精神スタミナセンター、悩みの電話

「精神スタミナセンター悩みの電話」

「こちら精神スタミナセンター、悩みの電 話です。どうかなされましたか?」

電話の向こうから震える声が聞こえる。 「あの... 包丁で切った... 血が出ている...」

急展開すぎて動揺したが、職業柄、冷静さ が命だ。「手首ですか?」

「いや、わからない...」

とにかく状況を把握せねばと思っている と、続けてこう言われた。

「練炭にも火をつけた...」

練炭!?まずい! と思いつつ指示する。
「窓を開けてください!」

「えっ、屋外ですけど...」

屋外!?冷静になれ、冷静になれ。
「屋外で何をしているのですか?」

「これからバーベキューを始めようとしてたんですけど...」

――楽しんでください、としか言えなかっ た。

「こちら精神スタミナセンター、悩みの電 話です。どうかなされましたか?」

「飛び降ります...」

思わず息を飲む。
「何階ですか?」

「5階です...」

5階...、生死の境目だ。これは止めねば!と 説得しようとしたが、ふと違和感が。「5階ですよね?」

「そうです」

一瞬の沈黙。そして電話口から言葉が漏れ る。

「誤解してる...」

――誤解!?どういうことだ?

「飛び降ります、ではなく媚売ります、と言ったので す」

なんの電話だこれは。
「...どうぞ、好きなだけ媚売ってください!」

「こちら精神スタミナセンター、悩みの電 話です。どうかなされましたか?」

「オーバードースしました...」

またもや深刻な声だ。
「向精神薬ですか?」

「違います」

「では何を?」

「ピンクの小粒、コーラックです」

便秘薬!?しかし、状況確認を急ぐべきだ。「今、便所にいますか?」

「はい...」

やはり。どうやら オーバードースの結果、下痢に苦しんでいるらしい

「収まるまで座っていてください」

これで解決だろうか?いや、それよりもこのセンタ 一、本当に役に立ってるのだろうか...。

仕事はつらいが、少なくとも誰かの気分を 変えられているなら、それでいいか……。

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