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「片付けられない」は病気かも?:ためこみ症を正しく理解し克服する方法


「片付けられない」「物を捨てられない」と聞くと、多くの人はその人の性格や生活習慣の問題と考えがちです。しかし、これは単なる性格の一部ではなく、「ためこみ症」という心の病気である場合があります。この症状は、周囲の人々から「怠けている」「汚い」「おかしい」といった偏見や誤解を受けやすく、大きな苦しみを伴う複雑な状態です。


本記事では、ためこみ症の正しい知識を提供し、症状を持つ方を支援するための具体的な方法について解説します。偏見をなくし、より理解あるサポートを行うための一助としてお役立てください。




ためこみ症とは?


ためこみ症は、強迫性障害(OCD)や関連する障害として分類される精神的な健康状態です。この症状を持つ人は、物を捨てることに強い苦痛を感じたり、必要以上に物を収集してしまいます。その結果、住空間が物であふれ、生活に支障をきたすようになります。


主な特徴


  • 物を捨てられない:その物の価値や実際の必要性に関係なく、「捨てたら何か悪いことが起きるかも」という不安や、「いつか使うかもしれない」という理由で手放せません。

  • 過剰な収集癖:必要のないものを大量に集めてしまう傾向があります。これには無料のチラシや古い衣類、食品の包装などが含まれます。

  • 物で埋め尽くされた生活空間:居住スペースが物であふれ、生活に支障をきたします。例として、キッチンが使えない、寝室が機能しない、バスルームが物で埋まる、といったケースが挙げられます。


ためこみ症と収集癖の違い


収集癖のある人は、特定のテーマや目的を持って物を集め、それらを整理して鑑賞や利用を楽しみます。一方、ためこみ症では、物の収集が無秩序であり、結果的に混乱や生活空間の制限につながります。




ためこみ症の症状


ためこみ症は、症状が物理的に現れるため比較的気づきやすい一方で、その原因や背景に目を向けることは容易ではありません。以下の症状に注意してください。


診断基準(DSM-5に基づく)


  1. 物を捨てる、または手放すことに持続的な困難を感じる

    • その物の実際の価値に関係なく、強い不安や葛藤を感じます。

  2. 捨てられない理由として、「物を保存しなければならない」という強い思い込みや、不安感がある

  3. 物の過剰な蓄積により、生活空間が正常に使用できなくなる

    • 部屋が片付いている場合、それは他者(家族、清掃業者など)が介入した結果である場合がほとんどです。

  4. 社会的、職業的、その他の重要な日常生活に著しい支障をきたす

    • 安全な環境の維持が困難になります。


よく見られる兆候


  • 物を積み上げた結果、転倒や火災のリスクが高まる。

  • ダスト、カビ、害虫が発生し、健康問題を引き起こす。

  • 仕事や予定に遅れる:必要な書類や道具を見つけられない、家から出られない。


併存症としてのうつ病


ためこみ症を持つ人の約50%がうつ病も経験していると言われています。以下のような兆候がある場合、うつ病が影響している可能性があります:


  • 趣味や好きなことへの興味喪失

  • 慢性的な疲労感

  • 希望を感じられない、自己評価が低い




ためこみ症を持つ人を支える方法


ためこみ症は、根本的な治療と適切な支援があれば改善が可能です。しかし、支援する側も慎重なアプローチが必要です。


1. 愛情と尊重を持つ


ためこみ症を持つ人は、自分の行動や生活状況について強い恥ずかしさや罪悪感を感じています。そのため、非難や強制的な片付けは避け、次のような態度を心がけましょう:


  • 愛情を示す:物を捨てる行為より、本人との信頼関係を優先します。

  • 批判を避ける:「どうしてこんなに散らかっているの?」ではなく、「困っていることがあれば教えてね」と声をかけましょう。


2. 問題の根本に目を向ける


ためこみ症は、単に片付けが苦手という問題ではありません。その背景には、強い不安感や心理的な要因が隠れています。物を捨てることを強制すると、逆に信頼を損ねてしまうことがあります。


注意:他人が勝手に物を捨てると、本人の不安が増し、再び物をため込む可能性が高くなります。




ためこみ症の治療方法


1. 認知行動療法(CBT)


ためこみ症の治療において最も効果的とされるのが認知行動療法(CBT)です。


  • 思考のパターンを変える:物を捨てることへの不安やこだわりを緩和します。

  • 行動の改善:片付けや整理整頓のスキルを学びます。


2. スキルトレーニング


特に注目されているのが、次のようなスキルトレーニングです:


  • 注意力のトレーニング:一度に一つの物に集中し、整理に取り組む。

  • 分類の練習:物を論理的なカテゴリーに分けるスキルを学ぶ。

  • 意思決定の強化:残す物と捨てる物を判断するスキルを高める。


3. 専門家の介入


ためこみ症に特化したトレーニングを受けた専門家のサポートは不可欠です。自分一人で解決しようとせず、適切な支援を求めましょう。




まとめ:ためこみ症は克服できる


ためこみ症は、生活に深刻な影響を与える心の病気ですが、正しい知識と専門的な治療があれば改善が可能です。支える側としては、批判ではなく、共感と尊重を持った態度で接することが大切です。


回復には時間がかかるかもしれませんが、適切な治療と支援があれば、より快適で安心な生活を取り戻すことができます。あなたが愛する人を支える存在になることで、回復への道を一緒に歩むことができるでしょう。


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【あとがき】

ためこみ症も強迫症(OCD)の一種であり、正しい知識とサポートがあれば克服は十分可能です。もし「もっと体系的に学びたい」「具体的な対策を知りたい」と思われた方は、当事者や家族の視点から体系的にまとめた全25記事の有料プログラムをぜひご覧ください。ERP(暴露反応妨害)など、実践的なアプローチを分かりやすく解説しています。

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大切な方と一緒に、快適で安心な生活を取り戻すきっかけになれば幸いです。


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