社労士試験 予備校では教えないポイント解説 vol.079
雇用保険法(7)
求職者給付Ⅳ
今回は、日雇労働者のための失業給付です。
雇用保険の最後の受け皿であるとともに、日雇なので、常態として、日々、事業主が変わりますので、他の失業給付にはない特別な取り扱いがあります。
①日雇労働者給付金
1)日雇受給資格
日雇労働求職者給付は、日雇労働被保険者が失業した場合において、その失業の日の属する月の前2月に、その者について、印紙保険料が通算して26日分以上納付されているときに支給されます。
なお、日雇労働求職者給付金には、上記の要件を満たした日雇労働者に支給される『普通給付』のほか、季節労働者である日雇労働者に支給される『特例給付』があります。
【一般被保険者等に切り替えられた場合】
前2月の各月において18日以上同一の事業主の適用事業に雇用された日雇労働被保険者又は同一の事業主の適用事業に継続して31日以上雇用された日雇労働被保険者が日雇労働被保険者資格者継続の認可を受けなかったため、日雇労働被保険者とはされなくなった最初の月に離職し、失業した場合には、その失業した月の間における日雇労働求職者給付の支給については、その者を日雇労働被保険者とみなします。
※分かりにくい表現ですが、もし一般被保険者に切り替えられた場合は、『離職以前2年間で被保険者期間が通算して1年以上』というハードルを超えられない場合があるので、労働者保護の観点から上記の取り扱いをするという趣旨です。離職翌月限りの規定です。
2)日雇労働求職者給付金(普通給付)の受給手続
日雇労働被保険者の失業の認定は、原則として、日々その日について行われ、日雇労働求職者給付金(普通給付)は、失業の認定を行った日に、その日の分が支給されます。
したがって、日雇労働求職者給付金(普通給付)の支給を受けようとする日雇労働被保険者は、公共職業安定所長が定めた所定の時刻までに、その者の選択する(つまり、任意で労働者の都合のよい)公共職業安定所(日雇派遣労働者については、厚生労働省職業安定局長の定める公共職業安定所)に出頭して、日雇労働手帳を提出し、求職の申込みを行わなければなりません。
※朝からハローワークに行って仕事を待ってたけど、仕事にあぶれてしまった場合に、求職者給付金がもらえるというイメージです。
※失業の認定を受けようとする日が行政機関の休日等であるときは、その日(その日が年末年始のように連続しているときには、その最後の日)の後1箇月以内にその日に職業に就くことができなかったことを届け出ることにより失業の認定を受けることができます。
3)日雇労働求職者給付金(普通給付)の日額
日雇労働求職者給付金(普通給付)の日額は、以下の通りになります。
①第1級給付金
(前2月間の印紙保険料の納付状況(通算して26日分以上のうち)、以下、②③について同じ。)第1級印紙保険料(174円)が24日分以上納付されているとき…7,500円
②第2級給付金
第1級印紙保険料及び第2級印紙保険料(146円)が合計して24日分以上納付されているとき、又は、第1級、第2級、第3級印紙保険料(96円)の順に選んだ24日分の印紙保険料の平均が第2級印紙保険料の日額以上であるとき…6,200円
③第3級給付金
上記以外のとき…4,100円
※日雇労働被保険者は、印紙保険料の半額負担ほか一般の雇用保険料も一般の被保険者と同様に負担していますが、支払った保険料に対する給付金の額の率がいい(場合によっては、支払った保険料以上の給付金を受けとることができる。)ので、『いつまでも日雇労働被保険者でいたい。』という労働者もいるので、『強制的に』一般の被保険者に切り替わる規定があるわけです。『印紙保険料』の意義は、日々雇用主が変わるので雇用保険料納付の実態が確認しづらいので『納付の証明のため』という意味合いが強いです。逆にこの印紙が貼られていたら『一般の雇用保険料も納付している』と判断されるので、この印紙の取り扱いにも特別な規定があります。
【給付金の日額の自動的変更】
厚生労働大臣は、平均定期給与額が、直近の日雇労働求職者給付金の日額等の変更の基礎となった平均定期給与額の100分の120を超え、又は、100分の83(✕100分の80)を下回るに至った場合に、その状態が継続すると認めるときは、その平均定期給与額の上昇し、又は低下した比率を基準として、日雇労働求職者給付金の日額等を変更しなければなりません。
※ですので、結構長期間そのままの額が続き、ある年から急に2割以上、上昇、又は低下することになります。
4)日雇労働者給付金(普通給付)の支給日数
日雇労働求職者給付金(普通給付)は、日雇労働被保険者が失業した日の属する月における失業の認定を受けた日について、その月の前2月間に、その者について納付されている印紙保険料に応じ(※手帳に貼られている枚数のみが対象で、印紙の額は関係ありません。また、1日について印紙を貼る欄が1つしかないので、1日で2つの仕事をした場合には、最初の仕事についてのみの印紙しか貼れません。ただし、健康保険料の取り扱いも印紙貼付ですが、2つ働いた場合には、印紙をずらして2枚貼ることになります。)、以下の日数分を限度として支給されます。
①(納付された印紙保険料 以下、同じ。)通算して26日分~31日分…13日
②通算して32日分~35日分…14日
③通算して36日分~39日分…15日
④通算して40日分~43日分…16日
⑤通算して44日分以上…17日
※給付日数で18日以上という区分がないのは、18日以上だと、一般の被保険者と同じ労働日数に相当してしまうため。あくまでも、日雇労働者として17日が上限ということです。また、②~⑤が4日刻みなので、①は、28日分~となりそうですが、元々は28日分~だったのですが、週休2日制という概念が入ってきて、26日分~となりました。
【『待機』に相当するもの】
日雇労働求職者給付金は、各週(日曜日から土曜日までの7日間をいいます。)につき日雇労働被保険者が職業に就かなかった最初の日については、支給しません。つまり、『待機期間』に相当するものとして『各週最初の不就労日』が不支給となります。
。。。と規定ではなっていますが、上記の通り『日曜日』がスタートとなっており、日曜日は公共職業安定所が休みなので、実質的には、日曜日が不就労日となり、月曜日から仕事に就けなかった日には、求職者給付金がもらえるということです。公共職業安定所が日曜日が休みであることを正当化する(?)という感じですかね?(※筆者の推測です。)
5)日雇労働求職者給付金(特例給付)の受給手続等
※季節労働者のための規定と考えれば理解しやすいと思います。もちろん、支給要件を満たす限り、季節労働者である必要はありません。
日雇労働被保険者が失業した場合において、次のいずれにも該当するときは、その者は、管轄公共職業安定所の長に申出をすることで、日雇労働求職者給付金(特例給付)の支給を受けることができます。
①継続する6月間(基礎期間)に印紙保険料が各月11日以上、かつ、通算して78日以上納付されていること。
※つまり、6箇月続けて毎月コンスタントに11日以上、かつ、6箇月平均13日以上働くことが第1条件というです。
②基礎期間のうち後の5月間に日雇労働求職者給付金(普通給付又は特例給付)の支給を受けていないこと。
※後の5月に求職者給付金を受けているということは、少なくとも基礎期間のうちの『最初から5月のちのいずれかの月』は、その求職者給付金の基となっているので、①の条件がクリヤーされ、満たされなくなるということです。これが『最初の月』ならば、基礎期間以前の2月が支給の基になっているので関係ないということです。
③基礎期間の最後の月の翌月以後2月間(申出をした日が当該2月の期間内にあるときは、同日までの間)に日雇労働求職者給付金(普通給付)の支給を受けていないこと。
※その求職者給付金の支給を受けたのが基礎期間の最後の月の翌月ならば基礎期間の5月目と6月目、翌々月ならば6月目が、その求職者給付金の基になっているということです。
なお、特例給付の支給を受けることの申出は、基礎期間の最後の月の翌月以後4月の期間内に行わなければなりません。
特例給付の支給を受けることの申出をした者は、管轄公共職業安定所において、原則としてこの申出をした日から起算して4週間に1回ずつ失業の認定を受けることになります。
日雇労働求職者給付金(特例給付)は、基礎期間の最後の月の翌月以後4月の期間内の失業している日について、通算して60日分を限度として支給されます。
【特例給付の日額】
基礎期間が普通給付の3倍ですので、単純に、3)の条件の印紙保険料の納付日数分を3倍した条件により区分され、普通給付と同じ額が支給されます。
つまり、その労働者のライフワークバランスにより、普通給付か特例給付かのどちらかを選択することになり、どちらが得かは特にはないということです。
【給付関係事務】
普通給付については、原則として『その労働者の選択する公共職業安定所(つまり、その日に仕事の斡旋のために行った公共職業安定所)』で行われるのに対し、特例給付については『管轄公共職業安定所』つまり、その者の住所又は居所を管轄する公共職業安定所であることに注意が必要です。特例給付は、失業の認定等、一般の受給資格者同様の手続きがあるからです。
②基本手当との調整
日雇労働求職者給付金の支給を受けることができる者が一般の受給資格者である場合において、その者が、基本手当の支給を受けたときは、その支給の対象となった日については、日雇労働求職者給付金が支給されず、日雇労働求職者給付金の支給を受けたときはその支給の対象となった日については基本手当が支給されません。
※一般の被保険者と日雇労働被保険者を繰り返している労働者や日雇労働者被保険者の継続の許可がされなかった労働者、ダブルワークの場合等に、上記に該当するケースが生じるかと思いますが、どちらか給付日額の多い方を選択することになるかと思います。ただし、一般の基本手当を受給すると、その給付に対応する算定基礎期間が、以後の算定基礎期間の計算から除外されてしまうので、注意が必要です。