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チームワークの嘘

 チーム組織は、「人々が創造性を発揮し、生産的に働ける安全な場所」と見なされがちである。しかし調査は、チーム組織ではメンバーたちのポテンシャルを十分発揮できないことを、一貫して示している。

 チームに絶対的な方向性を与えるには、慎重なメンバーの選定が要求される。なお、メンバーの顔触れがずっと同じ小チームのほうが、チームワークに優れている。

 皮肉なことに、優秀な人事部を擁する企業では、チームワークがうまくいかない場合がある。その原因は、人事部がチームの行動より、社員一人ひとりの行動を改善することに焦点を当てがちなことにある。

 チームを率いるには、かなりの勇気が要求される。なぜなら、権力の問題が必ず関係するからだ。また権力は、チーム内に不安を巻き起こすものでもある。したがってチームの任務が危険である場合、優れたチーム・リーダーでも激しい抵抗に遭うことが多い。

ハーバードビジネスレビュー 2009年9月 「チームワークの嘘」 参照

なぜ私たちはチームワークにこだわるのか?

チームワーク神話の誤解
「チームワークは成功の鍵である」という考え方は広く浸透していますが、それは本当でしょうか? 社会心理学者 J. リチャード・ハックマンは、チームが必ずしも個人よりも優れているわけではないと指摘しています。 むしろ、誤ったチーム形成は生産性を下げ、混乱を招くことさえあります。

チームの力は本当に個人を超えられるのか?

HBRの研究から学ぶチームの現実
ハックマンの著書『ハーバードで学ぶ「デキるチーム」5つの条件』では、家を建てる際の例え話が示されています。 「一人で建てるよりも、複数人のほうが早くできるか?」という問いに対し、実際には必ずしもそうとは限らないという結果が示されています。

チームは適切に機能しなければ、個人の力を相殺してしまう可能性があるのです。

成功するチームには「リアル・チーム」と「明確な方向性」が不可欠

本物のチームとは何か?
ハックマンは「リアル・チーム」であることの重要性を説いています。 リアル・チームとは、明確な目標を持ち、役割分担が明確であるチームを指します。 メンバー間の相互依存が機能しなければ、チームワークは単なる幻想に終わります。

目標の明確化が成功の鍵
また、チームには明確な方向性が必要です。 方向性が曖昧であると、チームは無秩序に動き、メンバーはバラバラな行動を取ることになります。

長期的なメンバー固定はチームワークを強化する

新メンバーの追加は本当に必要か?
一見すると、新しいメンバーを入れることでチームが活性化するように思えますが、ハックマンは逆の立場を取ります。 長期間同じメンバーで構成されたチームは、相互理解が進み、効率的に機能しやすいのです。

チーム変更がもたらす影響
では、なぜ企業はチームのメンバーを頻繁に入れ替えるのでしょうか? その理由の一つに、新鮮さを求める傾向があります。 しかし、頻繁な入れ替えは信頼関係の構築を妨げ、かえってチームのパフォーマンスを低下させる可能性が高いのです。

異端者がチームの成果を引き上げる

変化をもたらすメンバーの活用
最高のチームワークを発揮するためには、時折「異端者」をチームに加えることが有効です。 異端者とは、既存の価値観にとらわれない思考を持つ人物のことを指します。 彼らがチームに刺激を与えることで、創造性が生まれ、新たな発想が芽生えます。

チーム形成の最適なプロセスとは?

リーダーシップの果たす役割
チームのパフォーマンスを向上させるためには、最初の段階で適切なメンバーを選び、方向性を明確にすることが重要です。 また、リーダーはチームを導く責任を持ち、継続的なサポートを提供する必要があります。

成功するチームの5つの条件
ハックマンは、効果的なチームには以下の5つの条件が必要だと述べています。

チームづくりの5条件

 J. リチャード・ハックマンは、著書『ハーバードで学ぶ「デキるチーム」5つの条件』のなかで、企業をはじめ、さまざまな組織のリーダーたちが、実効性のあるチームをつくり、これを維持するうえで満たさなければならない5つの基本条件を提示している。

1|チームは「リアル」でなければならない
 だれがチーム・メンバーで、だれがチーム・メンバーでないか、周知徹底する必要がある。これをはっきりさせるのはリーダーの仕事である。

2|チームには「絶対的な方向性」が必要である
 メンバーたちが、チームとして取り組むべきことを知り、それに同意している必要がある。リーダーが明確な方向性を示さないと、メンバーたちはそれぞれ、異なる課題を追求するという現実的なリスクがある。

3|チームには、チームワークを発揮させる仕組みが必要である
 チーム内の仕事がちゃんと定義されていなかったり、メンバーの顔触れや人数が不適切であったり、あるいはチームの規範があいまいで、強制力を持たなかったりすると、たいていトラブルに陥る。

4|チームには、支えとなる組織が必要である
 チームワークを促すには、報酬制度、人事制度、情報システムなど、組織環境を整備しなければならない。

5|チームには、専門のコーチングが必要である
 ほとんどのエグゼクティブ・コーチたちは、個人の能力に焦点を当てるが、それではチームワークは大して改善されない。チームの作業プロセス、特にプロジェクトの開始時、中間時、そして終了時にグループとして受ける、チーム・コーチングが必要になる。

ハーバードビジネスレビュー 2009年9月 「チームワークの嘘」 参照

これらを整えることで、真に機能するチームが生まれるのです。

バーチャル・チームの課題と管理の重要性

バーチャル環境でのチームワークの現実
リモートワークの普及により、バーチャル・チームの重要性が増しています。 しかし、バーチャル・チームは対面チームと同様の課題を抱えており、適切な管理が必要です。

無組織の混乱を避けるためには
ジョー・フリーマンが指摘する「無組織の暴虐」とは、構造がないことで発生する混乱を指します。 バーチャル・チームでは、明確なリーダーシップと役割分担が特に重要になります。

まとめ:チームワークの幻想を捨て、実践的なチーム運営を

一般的に信じられている「チームワーク神話」に惑わされず、適切なチームの運営を考えることが重要です。 チームは必ずしも万能ではなく、効果的に機能させるには多くの条件を満たさなければなりません。 リアル・チームの形成、異端者の活用、適切なリーダーシップ──これらを意識することで、真のチームワークを実現できるのです。

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廣石雄大/京都在住の経営者
興味を持っていただいてとても嬉しいです!現代社会やビジネスの現場で日々奮闘されている皆さまの思考が整理され心が少しでも前向きになれるような発信をしていきたいと思っています。応援よろしくお願いします!