一つ前の記事『生殺与奪権や環境整備点検で現場を支配したビッグモーターの背後に知床遊覧船と同じ経営コンサルタントの影が...』で同じ経営コンサルタント(株式会社武蔵野、小山昇代表取締役社長)が知床遊覧船やビッグモーターの企業風土を歪めていたという伝聞を紹介しましたが、成果至上主義・利益至上主義に走るのは非上場企業・中小企業だけでなく、上場企業・大企業も金儲けのためには手段を択ばないようです。
昨年の銃撃事件発生以降、一部の(主に自民党)国会議員や地方議員と旧統一教会とのズブズブの関係がメディアで大きく取り上げられましたが、先日からビッグモーターと損害保険会社(とりわけ損保ジャパン)とのズブズブ(見方によっては利益相反)の関係が世間を騒がせています。
さて、戦前から(少なくとも)日本国内で企業同士が親密な関係を築く際には営業協力・人事交流・資本提携(一方から他方へ出資、または、相互に出資(株式の持合))の三点セットが広く利用されてきました。
損保ジャパンは事故を起こした多数の損害保険契約者に修理工場(優良事業者)としてビッグモーターを紹介(入庫誘導)し、保険金で賄われる修理費用をビッグモーターの言い値(完全査定レス)で支払う(損害査定人(アジャスター)による見積りの点検を省き、ビッグモーターの見積り通りに保険金を支払う)一方、車を購入したり車検を受けたビッグモーターの顧客の自賠責保険(自動車損害賠償保障法に基づく自動車損害賠償責任保険、強制保険)契約が損保ジャパンへ優先的に割り振られていたそうです。ギブアンドテイクの形で互いに営業協力していたようです。
損害保険会社が(決して高額ではない)自賠責保険の契約数にこだわることに首を傾げる方も多いと思いますが、自賠責保険の取り扱いはロハではありません。自賠責保険の契約を1件取り扱うと代理店(ビッグモーター)には1,735円、損害保険会社には5,056円が支払われます。
新車であれ中古車であれ、車を購入する際には必ず自賠責保険を契約する必要があり、車検の際にも新たに自賠責保険を契約する必要があるため、損害保険会社はたいした手間も時間もかけることなく5千円余りの手数料(粗収入)を手にすることができます。(ビッグモーターの年間販売台数は約13万台、年間車検台数は約26万台。)
また、社長の指示のもとで、任意保険の販売についても過度なノルマが課せられていたことが2016年から2017年にかけて報道されました。
損保ジャパンとビッグモーターとの間には深い人事交流があったことも報道されています。
2011年以降、損保ジャパンからビッグモーターへ延べ37人が出向し、中には執行役員を務めたり、保険金の不正請求が横行した時期に事故車両の修理を担う板金塗装部門の担当部長を務めた出向者もいたそうです。
また、辞任した兼重宏一前副社長(兼重宏行前社長のご長男)は早稲田大学(商学部)を卒業後、2011年4月から2012年6月にかけて(後に損保ジャパンに統合された)日本興亜損保に在籍(丁稚奉公?)していたそうです。
更に、少なくとも7~8年前まで損保ジャパンはビッグモーターと資本提携(ビッグモーターへ出資)していました。
2015年(平成27年)9月30日時点で発行済株式(非上場)の8割を保有していた創業者(兼重宏行前社長)には遥かに及びませんが、損保ジャパン(当時の商号は損害保険ジャパン日本興亜株式会社)は発行済株式(非上場)の7%余りを保有していました。
その後、創業者が保有していた株式を移管したり、複数の(ビッグモーターの取引先)金融機関等が保有していた株式を買い戻したのか、現在では資産管理会社(実質的にビッグモーターの持株会社)である(兼重宏行前社長が代表取締役、兼重宏一前副社長が取締役を務める)株式会社ビッグアセット(資本金500万円のペーパーカンパニー)がビッグモーターの発行済株式を全て所有しているそうです。
昨年夏に(銃撃事件や国葬の蔭で)保険金の不正請求について報道され始めてから長い時間がかかりましたが、国土交通省も金融庁も、ようやく本腰を据えたようです。不正請求については近日中に全容が解明されるかもしれません。
2023/8/3
ビッグモーターのサプライチェーン調査
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