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社労士試験 予備校では教えないポイント解説 vol.076

雇用保険法(4)

失業等給付、求職者給付Ⅰ(受給手続、基本手当の日額)

①受給手続

1)受給手続

1.受給資格の決定

受給資格者が基本手当の支給を受けるためには、離職後、まず、(受給資格者の)管轄公共職業安定所に出頭し、求職の申込みをしたうえ、離職票(2枚以上持っているときは、すべての離職票)を提出して受給資格の決定を受けなければなりません。
一方、管轄公共職業安定所の長は、受給資格の決定を行ったときは、失業の認定日(原則、28日ごととなります。)を定め、受給資格者に知らせるとともに、基本手当の支給を受けるために必要となる雇用保険受給資格者証又は雇用保険受給資格通知を交付します。
また、受給期間延長等通知書(後記④参照)を持っているときは、これも併せて提出しなければなりません。
【受給資格通知が交付される者】
離職票を提出する際の本人確認において個人番号カード(マイナンバーカード)を提示した者であって、受給資格通知の交付を希望するものです。
なお、受給資格通知とは、当該者の氏名、被保険者番号、性別、生年月日、離職理由、基本手当日額、所定給付日数、給付に係る処理状況その他の職業安定局長が定める事項を記載した通知をいいます。

2.失業の認定と基本手当の支給

受給資格の決定を受けた受給資格者が基本手当の支給を受けるためには、指定された失業の認定日に、管轄公共職業安定所に出頭し、失業認定申請書に受給資格者証を添えて(当該受給資格者が受給資格通知の交付を受けた場合にあっては、個人番号カードを提示して(受給資格通知の交付の際に個人番号カードを提示したからです。)提出し、職業の紹介を求めた上で、失業の認定を受けなければなりません。(たとえindeed 等の民間の職業紹介会社で職業を探すつもりでも、この職業安定所への職業の紹介の登録は必要です。)
一方、管轄公共職業安定所の長は、前回の認定日から今回の認定日の前日までの期間(認定対象期間といいます。 ※出頭日当日が含まれていないのは、出頭日当日に就職活動、又は就職が決まる可能性があるからです。)に属する各日について失業の認定を行い、受給資格者に失業の認定を受けた日分の基本手当を支給します。
※毎回失業の認定をするのは、認定対象期間に短期アルバイト等をした場合は、その日は基本手当が支給されないからです。また、失業の認定は、受給資格者について、あらかじめ定められた認定日に行うものであるから、所定の認定日に出頭しないときは、原則として認定対象期間全部について認定されません。でも、当然、『その日は、就職のための面接があるので行けない。』ということもありますので、その場合は後述の特例(認定日の変更)があります。
※基本手当は、受給資格者に対し、原則として、受給資格者の預金又は貯金への振り込みの方法(口座振込)により支給されますが、管轄公共職業安定所の長がやむを得ない理由があると認めるとき(口座を持っていない等)は、受給資格者の申出により管轄公共職業安定所において支給すること(現金支給)ができます。
【代理人の出頭】
公共職業能力開発施設入校中ので場合、又は未支給の失業等給付に係る場合(つまり、本人が死亡した場合)を除き、代理人を出頭させて失業の認定を受けることはできません。
なお、代理人によることができないのは『失業の認定』の場合のみであって、たとえば、受給資格者(原則の口座振込の方法により基本手当の支給を受ける者を除く)の代理人が(窓口で)基本手当の支給を受けることは可能です。労働基準法における『直接払の原則の例外として、妻等の使者に給料を渡してもいい。』と同じ趣旨です。原則を貫くと、生活の糧となる給付を受けられなくなるからです。

3.求職活動の確認

『求職活動をしてないということは、仕事をしなくても生活に困らないんでしょ?だったら基本手当の支給はしなくてもいいよね?』という趣旨です。また、この確認は『自己申告』の部分が多く、不正受給にもつながりやすいのですが、社労士試験の範囲で、多分、最大の『3倍返し』という罰則が設けられています。
『失業の認定は、管轄公共職業安定所の長が、提出された失業認定報告書により、受給資格者が求人者に面接したこと、公共職業安定所その他の職業安定機関若しくは職業紹介事業者等から職業を紹介され、又は職業指導を受けたことその他求職活動を行ったことを確認して行うものとする。』とされています。
失業の認定が行われるためには、前回の認定日から今回の認定日の前日までの期間(認定対象期間)に、原則として2回以上(✕2日以上。1日に2回以上面接を受けることもあるからです。)の求職活動を行った実績(認定活動実績。※採用・不採用は関係なく、面接先の企業が証明してくれます。)があることが必要となりますが、次の場合は、1回以上の求職活動実績で足ります。
①就職困難者の場合
※求人数が少ないからです。そもそも『就職困難』ですので。。。
②最初の失業認定日に係る認定対象期間である場合
※エントリーシートを作成したり、求人に応募したけどまだ面接までの待機期間があるなどの状況を配慮しています。
③認定対象期間の日数が14日未満となる場合
※後述しますが、特例により認定対象期間を越えて認定を受けたり、傷病手当を受給した場合には、次の残った認定対象期間が14日未満となる場合があるからです。
④求人への応募(応募書類の郵送、面接・筆記試験の受験等)を行った場合
⑤巡回職業相談所における失業の認定及び市町村長の取次ぎによる失業の認定を行う場合
※地方の交通の便の悪い所などには巡回職業相談所が出向していくのですが、そもそも、地方であるということも含めて求人数が少ないからです。

また、公共職業安定所の長は、失業認定申告書に記載された求職活動の内容を確認する際には、受給資格者に対し、職業紹介又は職業指導を行うものとされています。
※しかし、私の経験からは、このような実感できるレベルの職業紹介や職業指導を受けたことは記憶にありません。確か『パネルに貼ってある求人票を見といてください。』とは言われましたが。。。規定ではそういう表現になっているということです。
【3回以上の求職活動実績が必要な場合】
離職理由による給付制限(給付制限期間が1ヶ月となる場合除く。)とその後の最初の失業認定日に係る認定対象期間とを合わせた期間について失業の認定を受けるためには、原則として3回以上(給付制限期間が2ヶ月の場合は2回以上)の求職活動実績があることが必要となります。
わかりやすく一言でいえば、給付制限期間が3ヶ月のケースです。3ヶ月あるのだから、月に1回ぐらいは就職活動ができるだろう。。。という趣旨です。

2)失業の認定日

1.認定日の原則

失業の認定は、求職の申込みを受けた公共職業安定所において、受給資格者が離職後最初に出頭した日から起算して4週間ごとに1回ずつ直前の28日の各日について行うものとされます。(したがって、毎回同じ曜日に出頭することになります。曜日固定の方が、忘れずに済むだろう。。。という意味もあるそうです。)
ただし、公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受ける受給資格者に係る失業の認定は、1月に1回、直前の月に属する各日(既に失業の認定の対象となった日を除く。)について行うものとされています。公共職業訓練施設の職員が手続きの代理をするので、全員一律月単位の方が都合がいいからです。
【公共職業訓練等】
国、都道府県及び市町村並びに独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が設置する公共職業能力開発施設の行う職業訓練(職業能力開発総合大学校の行うものを含む。)、職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律に規定する認定職業訓練(一定のものを除く。)その他の法令の規定に基づき失業者に対して作業環境に適応することを容易にさせ、又は就職に必要な知識及び技能を習得させるために行われる訓練又は講習であって、法令で定めるものをいう。

2.認定日の変更

職業に就くためその他やむを得ない理由のため所定の失業の認定日に管轄公共職業安定所に出頭できない受給資格者は、その後の旨を公共職業安定所の長に申し出ることにより、その申出をした日において、失業の認定を受けることができます。(認定日の変更)
【変更の申出時期】
認定日変更の申出は、原則として直前に事前になされなければなりません。ただし、変更理由が突然生じた場合等であって、事前に認定日の変更の申出を行わなかったことについてやむを得ない理由があると認められるときは、次回の所定の認定日の前日までに申し出て、認定日の変更の取扱いを受けることができます。

3.証明認定

受給資格者は、次のいずれかに該当するときは、その理由がやんだ後における(28日ごとに来る)最初の失業の認定日に管轄公共職業安定所に出頭(ただし、③の場合は、施設の職員が代理人となって認定手続きを行いますので、本人がこのような出頭をする必要はありません。)し、管轄公共職業安定所に出頭できなかった理由を記載した証明書を、受給資格者証に添えて(当該受給資格者が受給資格通知の交付を受けた場合にあっては、個人番号カードを提示して)提出することによって、失業の認定を受けることができます。
①疾病又は負傷のために公共職業安定所に出頭することができなかった場合において、その期間が継続して15日未満であるとき
※15日以上になると、傷病手当(額は基本手当と同額です。)の支給対象となります。
②公共職業安定所の紹介に応じて求人者に面接するために公共職業安定所に出頭することができなかったとき
③公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受けるために公共職業安定所に出頭することができなかったとき
④天災その後やむを得ない理由のために公共職業安定所に出頭することができなかったとき
【やむを得ない理由】
・水害、火災、地震、暴風雨雪、暴動、交通事故等のため
・証人、鑑定人、参考人等として国会、裁判所、地方公共団体の議会その他の官公署に出頭したため
などです。

②基本手当の日額

受給資格者に支給される基本手当の日額は、その受給資格者について算定された賃金日額に、所定の給付率を乗じて算定されます。給付率は、原則として50%(給付日額が多い)~80%(給付日額が少ない)の範囲で定められていますが、離職日に60歳以上65歳未満であった受給資格者については、45%~60%の範囲で定められています。
※65歳以上は、高年齢求職者給付金の対象となります。
※一見すると、給付金がかなり少ないイメージですが、離職中は休日という概念がありませんので、認定対象期間の28日間の範囲の中で『働いていない日』は給付対象となりますし、非課税、雇用保険料も天引きされないので、手取額としてはそんなに少ないわけではありません。ただし、別途、国民健康保険や国民年金の保険料の負担はあります。私の実感としては、1年前の所得税を基準として課される県市民税の負担(支払通知がちゃんと来ます。)が大変でした。。。

1)賃金日額

1.賃金日額の原則

『賃金日額は、算定対象期間において被保険者期間として計算された最後の6箇月に支払われた賃金(臨時に支払われる賃金及び3箇月を超える期間ごとに支払われる賃金を除く。)の総額を180で除して得た額とする。』
※除す数字が、働いた日数ではなく、概ね6箇月の日数である180日ですので、土日関係なく働いてない日が支給対象日となるわけです。 
※算定対象期間の特例を受ける場合でも被保険者期間が最低6箇月必要なので、『最後の6箇月』には、特例はありません。
【賃金】
雇用保険法における賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対象として事業主が労働者に支払うものをいいます。逆に、賃金日額の計算に算入しない賃金は、年3回までの賞与等があります。
なお、通貨以外のもので支払われる賃金の範囲及び評価額は、公共職業安定所長(✕厚生労働大臣、✕都道府県知事)が定めます。

2.日給・時給の場合の最低保障

賃金が、労働した日若しくは時間によって算定され、又は出来高払制によって定められている者の賃金日額については、被保険者期間として計算された最後の6箇月の賃金の総額を当該最後の6箇月の(180ではなく)労働日数で除して得た額の100分の70が最低保障されます。
※労働日数が少ない場合には当然総額も少なくなるので、原則通りの計算を貫くと、給付額が極端に少なくなるからです。しかし、その計算結果をそのままを給付額とすると、原則の180で除した場合のように土日も含めて均した額ではないので、逆に高くなりすぎるので、100分の70(イメージは、『一般の労働者は、月21日働くだろう。。。』です。)を乗じるということです。
【原則の場合と混在している場合】
賃金の一部が、月、週、その他一定の期間によって定められている場合には、その部分の総額をその期間の総日数(賃金の一部が月によって定められている場合には、1箇月を30日として計算します。)で除して得た額と日給・時給等の部分の最低保障額として算出された額との合計額が保障されます。

3.介護・育児休業等の場合の特例

原則通りに賃金日額の算定をすると、離職直前の賃金が低くなるべき事由があった場合に、不当に賃金日額が低額になってしまう場合の救済特例です。
受給資格者が一般被保険者であったときに、その対象家族を介護するため又は小学校就学の始期に達するまでの子を養育するため、休業をしていた場合又は勤務時間の短縮が行われていた場合であって、かつ、倒産・解雇等離職者に該当する理由又は特定理由離職者に該当する理由により離職し受給資格決定を受けた場合、それぞれこれらの『休業が開始される前又は勤務時間の短縮が行われる前に支払われていた賃金により算定した賃金日額』と、『原則の賃金日額』とを比較し、高い方を賃金日額とします。
なお、この取扱いを受けることができるよう、事業主は、被保険者が離職したことにより当該被保険者でなくなった日の翌日から起算して10日以内に、雇用保険被保険者休業・所定労働時間短縮開始時賃金証明書を所轄公共職業安定所の長に提出しなければならず、所轄公共職業安定所の長は、これに基づいて作成した雇用保険被保険者休業・所定労働時間短縮開始時賃金証明票を、当該被保険者であった者に交付しなければなりません。又、この交付は、事業主を通じて行うこともできます。
※職業安定所の長に提出するのが『書』、職業安定所の長が交付するのが『票』です。(こんな論点は、試験では問われないと思いますが。。。)
【対象家族】
後の記事で説明する介護休業給付金に係る対象家族と同じです。
【算定】
1.と2.は、雇用保険被保険者離職票に基づき賃金日額を算定しますが、3.では、雇用保険被保険者休業・所定労働時間短縮開始時賃金証明書票に基づき賃金日額を算定することになります。

4.最低・最高限度額の適用

※限度額そのものは毎年変わるので、丸暗記する必要はありません。
算定した賃金日額が(年齢による差はなく)2,746円を下回るときは、2,746円が(最低限度額)、次の額を超えるときは次の額が、それぞれ賃金日額当該されます。
①60歳以上65歳未満…16,210円
②45歳以上60歳未満…16,980円(一番高い区分です。)
③30歳以上45歳未満…15,430円
④30歳未満…13,890円
なお、年齢は受給資格に係る離職の日の年齢ですので、年齢区分の境目の方で、割といい給料をもらっていた方は、離職日に配慮した方がいい方もいらっしゃるかと思います。30倍すると月給換算になりますので、概ね月に52万円以上もらってたら、間違いなく最高限度額に引っ掛かります。

2)基本手当の日額

1.基本手当の日額の算定

雇用保険は、次の就職までの生活の糧ではあるものの、贅沢な生活までを保障するわけではありませんので、算定された賃金日額がストレートに1日分の基本手当の日額になるわけではありません。賃金日額に一定の乗率を掛けて、1日分の基本手当の日額としますが、賃金日額が高額になるほど乗率は低くなり、更に最高限度額も適用されますので、基本手当の日額は、最高でも8,500円程度で頭打ちとなります。
基本手当の日額は、賃金日額に次の給付率を乗じて得た金額となります。(基本手当の算定も含めて、特に定めがなければ、1円未満の端数切り捨て処理となります。)
 (賃金日額)
①2,746円(最低限度額)以上5,110円未満…100分の80
②5,110円以上12,580円以下…100分の80~100分の50
③12,580円超…100分の50
ただし、受給資格に係る離職の日において60歳以上65歳未満である受給資格者の基本手当の日額は、賃金日額に次の給付率を乗じて得た金額となります。
上記①の区分…100分の80(上記と同じ)
上記②の区分…100分の80~100分の45
上記③の区分…100分の45

2.基本手当の減額

受給資格者が、失業の認定に係る期間中に自己の労働によって収入を得た場合は、次のような基本手当の支給額の調整が行われます。比べる対象が『賃金日額の80%』であって、雇用保険からは、『自己の労働による収入と合わせて、この額以上は給付されません。』ということです。もちろん、自己の労働による収入が減額されるわけではありません。あくまでも、雇用保険の方での減額調整となります。
〈①収入の1日分相当額から1,331円(控除額 ※交通費と考えてください。 以下、aとします。)と基本手当の日額(以下、bとします。)の合計額が、賃金日額の100分の80相当額(以下、cとします。)を超えないとき つまり、a+b≦cの場合〉
この場合、基本手当は減額されずに支給されます。手取総額は、a(現実的には、1,331円控除前の金額。③において同じ。)+bとなります。
〈②a+b>c かつ a<cの場合〉
この場合は、a+bがcを超える額を基本手当から控除した残りの額が支給されます。つまり、手取総額は、cとなります。
〈③a≧cの場合〉
基本手当は支給されません。手取総額は、当然、aとなります。

3)自動的変更

厚生労働大臣は、年度の平均給与額が『直近の自動変更対象額又は控除額が変更された年度の前年度』の平均給与額を超え、又は下回るに至った場合において、その上昇し、又は、低下した比率に応じて、その翌年度の8月1日以降(✕4月1日以降 そんなに早く平均給与額は計算できません。また、社会保険科目で9月1日という日にち(定時決定)が出てきますので、そことの引っ掛けに注意です。)の自動変更対象額(最低・最高限度額、給付率決定基準(5,110円・12,580円のことです。)の金額です。)又は控除額を変更しなければなりません。自動変更対象額に5円未満の端数があるときは、これを切り捨て、5円以上10円未満の端数があるときは、これを10円に切り上げます。なお、最低限度額に1円単位の端数があるのは、算定された各年度の8月1日以降に適用される自動変更対象のうち、最低賃金日額(その年度の4月1日に効力を有する最低賃金法に規定する地域別最低賃金の額を基礎として厚生労働省令で定める算定方法により算定した額をいいます。)に達しないものは、その年度の8月1日以降、当該最低賃金日額とされるからです。なお、最低限度額を規定通りに算定すると、2,700円となります。告示(令和5年厚労告237号)でも、この2,700円と告示されていますが、この規定により算定した最低賃金日額である2,746円に達しないため、賃金日額の最低限度額は、2,746円とされています。
【最低賃金日額の算定方法】
最低賃金日額は、その年度の4月1日に効力を有する最低賃金法に規定する地域別最低賃金の額について、一定の地域ごとの額を労働者の人数により加重平均して算定した額に20を乗じて(つまり、1週間に最低20時間は働くだろう。。。という意味です。)得た額を7で除した額(つまり、1日の額)とします。

③所定給付日数

以前は選択式でこの日数を空白で抜かれたこともあり、受験生を悩ませていた項目です。特定受給資格者については、すべての日数が30の倍数であるところに目を付けた語呂合わせを各予備校で作っており、私も覚えてはいましたが、5✕5の升目にその語呂合わせを正確に当てはめることそのものが困難を極めていました。しかし!私が合格した年は、この表が問題中に資料として与えられての事例問題として出題されました。出題のポイントが、『給付日数を暗記しているか?』というところから、『この表を使えるか?』『離職労働者の区分が判断できるか?』というところへ変化してきているようですね。(その年度の試験後の予備校の解答速報での評価を参考としています。)
受験上は、ちゃんと覚えるに越したことはありませんが、それでは費用対効果が悪すぎるので、①特別な取扱いがある330日と360日の対象者の区分と、②最低の90日の対象者の区分、③後はすべての表に出てくる150日の対象者の区分を押さえておけば、たとえ別のところが空白で抜かれても何となくらしい数字は選べるので、全滅は防げるかと思います。
以上を踏まえて、詳しい区分と日数は省略して(お手持ちのテキストには、表として載ってるはずなので、そちらを参照願います。)説明していきます。

1)一般の受給資格者の所定給付日数

ほとんどの離職者が該当する区分です。この区分だけが年齢による区分がなく、1✕3の升目になります。
一般の受給資格者(後記、特定受給資格者や就職困難者に該当しない受給資格者)の所定給付日数は、基本手当の受給資格に係る離職の日(基準日といいます。)における年齢を問わず算定基礎期間により、90日から150日の範囲で定められています。3区分なので、真ん中が『算定基礎期間が10年以上20年未満で120日』と覚えておけば後はなんとかなります。120を30で割った『4』と覚えてもいいです。特に語呂合わせと併用して覚える方は、30で割った数字で覚える方がいいと思います。

2)特定受給資格者の所定給付日数

1.適用要件

特定受給資格者とは、『倒産・解雇等離職者である受給資格者(次の、3)就職困難者を除く。)』をいいます。また、基準日が平成21年3月31日から令和7年3月31日まで(おそらく再延長されるかと思います。)の間にある特定理由離職者Ⅰ(希望に反して契約更新がなかったことにより離職した者。就職困難者を除く。)についても、特定受給資格者とみなして所定給付日数(及び受給期間(の延長の特例))が適用されます。
※就職困難者に該当する受給資格者は、更に有利な所定給付日数が規定されているので、特定受給資格者からは除かれることとなっています。

2.特定受給資格者の所定給付日数

特定受給資格者の所定給付日数は、基準日における年齢及び算定基準期間により定められています。(詳細は省略)升目は5✕5になります。縦の軸が、30歳(未満)に+5.+10.+15して65歳(未満)で終わり。横軸(年)は真ん中3つが5.10.20(未満)と倍々となっています。
私を含め多くの受験生が語呂合わせで覚えてた部分ですが、私の受験2年目か3年目に給付日数の改訂が入って呆然とした記憶があります(笑)。しかし、私が合格した年は、何と!この表が資料として与えられました。なので、今後は、資料として与えられるのでは?と思いますが、逆に、以前は語呂合わせを覚えていたら確実に得点できたラッキー問題だったのに、今後は事例問題化されるかと思いますので、得点しづらい問題が出題されるかもしれません。

3)就職困難者の所定給付日数

就職困難者(障害者など)である受給資格者の所定給付日数は、基準日における年齢及び算定基礎期間により、
①算定基礎期間が1年未満(ただし被保険者期間が6箇月以上必要)…年齢に関係なく150日
②算定基礎期間が1年以上
・45歳未満…300日
・45歳以上(65歳未満)…360日
【就職困難者】
障害者の雇用の促進等を関する法律に規定する
・身体・知的・精神障害者
・刑余者(保護観察に付された者等でその者が職業の斡旋に関し保護観察所長から公共職業安定所長に連絡のあった者)
・社会事情により就職が著しく阻害されている者
をいいます。

4)算定基礎期間

算定基礎期間(被保険者であった期間)は、(離職の日である)基準日まで引き続いて同一の事業主の適用事業に被保険者として雇用された期間にとどまらず、その前に(別の事業主の適用事業で)被保険者であった期間を通算した期間とされます。
ただし、次の被保険者であった期間は、当該期間に算入せれません。
【算定基礎期間から除外される期間】
①離職後1年以内に被保険者資格を再取得しなかった場合の『前の被保険者であった期間』
※1年以上仕事をしなくても大丈夫だったというイメージ。後の被保険者期間のみで所定給付日数が決定されます。当然、後の被保険者期間が1年なければ、前後2つの被保険者期間が1年を超えて空いているわけですから、『離職の日以前2年間(算定対象期間)に被保険者期間が通算して12箇月以上』という条件は満たされえませんので、そもそも一般の受給資格者にもなれません。(この場合でも、被保険者期間が6箇月以上である特定受給資格者や就職困難者にはなれる場合があります。)
②以前に基本手当又は特例一時金の支給を受けたことがある場合の当該給付の算定基礎となった被保険者であった期間
※基本手当等を受給したらリセットされるというイメージです。ただし、すぐに再就職するなどして基本手当等を受給しなければ、リセットされません。これは、受給資格者を資格取得を判断する被保険者期間からは『(基本手当等を受給しなくても)受給資格等を取得した場合』には算入されなくなることとの違いに注意です。受給資格の資格取得の判断で、基本手当等を受給しなくても除外されるのは、『頻繁な離職を防ぐため』、受給しなければ算定基礎期間からは除外されないのは、『労働者本人が雇用保険料を負担しているから』というイメージです。
③育児休業給付又は出生時育児休業給付の支給を受けたことがある場合の当該給付金に係る休業の期間
※休業期間中は無給となるため、雇用保険料を負担していないからというイメージです。①との違いは、休業期間中であっても労働者であるということです。
④資格取得の確認が遅れた場合の
a 当該確認があった日の2年前の日前の被保険者であった期間
b.被保険者の負担すべき労働保険料の額がその者の支払われた賃金から控除されていたことが明らかである期間のうち最も古い時期として厚生労働省令で定める日前の被保険者であった期間
※いずれも事業主が労働保険の届出を怠っていたケースです。できるだけ労働者有利に取扱いできるようにとしています。b.は、a.では最長過去2年間となるところ、それ以前に被保険者が労働保険料を負担していたことが明らかであればそこまでさかのぼるという労働者有利な取扱いということです。
(上記記事中の『イメージ』は、皆さんが理解しやすいように筆者がそういう表現したということです。テキストなどには記載されていません。絶対的に正しいとは保証できませんが、当たらずとも遠からず。。。ということでご容赦願います。)

④受給期間

基本手当等は、短期アルバイトなどで収入があった日やそもそも公共職業安定所に出頭しなければ支給されませんので、『支給を受けることができるリミットの期間』が受給期間として定めれれています。

1)所定の受給期間
基本手当の受給期間は、原則(受給期間の延長の特例が適用されない場合)として次のように定めれています。
①下記②③以外の受給資格者…(基準日の翌日から起算して。以下同じ)1年
②所定給付日数が360日である受給資格者(45歳以上60歳未満で算定基礎期間が1年以上の就職困難者)…1年+60日
③所定給付日数が330日である受給資格者(45歳以上60歳未満で算定基礎期間が20年以上の特定受給資格者)…1年+30日
※②③は、所定給付日数が1年に近く、受給期間内に満額給付を受けられない場合があるからです。( )内は今現在で該当する区分を記載していますが、今後の法改訂で変わる場合があります。
以下、特例を見ていきます。

2)定年退職者の特例

定年退職者には『長年働いたからちょっと骨休み。。。』という方もいらっしゃるので、そういう希望に沿うべく趣旨の規定です。

1.原則

次の①又は②に該当する受給資格者が、当該離職後一定の期間求職の申込みをしないことを希望する場合において、公共職業安定所長にその旨を申し出たときの受給期間は、所定の給付期間に、『求職の申込みをしないことを希望する一定の期間(1年を限度とします。以下『猶予期間』といいます。)』に相当する期間を加算した期間とされます。
※『骨休みも1年まで』ということです。もちろん、骨休みの間に次の就職を決めても何ら問題はありません。次の就職先で雇用保険が適用されれば『再就職したんだ。。。』って判りますから。
①60歳以上の定年に達したことによる離職者
②60歳以上の定年後の再雇用等による継続雇用期限到来による離職者
【申出の手続き】
定年退職者等の受給期間延長の申出は、原則として、当該申出に係る離職の日から起算して2箇月以内に、受給期間延長等申請書に離職票を添えて管轄公共職業安定所の長に提出することによって行います。

2.途中で求職の申込みをした場合

定年退職者等の特例による受給期間の延長を申し出た受給資格者が、猶予期間に求職の申し込みをしたときの受給期間は、所定の受給期間に、『当該基準日の翌日から当該求職の申込みをした前日』までの期間に相当する期間を加算した期間とされます。
※つまり、求職の申込みをしたらその時点で自動的に猶予期間が終了するということです。

3)就労不能の特例

所定の受給期間(ただし、定年退職者等の特例が適用された場合は、特例により延長された場合の受給期間とします。以下同じ。)内に、妊娠、出産、育児、疾病・負傷、親族の看護等の理由により、引き続き30日以上職業に就くことができない者が、管轄公共職業安定の長にその旨を申し出た場合の受給期間は、所定の受給期間に、その職業に就くことができない期間を加算した期間(加算後の受給期間が4年を超えるときは4年)とされます。
※たとえば、元々の受給期間が1年の者が、5箇月経った後に疾病にかかり3年2箇月職業に就くことができなかった場合、1年+3年2箇月で4年2箇月とはならず、4年となるということです。又、5箇月+3年2カ月で3年7箇月とはならないことに注意が必要です。規定は、『所定の受給期間に、その職業に就くことができない期間を加算』なので、その意味を理解願います。ひょっとしたら引っ掛け問題で出題されるかもしれません。職業に就くことができない期間を所定の受給期間の『後ろ』にくっ付けるというイメージで大丈夫です。
【申出の手続】
就労不能による受給期間延長の申出は、原則として、引き続き30日以上職業に就くことができなくなった日の翌日から、当該者に該当するに至った日の直前の基準日の翌日から起算して4年を経過する日までの間(延長された受給期間が4年に満たない場合は、当該受給期間の最後の日までの間)に受給期間延長等申請書に受給資格者証(受給資格者証の交付を受けていない場合(受給資格通知の交付を受けた場合を除く。)には、離職票)を添えて(当該申出を行う者が受給資格通知を受けた場合にあっては、個人番号カードを提示して)管轄公共職業安定所の長に提出することによって行います。
※規定では『期限最終日』まで申請を受け付けることにはなっていますが、期限ギリギリでの申請だと給付日数の残り分が受給できない場合があります。また、この『職業に就くことができない期間』前に給付日数分すべてを受給し終えていた者は、この項の規定は、全く関係がありません。(給付日数が増える規定ではないからです。)

4.事業を開始した場合

いわゆる『脱サラ』した方への規定です。
受給資格者であって、基準日後に事業(その実施期間が30日未満のものその他厚生労働省令で定めるものを除く。以下、この項において同じ。)を開始したものや基準日前に事業を開始し、当該基準日後に当該事業に専念する者等が、公共職業安定所長にその旨を申し出た場合には、当該事業の実施期間(当該実施期間の日数が4年から前期1)~3)の規定により算定される期間の日数を除いた日数を超える場合における当該超える日数を除きます。)は、受給期間に算入しないこととされています。
※つまり、1)~3)により算定される期間が優先され、かつ、全体で最長が4年ということです。
※この規定は、離職に際して(給付日数を残して)起業した受給資格者が休廃業した場合でも、(残りの)基本手当を受給することができるようにしたものです。
【厚生労働省令で定めるもの】
①その事業を開始した日又はその事業に専念し始めた日から起算して、30日を経過する日が、所定の受給期間末日後であるもの
※つまり、受給期間末日以前30日以上前に起業するということです。
②その事業について当該事業を実施する受給資格者が就業手当又は再就職手当(いずれも後の記事で後述)の支給を受けたもの。
※基本手当の受給を別の形で得たということです。
③その事業により当該事業を実施する受給資格者が自立することができないと管轄公共職業安定所の長が認めたもの。
※おおよそ採算が取れない事業と判断されたということです。
【申出の手続】
事業を開始した場合の支給の期間の特例の申出は、原則として、事業を開始した日又は当該事業に専念し始めた日の翌日から起算して2箇月以内に、受給期間延長等申請書に登記事項証明書その他当該特例に該当することの事実を証明することができる書類及び受給資格者証(受給資格者証の交付を受けていない場合(受給資格通知の交付を受けた場合を除く。)には、離職票)を添えて(当該申出を行う者が受給資格通知を受けた場合にあっては、個人番号カードを提示して)管轄公共職業安定所の長に提出することによって行います。
なお、受給期間の延長の申出は、代理人(による窓口での手続き)又は郵送によることが可能です。

5)待機

『基本手当は、受給資格者が当該基本手当の受給資格に係る離職後最初に公共職業安定所に求職の申込みをした日以後において、失業している日(疾病又は負傷のため職業に就くことができない日を含む。※つまり、理由は問わないということです。)が通算して(※つまり、飛び飛びでもいいということです。)7日に満たない間は支給しない。』
※本当に失業しているかの確認のための期間です。7日以内に再就職するということは、『離職前に再就職先が決まっていたでしょ?』ということです。
【待機を1回完了した場合】
待機は、1受給期間内に1回をもって足りるので、受給期間に就職して新たな受給資格を取得することなく再び失業して求職の申し込みをした場合には、最初の離職後においてすでに待機を満了している者については、再び待機の要求はされません。
※この待機というのは不正受給を防ぐための規定なので、1度待機が完成すれば、1受給期間(延長等がなければ、原則1年)の間に短い就職期間があっても、再離職後にまだ給付日数に残りがあれば、待機の必要なく、すぐに基本手当の受給ができるということです。
また、待機の途中で就職した場合、例えば受給資格者が、待機期間を4日間認定された後に再就職し、新たな受給資格を取得することなく再び失業して求職の申し込みをした場合は、受給期間内の再就職申し込み日以後3日間(7日間-4日間=3日間)の失業の認定を受けたときに待機期間が満了します。再離職後は待機期間が必ずしも7日間必要とはならないことに注意が必要です。もちろん、最初の離職後にすぐに就職した場合は、最初の待機期間での失業の認定日数は0日なので、再離職後の待機期間は7日間となります。逆に考えると、最初の離職後に7日間の待機期間を満了すれば、再離職後の待機期間が必要ない(つまり、0日)ということと、整合性が取れていると言えます。

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