パワハラと適応障害
皆さん、こんにちは。ドクターPです。
前回はストレスによって起こる精神疾患の代表格である適応障害について、定義から診断基準、うつ病との違いなどをお話させて頂きました。
ストレス因は職場での人間関係のトラブル、パワハラ、モラハラ、いじめ、借金などの経済問題、離婚、家族の問題、健康の問題など対象は様々ですが、今回はその一つである『パワハラ』に焦点を当てて解説します。
パワハラの問題と聞くと何が思い浮かびますか?スポーツ界では、日大アメフトや女子体操、最近ではアイススケートの織田さんの問題は記憶に新しいですね。企業では、前回取り上げたトヨタ以外にも三菱電機でも親入社員2名がパワハラで自殺したことが問題となりました。他の業界でももちろん、閉鎖された組織であれば日常的にパワハラは起きています。医学界でも例外ではありません・・・。
様々な所でパワハラが問題になっているのですが、実をいうと、企業にパワハラ防止を義務づける、『パワハラ防止法』が2020年の6月に法制化されます。
まずは大企業が対象で、雇用管理上の措置を講ずることが事業主の義務となります。具体的には社内制度づくり、相談窓口の設置、実際把握や研究などですが、中小企業は『努力義務』ということになっています・・・。さらに現在のところパワハラ防止法に対する罰則はなく、行政指導などに留まっています・・。
一歩(だけ)前進といったところでしょうか。。
では、パワハラの定義とは一体何でしょうか?指導との違いとは一体何でしょうか? 職場におけるパワーハラスメントとは以下の3つの要素を全て満たすものです。
1. 職場の様々な有利な立場を背景に
2. 業務上必要かつ妥当な範囲を超えた言動によって
3. 身体的・精神的な苦痛を与えたり、就業環境を悪化させること
では、パワハラにはどのように対処したらよいでしょうか?パワハラと指導は異なりますが、行き過ぎた指導として自分自身に問題がある場合は、それを見直したり、パワハラをした人の意図を考えたり、気にしない・もしくはかわす技術(おどおどしない、相手をおだてる、相手の機嫌を見極めるなど)で、済ませられる範囲の問題であればそれでよいのですが、自身の問題ではなく、許容の範囲を超えて『堪忍袋の緒がきれた!』、『正義のために戦ってやる!』となった時、もしくは、そうなりそうな時の具体的な対応策についての紹介です。
1. しっかりとした証拠を残す
・録音(パワハラから身を守るための隠し録音はOK)
・同僚の証言
・他にパワハラをうけている人がいれば一緒に行動する
2.社内窓口に相談する(大企業であれば総務部や総務科にセクハラの窓口 があるのでそこで相談)
3.労働組合に相談する(どんな労働組合かによる)
4.心身に影響がある場合は、医師に相談して診断書を発行してもらう
5.弁護士を代理人に立てて内容証明を送ってもらう(弁護士からの書面などで心理的に効果あり)
これらの主張は自分自身でしなければならず、関係悪化のリスクやこうした動きをするには労力がかかりますが、自ら辞めてしまうのはよくないと考えます。正義のために戦う覚悟が必要です。
動画では適応障害にてついて解説しています。
本日はこれでおしまいです。お役に立てれば幸甚です。
ドクターP