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新規投資|Quollio

DNX Ventures(以下、DNX)は、株式会社Quollio Technologies(以下、Quollio)の総額約2.2億円のプレシリーズAラウンドに出資させていただきました。本ラウンドは、DNXの他に、伊藤忠テクノロジーベンチャーズおよび既存投資家であるインキュベイトファンドとの共同出資です。
Quollioは、エンタープライズ企業向けにデータカタログSaaSを提供するスタートアップです。本稿では、DNXがQuollioに投資した背景とQuollioの魅力や可能性についてご紹介したいと思います。


Quollioが提供するデータカタログが扱うメタデータとは?

「Quollio Data Catalog」は企業のメタデータを管理するSaaSです。”メタデータ”というワードを聞き慣れない方もいらっしゃるかもしれませんが、他のデータに関する参照情報を提供するためにデータのことで、古くから存在して身近にもある概念です。
紀元前3世紀、アレクサンドリア図書館では、個々の巻物の端に小さな”タグ”をぶらさげていました。このタグには、タイトル、主題、著者が記載されて、図書館の利用者は巻物を一冊ずつ広げなくても内容を把握でき、巻物を元の場所に戻すことができました。当時の図書館員は ”タグ” を ”メタデータ” と呼ばなかったと思われますが、これはメタデータの最も古い記録例と言われています。*1
現代においても多くの人が、電子化された図書カードや検索システムのおかげで、調査目的の書籍のみならず、関連のある重要な書籍に出会える、大型書店でジャンルなどのメタデータを頼りに店内を探索出来る、などの”メタデータ"活用のご経験があるのではと思います。

エンタープライズ企業におけるメタデータ管理

調査会社IDCによると、全世界で発生するデータ量は、2025年には175ZBまで成長し、2022年比でおよそ2倍にまで増えると予測されています。*2 クラウドコンピューティング、SaaSの拡がりに伴って、企業の様々な部署で、便利なアプリケーションを容易に導入出来るようになり、様々なシステムのデータを組み合せて、分析する事で多くの有益なインサイトを得られるようになりました。そして、企業のデータ分析者が、社内で目的のデータを探すプロセスは、メタデータが役に立つという意味で図書館での探索にも似ています。
しかしながら、分析者が求める水準のメタデータの内容は、おそらくかつてのアレクサンドリア図書館のタグよりも複雑である一方で、多くのエンタープライズ企業では、各データの意味や定義、文脈にまつわるナレッジが属人化されており、陳腐化されたExcel等に記録されている現実もあり、分析者が目的のデータの特定するために色んな部署にあれこれ聞いて回った結果、何度も手戻りするなど、多くの時間が割かれてしまう等の課題があります。組織や部門の数、利用するシステムやSaaSの種類が増えるほど、こうしたペインも増大するため、スケーラブルかつコラボレーティブな、信頼出来るメタデータ管理ソリューションが求められています。

Quollioが解決出来る事

 「Quollio Data Catalog」を導入する事で、企業のデータウェアハウスからメタデータを自動で集約し、一元的にメタデータ管理する事が出来ます。個々のデータを自動分類、タグ付けをすることで、データの理解が容易になり、分析者がセルフサービスでデータを検索出来ることで分析生産性を向上します。攻めの分析に限らず、使われていない不要なデータを削除したり、社員の権限に基づいて機微データや個人情報をマスキングするなど、メタデータ管理を起点に、守りにもエンタープライズ企業のデータガバナンスを支える重要なソリューションとなります。

①データの発見・理解

  • データの検索と発見

  • 人気データの抽出とレコメンド

  • 管理担当や活用ユーザー状況の表示

②データガバナンス

  • ビジネス用語集の整備

  • データ利用用途の監視分析とレポート

  • データ民主化度合いの分析とレポート

③メタデータ管理

  • メタデータの変更履歴

  • コラボレーション修正機能

  • 自動タグ分類

  • メタデータ自動コレクター

今回投資に至った経緯

1) データオペレーションにおけるDNXの投資仮説

モダンなデータオペレーションは、多くの優れた海外ベンダーがひしめくドメインです。クラウドデータウェアハウスを中心に、データ統合、データ変換、BIなどの機能毎に海外ベンダーの存在感が大きく、国内ベンダーの参入は決して簡単ではないように見えます。データカタログも複数の海外ベンダーが存在しますが、一方で日本のエンタープライズ企業へのフィットは十分と捉えておらず、また”メタデータ”の特性上、地域や国の独自性やビジネス習慣にフィットしたユニークなソリューションがマーケットへのフィットを実現し、今後も提供価値を高めていける可能性があると考えました。また、データカタログは、米国と比較してデータ人材不足と考えられる日本のデータ分析、データ利活用のボトルネックを解消するためのクリティカルなピースと見立てており、「Quollio Data Catalog」が顧客にもたらす大きなインパクトに期待を膨らませました。

2) 初期トラクションのクオリティ

2022年4月のサービス提供開始以降、メタデータ管理やデータガバナンス強化への感度の高いエンタープライズ企業の有償トライアル契約を次々に獲得し、検証が進んでおります。同時に、顧客の現場担当者の想い溢れるフィードバックと機能強化の高速なサイクルでプロダクトが磨き込まれ、グローバルのクラウドデータウェアハウスベンダーからも高い評価を得られています。顧客のペインが深く、喫緊である様子、Quollioに対する顧客の期待の大きさ、そしてQuollioチームの気力に漲るエンゲージメントの姿は、今後のマーケットフィットへの期待が高まると共に、DNXの投資の意思決定を後押しするものでした。

3) DNXが起業家に求めるもの

CEOの松元さんと何度もお会いして議論を深める度に、若くして落ち着きと傾聴力のある企業家という外面の内に秘めた、エンタープライズのデータの課題に向き合う並々ならぬ覚悟ある意志と、冷静にも燃え上がる情熱の勢いが増してくるように思えました。監査法人時代にデータ活用に挑戦されて培ってきた事業解像度や現場のペインへの共感はもちろん、学生時代の留学や最初の起業、それ以前にも努力をされてきた松元さんの全人格が、優秀で多様性に富むデータプロフェッショナルのメンバーや、初期顧客の現場とエグゼクティブを惹きつけている様子から、「DNXが起業家に求めるもの」との強い合致を確信いたしました。

松元CEOからのコメント

倉林さんとは今年初めてご縁をいただき、中野さんとともにQuollioの可能性を強く信じていただきました。
DNXチームは多様な事業バックグラウンドを持ったメンバーが多く、米流のプロフェッショナリズムと日本流な仁義の雰囲気を併せ持っており、Quollioのスタイルや理想とする投資家像に非常にマッチすると感じています。投資検討プロセスでは、倉林さん中野さんをはじめ、DNX社の起業家に真摯に向き合う姿勢にも触れ、この先長い旅路をご一緒させていただきたいと強く思うに至りました。この度、DNX社を株主として迎えられることが叶い非常に嬉しく、また光栄に思っております。
Quollioは、データカタログ技術を中心に先進的なソリューションを提供しており、DXのコアになるデータガバナンスやデータ利活用といった大企業の経営課題にアプローチしています。今回の出資をきっかけにDNX社のSaaSビジネスへの知見や大企業ネットワーク、メンバー皆様の多方面でのご支援も賜り、Quollioの事業は今後更に加速すると確信しています。日本発データスタートアップとしてのQuollioのチャレンジによって、産業に大きな変革をもたらせるよう引き続き精進して参ります。
ーー株式会社 Quollio Technologies 代表取締役CEO 松元 亮太

エンタープライズ企業のデータオペレーションをさらなる高みへ引き上げていくQuollioを、DNX Venturesは力強く支援していきたいと思います。

*1 DATAVERSITY. “A Brief History of Metadata”. https://www.dataversity.net/a-brief-history-of-metadata/, (2nd Feb 2021)
*2 IDC “DATA AGE 2025 The Digitization of the World From Edge to Core”. https://raw.githubusercontent.com/SupaeroDataScience/OBD/master/readings/idc_data.pdf, (Nov 2018 (Data refreshed May 2020)

(文:中野 智裕)


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