閉ざされた郵便ポストと仮想現実の発生 ー投票率低下の本質ー
選挙が終わった。
私が応援していた候補の方々は、その多くが落選した。
けれど野党は議席を伸ばし、かろうじて改憲の条件を阻止した。
れいわ新選組は、政党としての要件を満たし、国会に二人の車椅子患者を送り込んだ。
太郎さんは、党首として地上波での討論に参加出来るようになった。次の選挙で盛大な“倍返し”をかまし、ぶっちぎりのトップ当選で衆議院に戻ってくるだろう。
最高でもないが、最低でもない。
ここは天国じゃないし、地獄でもない。
目線を上げれば、いつだって希望はある。
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選挙結果もさることながら、投票率が低かったことが話題になっている。
毎日新聞によると、期日前投票を含んだ最終投票率は48%程度らしい。
強がる訳じゃないが、そんなもんだろうと思っていた。
今回、私は自分の納得のためにも、支持政党のブラを取り寄せて、自宅周囲のマンションにポスティングして回った。
そうやって初めて気がついたのだけれど、今、ピザ屋のチラシやタウン情報誌に混じって、突っ込まれたまま放置されているポストの割合は、アパートによっては8割を超える。
マンションの外装がボロくなり、家賃が安くなるほどに、放置されているポストの割合は増えるようだ。
住んでいないところは、シールで封をされているので、ここの部屋には誰かが日々出入りしているはずだ。でもその誰かは、郵便ポストをチェックしないし、きっとそこに届く選挙ハガキを目にすることはない。
おそらくポストの主は普通に社会生活を営んでいる。
彼らは友達からのLINEには返事をするし、お気に入りのインスタグラマーの更新を1日に何度もチェックしている。
彼等は単に、“ノイズ”を受け取る事を拒否しているだけだ。
そして、多くの人にとって“投票に行きましょう”とか“政治は他人事ではありません”という呼びかけもまた、ピザ屋の広告と同じくノイズでしかないのだ。
私達は、過剰な情報によってジャミングされている。
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“若者の選挙離れ”、というのは実態の一部だけを切り取った言葉だ。
今、起きていることは、”若者の実生活離れ“ではないかと私は思う。
この10年で、SNSやゲームなどの仮想現実は劇的な進歩を遂げた。私を含めた、多くの人々がコミュニケーションの大半を、実生活よりも仮想現実で行うようになった。
仮想現実ごとに、政治への距離は様々だ。
たとえば、私がアイデンティティの一部を置いている“Twitter-大麻合法化界隈“というのは、当然、政治意識が高い。
業界のインフルエンサーは選挙の話しかしないし、20前後の男の子が“選挙結果が気になって寝れない!”と呟いている。
たぶん界隈の投票率は80%を超えているだろう。
一方で、“Twitter-医療クラスター”では選挙の影響をそこまで感じない。
レペゼン地球が、選挙前日に派手な炎上商法を仕掛けたが、彼等にとっては7/20とは夏休みの初日であって、その界隈の仮想現実では、そもそも選挙なんて存在していない。
インスタグラムの世界やネットゲームの世界にも、無数の仮想現実が散らばっていて、そのほとんどが選挙と無縁なのだろう。
SNSとゲームによる仮想現実世界が出現したことによって、私達は、どこにいてもスマホから発生する一層の透明な膜で覆われるようになった。
結果、その外側にある実生活との心の距離は、その分だけ遠くなった。
私達は自分が属していない仮想現実世界を、キモいとか、怖いとか、ウザいと感じている。
投票率の低下とは、そういうことなんだと思う。
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当たり前だけれど、全ての仮想現実は実生活の上に成り立っている。
遠く感じるかもしれないけれど、政治は暮らしと繋がっている。
学校じゃ教えてくれないことを、私達は次の世代に伝えられるだろうか。