くま

書き物たちの記録として。 拙いですが、お目に触れました際にはご一読いただけると幸いです。そして、読まれた方の心に何か動くものが在ることを願います。

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06 聞きたくない声も音楽だ 【詩】

予定調和な日常に ゆられ さまよい 流れつき、 耳タコな言葉なんかも 私を今では透り抜ける。 ピアスを開けたら私にも まだ痛みはあるみたい。 片側だけ、 自分で穴を埋めてみた。 今日は何聴こうか って、 イヤホン挿して触れる耳の ほんの少しの昂ぶりを 横切る風が教えてくれる—— 前のめりに進む足たちも いつもと違う 新しい今日を感じて 昨日と違う音を探している 聞きたくない声も音楽だ。

    • 08 ヘイズ ―haze― 【詩】

      誰か私を呼ぶ声がする 私の意識の遥か遠くから それは確かに私に向けられていた。 何か聞き覚えがあるような、 それでいて 何かは分からない。 私の前に薄い靄がかかっていて 特殊な要素は無い様に思えたが、 耳を澄ませば澄ますほどに 誰かの輪郭は明らかになっていった。 ついに 声の主が誰であるか理解した。 それが私の知らない人であることを しかし その誰かは私にとって大切な人であるかもしれなかった。 そうして私は薄い靄になっていった

      • ## 改めましてのはじめまして。

        彼方くまと申します。 (勿論。ぺんねーむ。) noteを初めて1週間。 ひとまず、自己紹介をかねて 毎日連投をしてみました。 と言っても、どれも投稿するために 新たに生み出したというわけではなく、 これまで作っていたもののデータとして フォルダ内で眠っていた子たちだったり、 どこかしらの投稿欄に投げかけてはみたものの、箸にも棒にも掛からなかった子たち。 そんな子たちでも、 私にとっては生み出すために少なからず 費やした時間があって、 その時の、 気持ちや状況や

        • 07 あさとよるのあいだ 【エッセイ】

          「昔から全く変わらないね」  小学生来の友人が、居酒屋の向かいの席に腰掛けるなり早々、僕に向かって言った。容姿の話か内面の話か、はたまたどちらでもない別の話なのか見当はつかなかった。ただ、全く変わらないなんてことは無い筈で、小さい時からずっと髪や爪は伸びて生え変わっているし、昔はなかった髭だって生えるようにもなった。そんな風に思ったところで、確かにこうもひねくれて考えるところは変わっていないのかもしれないと自覚する。  「そういう君も全然変わらないよ」と僕は返した。帰省の

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        06 聞きたくない声も音楽だ 【詩】

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        • 【詩】
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        • 【ショートストーリー】
          1本

        記事

          05 死生活 ―22歳の試作― 【エッセイ】

           先に断っておきたいが、此れは悲観的な話ではなく、純粋に、死と生に魅入られた話。私は、死によって生を感じ、死を意識することによって生が彩られている。  私は、理系の父と文系の母の間に次男として生まれた。その甲斐あってかなくてか兄の好きなものに触れ、自らの意識が向くものに手を伸ばし、ジャンルの境なく様々なものに興味を持つようになった。趣味のほんの一例だが野球にテニス、ボルダリング、バイクでのツーリングや旅行、美術鑑賞に読書ーー桜木紫乃や村上春樹、森見登美彦、伊藤整などーーとい

          05 死生活 ―22歳の試作― 【エッセイ】

          04 うつつのみ 【詩】

          他人事みたいな今日が現れて 目をつむってみても 枕に埋まっても寝られやしない。 窓の外では 車たちが 右往左往して 猫じゃらしが揺れている。 その傍らで、 一匹の猫が のんびり アクビをしたりなんかして、 僕は猫にもなれやしない。 食欲や 空想仮想ばかりが拡がって、 近くの温もりなんて無いみたいな。 明日が思い通りになるなんて 体力すらない僕にどうしろと。 そうか、それからだ、 体力をつけるんだ。

          04 うつつのみ 【詩】

          03 葛藤 【詩】

          無力で想うことしかできなくて 関われない範囲があって 口に出せない思いがあって 伝わらないかもしれないけれど、 でもそれは事実で、 伝わっていれば変わる世界もあって 伝わらないことによって生まれる世界があって 願うならすべてが好転してほしいのに 報われない思いがあるのも事実で、 不条理や世知辛さが蔓延(はびこ)る この世界で生きていくには やはり細やかな意識が集合してほしくて、 ただ正しさを貫くことは悪さをするより難しく 悪さは正しさよりも大いに目立

          03 葛藤 【詩】

          02 走性 【詩】

          月明かり光る石段転けぬよう 手すり頼りに 上り往く 耳を澄ませば、風凪いで カサカサ木の葉ゆらす音 月よりも強く誘う光目指して 虫たちは バチッと命散らせ逝く 辺りには自然があった 肩で息吐き足を震わせ カラダと空気結ばれる 上りきり街見下ろせば、 生活の光眩しく目を燃やす 真に月より強い光だ。 蛍光灯の下見れば、 此処でも虫が腹見せる 石段を 転んでいいと 手すり使わずくだり降り、 長息ののち 街に背いて 闇路をたどる 月明かりに照らさ

          02 走性 【詩】

          01 雪原 【ショートストーリー】

           わたしは今、雪原の央に一人でいる。辺り一面、真っ白な雪。少しの起伏。遠くの山並み以外に草木の緑すら見えない。  君は、この状態を見て喜ぶだろうか、はたまた悲しむだろうか。特別どちらの感情を抱いてほしいなどは願っていないが、ここで大事なのは、ここに至るまでのどの場面を大きく切り取るかで捉え方は変わるだろう。 「ねぇ。どうして、私としてくれたの」  行為の後、一緒に寝た女から聞かれることが何度かあった。人によってその時の顔は違ったが、みんなに「幸せだからだよ」と答えていた

          01 雪原 【ショートストーリー】