社労士試験 予備校では教えないポイント解説 vol.088
労働保険料徴収法(4)
概算保険料
①概算保険料の申告・納付期限
1)継続事業の納期限
※『継続事業の』とあるので、試験では有期事業との違いが出題されます。試験では『有期事業は』という主語の取り方の方がミスリードしやすいので、そういう問題文になるかと思います。
継続事業(一括有期事業を含み、以下、特に断りがない限り、同じとします。)の事業主は、保険年度ごとに、概算保険料をその保険年度の6月1日から40日以内(つまり、7月10日まで。保険年度の中途に保険関係が成立したものについては、当該保険関係が成立した日から50日以内)に申告・納付しなければなりません。
なお、保険年度の中途に特別加入の承認があった事業に係る特別加入保険料も、当該承認があった日から50日以内に申告・納付しなければなりません。継続事業の猶予期間である40日間より中途成立(承認)の方が10日長い50日間の猶予期間なのは、設立登記などの事務が発生することも多いためと思います。なお、後述しますが、有期事業は、この猶予期間は、20日間しかありません。有期事業は、事業期間が短いものもあり、前納してからの確定精算という原則が取れないこともある(つまり、申告時には、すでに事業が終了してしまっているという状態)ので、猶予期間を20日間としています。
2)有期事業の納期限
有期事業(一括有期事業を除き、以下、特に断りがない限り、同じとします。)の事業主は、保険関係が成立した日から20日以内に、概算保険料を申告・納付しなければなりません。
なお、保険関係が成立した日の翌日以後に特別加入の承認があった事業に係る特別加入保険料に関しても、当該承認があった日から20日以内に申告・納付しなければなりません。
【当日起算か?翌日起算か?】
以前の記事でも説明しましたが、『納期限を計算させる問題』が出題される可能性もありますので、再度、おさらいです。特に、この場合、『翌日から起算して』など、誰でも正答を得るような書き方はないです。要は、『当日を入れるか入れないか』という選択を迫られることになります。原則は、
・その期間が必ず『●日の午前0時』から始まる場合は、当日起算…継続事業の申告・納付の場合がこのケースです。継続事業の申告・納付期限は、必ず、6月1日午前0時から始まるので、6月1日が1日目となります。
・権利の発生日における権利の発生時刻が、必ずしも午前0時とは限らない場合は、翌日起算…中途成立の場合の申告・納付がこのケースです。試験には、この翌日起算のケースが出題されるかと思います。
※年齢法に係る場合は、特殊な考え方で、上記を原則として捉えるならば、『誕生日の翌日』に年齢が1つ上がる。。。としたいところですが、年齢法では、『誕生日の前日』に年齢が1つ上がるということとされています。これは、ひとえに『2月28日生まれの人』に配慮した法律と言ってもよく、24時間ない日の原則である『翌日起算』だと2月28日生まれの人の権利義務の発生が平年は3月なのですが、閏年は2月29日があるので、2月に権利義務が発生することになり、不都合だからです。この『誕生日の前日に年齢が1つ上がる』という取り扱いだと、3月1日生まれの人の権利義務の発生は、前日が平年の2月28日であれ、閏年の2月29日であれ、必ず2月になり、閏年であるかどうかで権利義務の発生月がズレるという事態が避けられることになります。この取り扱いにより、4月1日生まれの人は、前日3月31日に年齢が1つ上がることになりますので、学校では、1学年上のクラスに入ることになるわけです。確か、以前に一度だけ、科目は忘れましたが(たぶん、厚生年金法か国民年金法?)、この年齢法を知らないとミスリードされてしまうような問題が出題されたかと思います。(※記憶は曖昧。。。予備校の模擬試験だったかもしれません。)もし、試験で具体的な権利発生月が解答上必要な問題(老齢年金がこの典型的パターン)で、対象者が『○月1日生まれ』とあれば、この年齢法を意識した問題です。
②概算保険料の申告・納付先
※下記は原則です。多くの場合は、後の記事で説明する『口座振替』を利用されていると思いますので、申告後に送られてくる納付書を以て、当該銀行口座に振り込むことになります。ただし、納付書を受け取った日を入れて3営業日しか余裕がないので慌ただしいです。。。また、口座振替により納付する場合においては、日本銀行を経由して申告書を提出することはできません。
とはいえ、日本銀行の支店、少な過ぎて(本店+32支店+14国内事務所)そもそも利用が難しい。。。と思われるかもしれませんが、三菱東京UFJなどの都市銀行や地方銀行が取り扱い代理店となりますので、そんなに不便ではありません。
1)労災関係申告・納付手続の場合
次の概算保険料の申告及び納付は、
〈申告〉
概算保険料申告書を所轄都道府県労働局歳入徴収官(正確には『都道府県労働局保険特別会計歳入徴収官』)に提出(当該申告書の提出は、日本銀行(本店、支店、代理店及び歳入代理店をいい、以下同じとします。)又は所轄労働基準監督署長を経由することができます。)し、
〈納付〉
概算保険料を納付書により日本銀行(つまり、近所の銀行)、都道府県労働局収入官吏(シュウニュウカンリ)(正確には、『都道府県労働局労働保険特別会計収入官吏』)又は労働基準監督署収入官吏(正確には、『労働基準監督署労働保険特別会計収入官吏』)に納付することによって行います。
(以下、『労働関係申告・納付手続』と表現します。)
①一元適用事業であって労働保険事務組合に事務処理を委託しないもの(雇用保険に係る保険関係のみが成立している事業を除く)についての一般保険料
※労災保険事務組合に事務処理を委託している場合は、次の2)①参照。
②労災保険に係る保険関係が成立している事業のうち二元適用事業についての一般保険料
【特別加入保険料】
①労災保険に係る保険関係が成立している事業のうち二元適用事業についての第1種特別加入保険料
②第2種特別加入保険料
③第3種特別加入保険料
が『労災関係申告・納付手続』になり、所轄労働基準監督署長を経由して、申告することができます。
【歳入徴収官と収入官吏】
日本語として似ているので、ここは力業で覚えるしかありません。社労士試験においては、次の3人を区別できれば、乗りきれるかと思います。
・申告書の提出…歳入徴収官
・納付…収入官吏
・還付…前渡官吏(※前渡ですでにお金を持ってるから還付できる。。。ということです。)
イメージとして、歳入徴収官は国の歳入となるべき納付書を作成するところで、実際にお金を取り扱うのが官吏の仕事。。。という感じでしょうか?
なお、上記の通り、『官吏』は『カンリ』と読みますが、読めなくても試験上は問題ありません。
2)雇用関係申告・納付の場合
次の概算保険料の申告及び納付は、概算保険料申告書を所轄都道府県労働局歳入徴収官に提出(当該申告書の提出は、日本銀行を経由することができます。)し、概算保険料を納付書により日本銀行又は都道府県労働局収入官吏に納付することによって行います。(以下、『雇用関係申告・納付手続』と表現します。)
①一元適用事業であって労働保険事務組合に事務処理を委託するものについての一般保険料
※つまり、①のケースは、労災関係の申告・納付手続も併せて行うことになります。
②一元適用事業であって労働保険事務組合に事務処理を委託しないもののうち雇用保険に係る保険関係のみが成立している事業についての一般保険料
③雇用保険に係る保険関係が成立している事業のうち二元適用事業についての一般保険料
なお、この『労災関係申告・納付手続』及び『雇用関係申告・納付手続』において、社会保険適用事業所の事業主が継続事業(労働保険事務組合に労働保険事務の処理を委託しているものを除きます。)について提出する概算保険料申告書が、以下のいずれにも該当するものであるときは、日本銀行又は所轄労働基準監督署長のほか、年金事務所を経由して提出することもできます。
①口座振替により概算保険料を納付するものでないこと
②6月1日から40日以内に提出する一般保険料に係るものであること
※つまり、本来の納期限内であっても、口座振替のときは、口座振替のルールに従ってください。。。ということです。
※特別加入保険料については、
・一元適用事業についての第1種特別加入保険料
のみが、申告書の提出を所轄労働基準監督署長を経由して行うことができません。第1種特別加入者は、必ず、労働保険事務組合に事務処理を委託しているからです。
【その他の経由】
概算保険料申告書であって一般保険料に係るもの(有期事業、労働保険事務組合に労働保険事務の処理が委託されている事業及び二元適用事業に係るものを除く。)は、
・保険関係成立届を健康保険及び厚生年金保険の新規適用届又は雇用保険の適用事業所設置届と併せて統一様式により提出する場合において、これらと同時に提出するときには、
・年金事務所、所轄労働基準監督署長又は所轄公共職業安定所長
を経由することができます。
国側も、それぞれの届出事項はほぼ同じなので、1ヶ所ですべて受け付ける方が、抜けがなくて効率的だからです。
③概算保険料の額
1)継続事業の納付額
継続事業の場合、概算保険料として納付すべき一般保険料の額は、その保険年度に使用するすべての労働者に係る賃金総額(1000円未満の端数は切り捨てます。この端数処理は、雇用保険の一部を除き、保険料率が1000分の◯となっているところから推定できるかと思います。)の見込額に、当該事業についての一般保険料率を乗じて得た額となります。
ただし、賃金総額の見込額が、直前の保険年度の賃金総額に、当該事業についての一般保険料率を乗じて得た額となります。
※つまり、よほどの事業規模が変わらない限り、確定保険料として精算したときの賃金総額をそのまま使うことになり、保険料率が変わらない場合は、確定保険料として算出した額を、そのまま概算保険料として納付することになります。
極端な例ですと、賃金総額と保険料率が毎年同じだとしたら、概算保険料を支払ったら、翌年の確定保険料の精算は0。そして、また同じ概算保険料を支払う。。。ということの繰り返しになります。
【特別加入保険料】
『賃金総額』を『特別加入保険料算定基礎の総額』に、『一般保険料率』を『特別加入保険料率』に置き換えて、一般保険料の場合と同様の算定をします。
②有期事業の納付額
有期事業の場合は、概算保険料として納付すべき一般保険料の額は、その事業の保険関係に係る全期間に使用するすべての労働者に係る賃金総額(1000円未満は切り捨てます。)の見込額に当該事業についての一般保険料率(労災保険料率)を乗じて得た額になります。
なお、有期事業の場合は、必ず二元適用事業(建設業又は立木の伐採の事業)で労災保険しか成立しませんので、労災保険料率が一般保険料率になります。
※有期事業の場合は、事業期間の全期間で算定しますので、『保険年度』という概念がありません。従って、継続事業のように、前年度の賃金総額を用いて概算保険料を算定・納付するということはありません。実務においては、このような手続ができないので、間違って納付してしまうということは起こり得ないのですが、試験においてしらっと『毎年度、6月1日から。。。』と概算保険料の納付をしなければいけないような記載がされていたらミスリードされてしまう可能性がありますので、有期事業なのか継続事業なのかをしっかりと読み取りましょう。
④概算保険料の延納
※延納期限と各期の納付額を計算させる問題が出題される可能性があります。継続事業と有期事業、労働保険事務組合に事務処理を委託しているかいないかで延納期限や延納できる額が変わりますので、そこは、しっかりと押さえましょう。
1)継続事業の延納
1.延納の要件
継続事業の場合は、次の要件を満たしていれば、概算保険料申告書を提出する際に申請することにより、概算保険料を延納(分割して納付)することができます。
①次のいずれかに該当していること
1.納付すべき概算保険料の額が40万円(労災保険に係る保険関係又は雇用保険に係る保険関係のみが成立している事業については、20万円)以上の事業であること。
2.事業に係る労働保険事務の処理が労働保険事務組合に委託されている事業であること。
※つまり、労働保険事務組合に事務処理を委託している場合は、40万円(20万円)未満の少額でも延納することができるということです。。
②当該保険年度において10月1日以降に成立した事業ではないこと。
※これは、延納は年3回なので、1期としてみなされる期間が4箇月であるのですが、分割した結果が最低でも2箇月を越えることが必要なので、結果として、最低でもその年度の全事業期間が6箇月を越えること(つまり、9月30日までに事業が成立していること)となるためです。なお、その年度の10月1日以降に成立した事業であっても、翌年度以降は、延納の要件を満たす限り、延納することはできます。
2.通常の場合の延納回数と納期限
前保険年度より保険関係が引き続く場合は、次の表のように1保険年度を3期に分けて、次の表の納期限で納付することができます。なお、継続事業であって労働保険事務の処理を労働保険事務組合に委託している場合は、第2期及び第3期の納期限は2週間延長されます。
・第1期(4月1日~7月31日)…7月10日(※概算保険料の申告・納期限と同じです。)
・第2期(8月1日~11月30日)…10月31日(※労働保険事務組合に労働保険事務を委託している場合は、11月14日。以下、( )内に付き同じ。)
・第3期(12月1日~3月31日)…1月31日(2月14日)
※なかなか覚えにくいのですが、2月14日がバレンタインデーなので、そこを基準にして覚えられるかもしれません。某予備校の語呂合わせは、『納豆父さん、いざ。。。』という意味不明なものでした。
なお、事業所側の都合で、任意に2分割などはできません。
3.中途成立の場合の延納回数と納期限
保険年度の中途に保険関係が成立した場合、各期については2月を超える場合に1期として成立させます。したがって、第1期の中途に保険関係が成立した場合は、第1期が2月を超える場合(※つまり、5月31日以前に保険関係が成立した場合)は3回に分けて(※つまり、第1期が保険関係成立日~7月31日となります。)、第1期が2月以下である場合(※つまり、6月1日以降に労働保険関係が成立した場合)には、第1期と第2期をまとめて最初の期として(※つまり、最初の期が、保険関係成立日~11月30日となります。)納付することができます。また、第2期の中途に保険関係が成立した場合は、第2期が2月を超える場合(※つまり、9月30日以前に保険関係が成立した場合)は2回に分けて納付することができますが、第2期が2月以下である場合(※つまり10月1日以降に保険関係が成立した場合)には、第2期と第3期をまとめて最初の期としますので、延納することはできません。
次に、中途成立の事業の納期限については、第1回目は原則通り、保険関係成立の翌日から起算して50日以内となり、3分割できる場合は、2回目は10月31日(11月14日)、3回目は、翌年1月31日(翌年2月14日)になり、2分割できる場合は、2回目は第3期の納期限である翌年1月31日(2月14日)となります。
4.納付額
各期の納付額は、概算保険料納付額を期の数(3又は2)で除して得た額となりますが、計算の結果、1円未満の端数が生ずる場合は、その端数をまとめて第1期分に加えて納付します。
※試験に出題される場合は、わざと3で割れない金額が出題されるかと思います。納付総額が200万円の場合、3で割ると、1期が666,666.66。。。となりますが、円未満をまず切り捨て、第2期と第3期の納付額666,666円として、第1期の納付額は、
・2,000,000円-(666,666円✕2)=666,668円となります。
※ここまで計算して、第1期の納付額を666,667円としてしまう(※このダミー選択肢は必ずあると思います。)のは痛恨ですので、慎重に計算しましょう。
2)有期事業の延納
1.延納の要件
有期事業の場合は、次の要件を満たしていれば、概算保険料申告書を提出する際(※つまり、保険関係が成立した際)に申請することにより、概算保険料を延納することができます。
①次のいずれかに該当のしていること
1.納付すべき概算保険料の額が75万円以上の事業であること
2.事業に係る労働保険事務の処理が労働保険事務組合に委託されている事業であること
※つまり、継続事業の場合と同様に労働保険事務組合に委託している場合は、少額でも延納することができます。
②事業の全期間が6月以内ではないこと。
※継続事業の場合と同様に、事業期間が6月以内だと、延納の余地がないため
2.期の区分と納期限
※継続事業と違い、有期事業の延納の場合には、事業の全期間を4箇月ごとに区切るため、第1期、第2期、第3期という概念がありません。
期の区分は、継続事業の場合と同様ですが、第1期目は保険関係成立日の翌日から起算して20日以内に、第2期目以降は、下記の各期の納期限までに納付していくことになります。
なお、有期事業については、労働保険事務組合に事務処理を委託している事業であっても、2週間の延長措置はありません。
・各期4月1日~7月31日…3月31日
※継続事業と納期限が違います。期の始まる前日までに納付することになります。
・各期8月31日~11月30日…10月31日
・各期12月1日~3月31日…1月31日
※ここも某予備校の語呂合わせでは、『父さん、いざ、ザーサイ。。。』と意味不明なものでした。
3.1期目の確定
最初の期は2月を超える場合に成立しますので、保険関係成立日からその日の属する期の末日までの期間が2月を超える場合は、その期を第1期として成立させ、当該期間が2月以下である場合は独立した期として成立させず、次の期に含めて第1期とします。
※期の考え方は『中途成立した継続事業』と同じですが、継続事業は年度を3期に分けているのに対して、有期事業には『年度』という概念がなく事業の全期間を以て区分しているところが違います。
4.納付額
継続事業の場合と同様で、各期の納付額は、概算保険料は期の数(※継続事業と違い、期の数が3を超える場合もあります。)で除して得た額となり、1円未満の端数は、第1期分に加えて納付します。
⑤増加概算保険料
1)納付要件
保険料算定基礎額(賃金総額又は特別加入保険料算定基礎額の総額をいいます。)の見込額が増加した場合であって、次のいずれの要件にも該当するときは、事業主は、増加概算保険料を納付しなければなりません。
①増加後の保険料算定基礎額の見込額が増加前の保険料算定基礎額の見込額の100分の200を超えること
※つまり倍以上(超)に増加したということです。
②増加後の保険料算定基礎額の見込額につき算定した概算保険料の額と既に納付した概算保険料の額との差が13万円以上であること。
※増額してもその増加見込額が13万円未満だったら増加概算保険料の対象外ということです。それなりに少額でしたら、確定保険料にて精算すればいいからです。
【両保険成立の場合】
増加概算保険料のケースは、事業規模の拡大の他、労災保険又は雇用保険のみが成立していた事業が両保険ともに成立するに至ったため一般保険料率が変更し、上記①②ともに満たすこととなった場合を含みます。
また、両保険が成立することにより変更した後の一般保険料率に基づいて算定した概算保険料の額と既に納付した概算保険料との差額を、一般保険料が変更した日の翌日から起算して30日以内に、増加概算保険料申告書を添えて申告・納付しなければなりません。(※次項参照)
2)納付額と納期限
前記1)の納付要件が満たされた場合、事業主は、増加後の保険料算定基礎額の見込額に基づいて算定した概算保険料の額と既に納付した概算保険料の額との差額を、保険料算定基礎額の増加が見込まれた日の翌日から起算して30日以内に、増加概算保険料申告書に所定の納付書を添えて申告・納付しなければなりません。
3)増加概算保険料の延納
概算保険料について延納する事業主は、増加概算保険料申告書を提出する際に延納の申請をすることにより、増加概算保険料についても延納することができますが、最初の期分については、保険料算定基礎額の増加が見込まれた日(又は両保険が成立するに至った日)の翌日から起算して30日以内に納付しなければなりません。
また、増加概算保険料申告書については、日本銀行又は労働基準監督署長を経由して提出することはできますが、年金事務所を経由して提出することはできません。(※年金とは関係ないため)
※『概算保険料について延納する事業主は、』となっているので、増加概算保険料の対象となったため『新たに』延納の手続をすることはできないということです。増加する前から延納をしている事業主に限って延納できるということです。額が増える前から延納してるのだから、増加した後も、当然に延納を希望するだろうということです。
とはいえ『できる』規定なので、既に行っている延納分とは別に増加概算保険料だけを一括納付しても、何ら問題はありません。どうせ年度終わりで確定精算しなければいけませんので。。。
⑥概算保険料の追加徴収
1)追加徴収の概算保険料
政府は、一般保険料率、第1種特別加入保険料率、第2種特別加入保険料率又は第3種特別加入保険料率の引き上げを行ったときは、概算保険料を追加徴収します。この場合、政府は、通知を発する日から起算して30日を経過した日をその納期限と定め、事業主に対して、その納付すべき概算保険料の額及び納期限を通知しなければなりません。
なお、追加徴収に係る徴収金はの納付は、通知とともに送られてきた納付書によって行います。
※追加徴収の概算保険料については、増加概算保険料とは違って、追加徴収額が少額であっても行われます。これは、政府側で確定的に対象事業所、及び、増加した額が分かるからだという理由だからだと思います。(筆者の推定)
2)追加徴収の概算保険料の延納
概算保険料について延納する事業主は、通知により指定された納期限までに延納の申請をすることにより、追加徴収の概算保険料についても延納することができますが、最初の期分については、追加により指定された納期限(=通知を発する日から起算して30日以内)までに納付しなければなりません。
※増加概算保険料や追加徴収の概算保険料という制度はありますが、逆に、保険年度の途中で保険料算定基礎額の見込額の減少や保険料の引下げなどがあった場合に、既に納付した保険料額との差額を還付するという規定はありません。確定保険料の申告の際に精算すればいいからです。
⑦概算保険料の認定決定
1)認定決定
政府は、事業主が概算保険料申告書を提出しないとき、又は概算保険料申告書の記載に誤りがあると認めるときは、概算保険料を決定し、これを事業主に通知します。この通知を受けた事業主は、納付した概算保険料の額が政府の決定した概算保険料の額に足りないときはその不足額を、納付した概算保険料がないとき(つまり、納付してない場合)は政府の決定した額を、その通知を受けた日から15日以内に、納付書により納付しなければなりません。
※概算保険料を納付し過ぎていた場合であっても、その過払分の還付という規定はありません。また、概算保険料はあくまでも『前払い』なので、延滞利息や、確定保険料の認定決定がされたときの追徴金などのような懲罰的な徴収は行われません。(※政府が行うことなので、実務では絶対に起こり得ないことですが、試験では、さらっと問われる可能性があります。)
※『15日以内』というのは、懲罰的な意味があるので『通常の30日以内の半分』というイメージで覚えてください。
※増加概算保険料については、事業主側から申告がなされない限り、政府側でその事実を把握することはできないので、認定決定は行われません。確定保険料の申告の際に精算することになります。
2)認定決定された概算保険料の延納
認定決定された概算保険料も通常の概算保険料と同様の要件を満たせば、新たに、同様の方法で延納することができますが、最初の期分については、認定決定された日の翌日から起算して15日以内に納付しなければなりません。