yuji masataka

1985年生まれ。熊本大学医学部卒。医師。医療大麻に関するエビデンスに基づいた情報発信を行う一般社団法人Green Zone Japanの代表理事を務める。

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1985年生まれ。熊本大学医学部卒。医師。医療大麻に関するエビデンスに基づいた情報発信を行う一般社団法人Green Zone Japanの代表理事を務める。

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最近の記事

HHCHグミテロについて思うこと

2023年11月4~5日に開催された武蔵野原っぱ祭というイベントで精神作用のあるカンナビノイドを含有した食品(HHCHグミ)を不特定多数に説明なく配布した人物がおり、摂取した6名が体調不良を訴えるという事案が発生しました。 本件はSNSで大きく話題になっており、既に厚生労働省監視指導麻薬対策課にも情報は入っていると考えられます。HHCH規制は既定路線ですが、今回の一件でより寿命を縮めた印象です。 まず確認しておきたいのは、精神作用のあるカンナビノイド製品を本人の同意なく投与

    • お医者さんが語るCHEHONさんを大麻で逮捕してはいけない理由

      2023年9月24日、日本のレゲエ界を牽引するミュージシャンであるCHEHONさんが0.97gの大麻を品川区の自宅で所持していた容疑で逮捕され、大きく報道されています。 私は医師であり、海外の大麻情勢について厚労省の特別研究班のメンバーとしてレポートも執筆した立場にありますが、このような個人使用目的の少量所持での逮捕・起訴は止めるべきだと考えていますし、国際社会では大麻で逮捕しない政策が主流となりつつあります。 事実として、2019年に国連麻薬委員会は「個人的使用のための薬

      • 地上波ワイドショーに生出演しました。

        8月30日の“堀潤のモーニングFLAG”(東京MX TV)の中の“堀潤の激論サミット“というコーナーにおける医療大麻議論にゲストコメンテーターとして出演、30分間生放送で出演させて頂きました。短い時間でしたが下記の話題に言及しました。 ・酒やタバコとの安全性比較 ・THC=悪ではない・医療的側面/価値がある ・医療大麻の適応疾患一覧(図表提示) ・医療と嗜好の境界線は曖昧である問題 ・ドイツの嗜好大麻合法化 ・世界の合法化状況一覧(図表提示) ・国際的な非犯罪化の潮流につい

        • THCV規制における“ハームリダクション“についての提言

          8月31日、厚労省による指定薬物部会が開催され、THCB、THCPなどと並び“THCV“という成分が規制対象となる方針が発表されました。 https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001140524.pdf ・THCVとは? THCVは大麻草に微量に含有される天然の希少カンナビノイドの一種です。THC〜という名から、精神作用を伴うように思われがちですが、実はCB1受容体に対して拮抗的に作用するため、陶酔作用を伴わないとされています。医薬

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        • 活動報告
          1本
        • 旅行記
          0本

        記事

          狂騒の先に起きること ーTHCH規制を受けてー

            2023年7月24日に開催された指定薬物部会にて、同年8月4日からΔ9-THCH及びΔ8-THCHが規制されることが決定しました。 https://kanpou.npb.go.jp/20230725/20230725t00055/20230725t000550001f.html 前回の指定薬物部会から一ヶ月という迅速対応ではありますが、これは例えるなら表の玄関を封鎖したものの、裏口は開放されている状況です。 THCHが目下、流通規模最大の新規合成カンナビノイドであること

          狂騒の先に起きること ーTHCH規制を受けてー

          新規合成カンナビノイドに関わる全ての方々へ

          先日、都市部のショップで開催された某イベントでTHCHの試供品により複数名が救急搬送されるという出来事があったようです。(批判が目的ではないので個人・企業名については言及しません)当該企業の発信によると、45%THCHリキッドを卓上ベポライザーを用いて無料提供したとのことでした。 私個人はTHCHの売買には関与しておらず、それらの製品を扱う販売事業者からの寄付も頂いておりません。また当該イベント関係者とはオンライン上でやり取りなどはしたことがありますが、対面でお会いしたこと

          新規合成カンナビノイドに関わる全ての方々へ

          37歳でラップを始めたことへの言い訳

          皆さま、お元気でしょうか? この度、私、正高佑志は“MASATAKA“名義で楽曲・ミュージックビデオの配信を開始しました。レーベルと契約している訳ではないのですが、一応はデビューということになるのかもしれません。 お前、そんなことより他にやることあるだろ?という罵声が飛んできそうな気もするので、ちょっとだけ言い訳をさせてください。 2016年10月にカリフォルニア州で医療大麻の実際を目にしてから6年、私は科学的根拠というものを拠り所に情報発信を続けてきました。当初は海外の

          37歳でラップを始めたことへの言い訳

          世紀の愚策!大麻使用罪を作ってはいけない7つの理由

          2021年1月から検討が開始された大麻使用罪の導入に関しては、有識者会議においても賛否が分かれましたが、厚生労働省は創設の方向で議論を進めています。大麻使用罪を作ることで、どのようなデメリットがあるか改めて考えてみたいと思います。 1:こっそり吸っている人と周囲が不幸になる 使用罪が創設されることで、最も大きな影響を受けるのは言うまでもなく、大麻を使用している人達です。 現状のルールでは所持だけが規制されているので、誰かが大麻を所持していて、もらいタバコをすることは違法で

          世紀の愚策!大麻使用罪を作ってはいけない7つの理由

          脱法ハーブ規制についての歴史解釈

          HHCの規制導入に際して、SNS上では危険ドラッグ(脱法ハーブ)の二の舞になることを危惧する声が散見されます。これが何を意味するのか、10〜20代の皆さんにはよくわからないと思いますので、ここで簡単に説明しておきたいと思います。 脱法ハーブとは違法薬物に科学的に類似した合成物質を植物片に吹きかけて作られたドラッグです。大麻に含まれるTHCと構造や作用が似ていますが、化学式が少しだけ違うため法律に抵触しませんでした。日本では2010年頃から全国的な流通が開始し、おそらく201

          脱法ハーブ規制についての歴史解釈

          HHCが規制されない世界線はあったか?

          2022年3月7日、厚生労働省はHHCを新たに危険ドラッグの成分として指定薬物とすることを決めました。これにより3月17日以降、HHCを売買、所持することはもちろん、使用することも違法行為となります。最初の企業がHHCを販売開始してから約3ヶ月。迅速な対応と言えるでしょう。 SNS上ではこの決定を悲しみ、非難する声が多くみられました。 HHCに切り替えることで逮捕される不安から解放された方。 睡眠薬や咳止め薬などの乱用から抜け出すことができた方。 彼・彼女たちは10日後から

          HHCが規制されない世界線はあったか?

          京王線のジョーカーと選挙

          選挙が終わった。SNSのタイムラインは熱気で溢れるも、蓋を開けてみれば投票率は期待したほど上がらず、結局は与党が過半数を確保した。現状維持。 開票結果を追いかけていると、衝撃的な映像が目に飛び込んできた。迫る火の手から車内を逃げ惑う人々。京王線のジョーカーによる凶行。 これは2008年の秋葉原通り魔事件、2016年のやまゆり園事件、2019年の京アニ事件、2021年の小田急線事件の系譜に並ぶ出来事だが、残念ながらこれらの無差別殺人の頻度が高まっているように見える。 世界で

          京王線のジョーカーと選挙

          お医者さんが語る、伊勢谷友介さんを大麻で逮捕してはいけない理由

          俳優の伊勢谷友介さんが大麻取締法で逮捕され、世間を騒がせています。マスコミは重大犯罪のような騒ぎ方ですが、一方、インターネットでは、大麻での逮捕に反対する声も多く聞かれるようになってきました。 日本の外に目を向けてみると、先進諸国では薬物で逮捕しないという政策が主流になってきています。 2019になって、国連は全会一致で薬物所持の非犯罪化を推奨する声明を出しました。 https://transformdrugs.org/un-chief-executives-endorse

          お医者さんが語る、伊勢谷友介さんを大麻で逮捕してはいけない理由

          医療大麻のお医者さんがするワクチンの話

          大麻肯定派の中には、ワクチンに懐疑的な意見を持たれる方が多い。 先日、三宅洋平さんがワクチンに対する私見をツイートしたところ、医師免許を有する論客からの批判の意見が相次いだ。(中にはワクチンに対する適正な理解を広めたいというよりは、三宅さんに対する悪意を強く感じる記事もあった。) 政府が信頼を損なう蛮行を繰り返す世界で、子どもの安全を守りたいという親の真剣な気持ちからだろう。私のところにも、子供にワクチンは打つべきなのかという相談が寄せられることがある。これを機に、私の意見

          医療大麻のお医者さんがするワクチンの話

          その薬、自腹でお願いします ー皆保険が壊れる日ー

          “ぶっちゃけ10月以降、やばいくらいヒマ。” 誰もいないカウンターで、マスターが呟いた。 11月28日の経産省発表によると、10月の国内の小売販売額は昨年10月と比較し、平均7.1%低下している。増税直前の9月との比較だと14.4%の低下だ。 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52702810Y9A121C1MM0000/ 安価なフランチャイズを除くと、飲食店は不況の影響を受けやすい。 個人経営のレストラン、バーには大変な時代だ。

          その薬、自腹でお願いします ー皆保険が壊れる日ー

          ロジックの重視と直感の軽視

          花粉症の治療薬の保険適応から外し全額自費にすべきとの提言が出た。 https://www.jiji.com/jc/article?k=2019082200648&g=eco 一見して、私は愚策だと思った。 しかしツイッターでは、公衆衛生を専門に勉強をしている人達が、“これは正しい判断”と口を揃えている。 データを引っ張り出して、花粉症の治療によるQOLの改善を定量化した場合、云々などと議論されているのをみて、私の頭の中とは違う回路が駆動しているなと思った。 ーーー

          ロジックの重視と直感の軽視

          閉ざされた郵便ポストと仮想現実の発生 ー投票率低下の本質ー

          選挙が終わった。 私が応援していた候補の方々は、その多くが落選した。 けれど野党は議席を伸ばし、かろうじて改憲の条件を阻止した。 れいわ新選組は、政党としての要件を満たし、国会に二人の車椅子患者を送り込んだ。 太郎さんは、党首として地上波での討論に参加出来るようになった。次の選挙で盛大な“倍返し”をかまし、ぶっちぎりのトップ当選で衆議院に戻ってくるだろう。 最高でもないが、最低でもない。 ここは天国じゃないし、地獄でもない。 目線を上げれば、いつだって希望はある。

          閉ざされた郵便ポストと仮想現実の発生 ー投票率低下の本質ー