告されたので,少し言及します.(最先端の知見なので,ARNiの知識に不慣れな人は,読み飛ばし,ないし読まなくてもいいです.)
HFrEFであっても重症心不全(NYHAⅣ)では,ARNiの効果が限定的である可能性が示されています.
この点は,PARADIGM-HFのサブ解析でも,NYHAⅡ-Ⅲの方がARNiの効果が高いことが示されており,より早期のARNi導入が求められるのかもしれません.
ACC2021で言及されていたLIFE試験の,PARADIGM-HF試験と異なる点は,
でした.
run-in期間が短いのは重症だからしょうがないのかな,とも思いつつ,重症症例のエビデンスは難しいな,と思いました.
「AMI急性期のARNi導入が,ACE阻害薬よりイベントを抑制するのでは?」
と期待されましたが,残念ながら優越性を示せませんでした.
・「神経体液性因子の破綻」という意味での破綻が,必ずしも伴っていあなかった可能性
・虚血性心筋症に対する効果が限定的である可能性
・(ARNi優位の傾向はあったので)サンプルボリュームや観察期間の問題
などが考えられています.
【2021/6/16追記】ARNiの心臓突然死予防効果
PARADIGM-HFサブ解析で,ARNiは(心不全死のみならず)心臓突然死をACE-Iより抑制することがわかっています(Eur Heart J. 2015 Aug 7;36(30):1990-7.)
Eur Heart J. 2015 Aug 7;36(30):1990-7.より引用
このような報告を受けて,ESCのガイドラインでは,
HFrEF+心室性不整脈
⇒(ACEiでなく)ARNi+BB+MRA
がclassⅠの推奨となっています.
また,非虚血性のHFrEFの方がARNiの心臓突然死予防効果は高いとされています.(JACC Heart Fail. 2020 Oct;8(10):844-855.)
前述したPARADISE-MI試験の結果も考えると,ARNiの真価は虚血性心筋症より,非虚血性心筋症の方が大きく発揮されるのかもしれませんね.
【2022/11/4追記】ARNiの冠動脈イベント抑制効果は,ACE阻害薬を上回る?
The Effects of Angiotensin Receptor-Neprilysin Inhibition on Major Coronary Events in Patients With Acute Myocardial Infarction: Insights From the PARADISE-MI Trial
(Circulation 2022 Nov 2.)
ACEi vs ARNiで,心血管死や心不全再発抑制においてはARNiの優位性を示せなかったPARADISE-MI Trialですが(詳細上述),事前に決めていた冠動脈イベントのアウトカムに関しては,ARNi群で有意に抑制できたとの報告.
もう少し長い期間観察すれば,心血管死や心不全再発も減るのかな?
続報が待たれますね.
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