黒いエクストレイル
7年乗った車を手放すときが来てしまいました。
深い愛着のある車です。
壊れても壊れても、直して直して乗り続けるつもりでしたが、"潮時"という力は思いのほか大きい。
生活にもっと余裕があればずっと乗ってやれたのかなとか思ってはみるものの、現実は淡白です。
それはそれは色々な所へ連れて行ってくれた車です。
中古で買ってから7年で10万km弱。178,000kmになります。
思い出まで消えるわけではないのになぜこんなに喪失感があるのでしょうか。
僕は物にも人にも、執着心が強い節があります。
であるが故に、苦しまないための"サバサバ"という振る舞いを年齢と共に強化してきました。
しかし、今回は久々に心うるうるです。
黒いエクストレイル。
いつも駐車場で待っていてくれるのが、最高の相棒という感じの佇まいでした。
初めての御殿場でのワンマンの帰り道、鹿にぶつかって、鹿は無事だったけど車の右目が潰れてしまったり、ライブの前に後部をフルフラットにして練習したり、ハンディレコーダーでレコーディングしたことも何度もあったし、炎天下の関西ツアーや、送迎で色んな人を乗せてくれたり、はじまりの森の機材を敷き詰められたり、越境森林でこれでもかと枝を積み込まれた後ろ姿が似合ってたり、このエクストレイルじゃないとできないことばかりでした。
雪を被った姿もかっこよかったな。
思い出すと泣けてくるんだよなぁ。
車は"物"なのだけど、意識あるものとして認識してしまうんです。
僕はそこには非科学的な解釈があってもいいと思っているし、物に宿る意識だってあるかもしれないと。
楽器や古本だって同じように思います。
今日が最終日です。
バタバタと決まってしまったのが結果的によかったのかもしれない、と思うほど、今は悲しいです。
僕はもう乗れないけど、新しい運転手と一緒にどこか広い大陸とかで、また安全に、そして爽快に走ってくれることを願っています。
人は死んだら何も持っていけないと言われています。
少なくとも物質は持っていけないでしょう。
だから生きているうちくらいは、愛着を抱ける物にたくさん囲まれていたいと思います。
何かを得れば、失う辛さはあるけど、
それほどまで愛せる何かに出逢えたということが
何よりも幸せなことなんだと、最後にエクストレイルを掃除しながら改めて思いました。
黒いエクストレイル、今までありがとう。