【新潟】第2回水ラボコンソーシアムに参加させていただきました!
水ラボとは?
(株)小野組の小野貴史社長と新潟大学 災害・復興科学研究所 准教授の安田浩保准教授をはじめとして、新潟県内における産学官連携により河川の改良技術の研究や地域課題解決などに取り組む団体です。
今回は2022年10月12日に開催された第2回水ラボコンソーシアム(現場見学・座談会)に学生小委員会の西川(早稲田大学M1)、福田(北海道大学B4)、水谷(東京都市大学B4)が参加してきましたので、その模様をレポートしていきます。
現場見学会
信濃川やすらぎ提の整備
やすらぎ提とは、新潟を代表する土木遺産のひとつである萬代橋から信濃川水門に至るまでの約4.5kmにかけて現在整備中の堤防です。
この事業の目的は以下の3点です。
1. 河川の流下能力の向上と掘削土砂の活用
2. 洪水時の越流を防ぐ
3. 市民の憩いの場としての活用
今回の現場見学会では、川底を掘削(浚渫)を終えて、矢板の護岸工設置中の現場を視察しました。
現場には長年新潟で土木工事に携わられていた方から、工事そのものの詳細だけでなく、過去の歴史や地理的背景といまなぜこの工事が必要かという2つの視点からお話を伺うことができました。
本現場は、液状化の話題になると土木技術者や土木学生ならかならず見たことのある新潟地震後のアパート現場からもほど近いように、液状化問題や地盤の悪さへの対抗と、日本海までが近いので河川中に塩分が混ざることによる塩害対策など考えることは様々あるようでした。
これらの問題をクリアすべくどのようなアプローチで工事が進められているか、思考の仕方は大変勉強になりました。
福島潟の湖岸提整備
新潟県北区と新発田市の間に位置する潟である福島潟は、周辺の野鳥、昆虫などの生き物の住処になっているほか、豪雨時の遊水地としての役割を果たしています。
しかし平成10年の豪雨災害で自然遊水によって一帯の浸水被害が発生してしまいました。そこで自然遊水を防止するため、現在潟の周りに湖岸提を築堤している工事が進められております。今回は浚渫後、堤防築堤中の様子を見学しました。
本現場も築堤に使う土の多くが潟の浚渫時に出た排出土であるため、このままでは築堤に用いることができません。現場説明では土質改良のための室内配合試験結果に基づき、安全性と経済性を考慮して、どの改良材をどの程度用いたかまでのプロセスの部分を子細に教えていただき、現場で求められる知識とはどういうことかを学べました。
また写真にも見えるバックホウはマシンコントロールといって、設計データと現地盤高から適切な施工を半自動的に行うシステムで動いており、経験の浅い技術者でも高い品質と短時間で作業ができるようになっていました。さらにはCIMモデルを活用して、視覚的に現場の施工プロセスを示しながら実施することで、ヒューマンエラー防止につなげるなど、ICT施工がフルに活用されていました。
座談会「土木の未来を考える」
午後からは新潟駅近くにある、新潟大学サテライトキャンパスであるときめいとにて、
産(地場ゼネコン、建設コンサル、建機メーカー、測量・計測数社)、
官(国土交通省、新潟県)、
学(新潟大学、学生小委員会)
の立場の技術者が境界を超えて、若手約40名が4グループに分かれて、「土木の未来を考える」をテーマにグループディスカッションを実施しました。
議論の内容もさることながら、一番価値あると感じたのは、「普段だと言えないんですけど」を皮切りとする声がちらほら聞こえてきたことです。当然普段であれば受注者と下請けという立場があり、仕事を与える側ともらう側、別の言い方であればお願いする側とお願いされる側となるため、お互いがお互いに業務上の最低限の会話しかできていないのでしょう。あるいは商売敵であることや守秘義務も守る必要があることがあるからを言い訳に情報交換ができていないのでしょう。しかし守秘義務に抵触しない範囲でも、いくらでも意見交換は可能ではないでしょうか。
土木にとって大切なのに欠けているものの一つは、間違いなくコミュニケーションです。土木業界をよくしたい、少しでも現場の技術者がのびのびと作業ができるようにしたい、土木業界にクリエイティビティを!というのであれば、こういう大がかりな組織を作ってでもコミュニケーションの空間を作るべきです。
「意見を交換し続けること、隣の様子を観察し活用すること」
当たり前なようで、まず土木の未来にあるべき姿だと感じました。
最後に、今回の主催者の一人である、小野貴史氏より
というお言葉を頂戴いたしました。
3つの愛があるという前振りには最初結婚式のスピーチか!とも思いました(^^♪
が、これら3要素を持ち合わせているからこそ、難しい現場の問題にたちあったとしても、最後に何とか成し遂げようという気概が湧いてくるものでしょう。
いま土木技術者は減り続けており、土木学科を卒業していない人も対象に積極的な採用活動をしていかなければという傾向にあります。知識の有無は後で勉強していただければよく、バックグラウンドが違うことによる効果もあるため、それ自体は問題ではありません。しかしそもそもの勉強をしよう、いいモノづくりをしようという気持ちも、これらの愛する気持ちがあるかどうかにかかってくるでしょう。
最初の形はどうであれ、土木技術者としての使命を持ちあわせた者が土木の現場で働くことができ、土木技術者になった者は次に来る土木技術者に使命を伝わるようにする、伝わらないなら伝わるように努力する、このサイクルがはじまっていくことが、いま、そして未来の土木を確実に守り発展していくうえで非常に重要なことに思います。
改めて、1品もので長く使われる土木構造物、後世に少しでもいいものを残すためにも大切にしたい金言でした。
まとめ
今回は現場見学会で土木技術を学び、座談会では土木の現状や技術者としての使命を見つめなおすことができ、多くを考えさせられた非常に意義深いイベントでした。
学生小委員会では水ラボコンソーシアムさんとの交流を今後も続けていくほか、全国の土木技術者との交流や現場視察を通じて、学生の技術力や資質の向上を目指してまいります。
次回の更新もお楽しみに!