01 雪原 【ショートストーリー】
わたしは今、雪原の央に一人でいる。辺り一面、真っ白な雪。少しの起伏。遠くの山並み以外に草木の緑すら見えない。
君は、この状態を見て喜ぶだろうか、はたまた悲しむだろうか。特別どちらの感情を抱いてほしいなどは願っていないが、ここで大事なのは、ここに至るまでのどの場面を大きく切り取るかで捉え方は変わるだろう。
「ねぇ。どうして、私としてくれたの」
行為の後、一緒に寝た女から聞かれることが何度かあった。人によってその時の顔は違ったが、みんなに「幸せだからだよ」と答えていた。
平成生まれの父と昭和生まれの母の間に、わたしは令和の子として生まれた。両親はとても仲良しで、父は男で、母は女だった。父は、ガラスの小物や綺麗な色味の何に使うのか分からない雑貨など、いわゆるカワイイものが好きな人だった。それらがカワイイもので、好きになることも理解はできたから、友達の女の子とも同じような話ができた。
母は、モノへの執着はない人だったが、茶目っ気があり可愛い人だなぁとよく思った。また、小説をよく読み、本を読むときの眼差しがとくに好きで真似て本を読むようになった。
学生時代、男女は平等だと教わった。平等というよりは、女性サイドに傾いてるのではと思うほどだった。それが学校の言う平等ならば仕方ないし、気にせずに過ごしていた。パンツ姿の女の子や、化粧をした男の子が特にいじめられるでもなく生活していた。
学校の先生達は常々口を揃えて言った、「お互いを認め合いましょう」と。
大学生になり、わたしは、よく女と寝た。あんまりその行為自体は好きとは思わないが、相手が求めている空気が伝わるから応えて、した。喜んでくれるから、した。
行為の後は、煙草を咥えながら脱け殻になった服たちを眺めるのが好きだった。
「どうして、私としたの」
聞かれても、いつものように決まり文句で返せば問題なかった。ただ、一人にだけはいつも通りができなかった。
どこか昭和の人っぽくて、男の人っぽく感じられるこの時間が落ち着くから、しているのかもしれなかった。
わたしは、僕なのか、私なのか。
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