新規投資|Tensor Energy:再エネのクラウドAIプラットフォーム
DNX Ventures(以下、DNX)は、Tensor Energy株式会社(以下、Tensor Energy)の総額4.5億円のプレシリーズAラウンドに、デライト・ベンチャーズ、ジェネシア・ベンチャーズ、FFGベンチャービジネスパートナーズ、Plug and Play Japanとともに出資させていただきました。
電力の再生エネルギー化の現在地
現在、世界はカーボンニュートラルを目指しており、その流れの中で日本政府も2030年までに電力供給の構成を現在の約20%から2倍の約40%にまで高めることを目標としています。これは、日本が掲げるネットゼロ達成に向けた重要な一歩と捉えております。
企業に対する開示要件も厳しくなっており、特にスコープ3までの情報開示が求められるケースが増えています。これは、工場や物流センターなど電力を大量に消費する企業にとって、再生可能エネルギーへの需要を高める要因となっています。この背景には、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)などの基準がプライム市場上場企業の業界スタンダードとして定着しつつあることがあります。
さらに、ウクライナ侵攻など地政学的要因などの影響で、仕入れ電力の価格が高騰し、企業はできるだけ安定した電気代と供給源の確保を望んでいます。このようなニーズの増加が、再生可能エネルギー市場の拡大を促進しています。
再生エネルギーへの移行における発電事業者が抱える課題
再生可能エネルギーへの移行は加速していますが、発電事業者は複数の課題に直面しています。政策の転換、特に固定価格買取制度(FIT)からフィードインプレミアム制度(FIP)への移行によって、業態変化への対応の必要性を促しています。また、進化している蓄電技術を活用するためにも、運用最適化のための技術開発とその応用が急務です。さらに、発電事業を運営していく上で複数のステークホルダーが関わっている中、オペレーションやデータ管理の非効率性が問題となっており、業務の効率化と発電予測と需要予測の精度向上のための統合的なデジタルソリューションの開発が求められています。
Tensor Energyによって解決されると期待すること
Tensor Energyは「持続可能なエネルギーが必要なときに必要なところへ届けられる世界を」をビジョンに掲げ、AIとデジタル技術を駆使したクラウドサービス「Tensor Cloud」を提供しています。再エネ事業のビジネスモデルそのものを変革し、持続可能な成長事業の構築に不可欠なソリューションとなるよう目指しています。
Tensor Energy は蓄電池運用を最適化するソリューション及び、発電所の財務、オペレーション管理においての業務支援ソリューションを提供予定です。再生可能エネルギーの発電所が増えていく中、課題である専門知識を持つ人的リソースが足りていない現状においては大きなイネーブラーになることを期待しています。
DNXが投資した理由
DNXは、カーボンニュートラル実現に不可欠な再生可能エネルギーへのシフトを支援するTensor Energyのポテンシャルに魅力を感じ、投資を決定しました。Tensor Energyが提供する再生可能エネルギー事業者向け課題解決策と、業界に精通した創業者ナナさんとVincentさんの豊富な知見は、強力な組織を形成し、持続可能なエネルギーの未来を築く基盤となっていかれることを期待しています。
また、ステークホルダーと共にプロダクトを開発する姿勢と、共感を通じ彼らを「ファン」にさせていく能力も彼らの魅力だと感じております。Tensor Energyが業界の課題に対して革新的な解決策を提供し続けることに期待しています。
Tensor Energy株式会社 代表取締役CEO/Founder 堀井ナナ氏のコメント
最後に
気候変動対策の重要な一環として再生可能エネルギーへの移行を加速する貢献が期待される中、「全ての人と将来世代に、持続可能なエネルギーが必要なときに必要なところへ届けられる世界を目指す」というTensor Energyのビジョンに共感し出資させていただきました。
ナナさんとVincentさんをはじめとする深い業界ナレッジおよび情熱あるチームとの共同歩調に大きな期待を寄せており、日本が再生可能エネルギー導入を加速する上で直面する独自の課題と機会において、Tensor Energyが果たす役割に期待し、全力でサポートして参りたいと思います。
(文・髙岡美緒)