神さまはいるのかどうか。
たまたまだけど、DVDでグザヴィエ・ドランが出ている『神のゆらぎ』を見直していて、最後のセリフが印象深く耳に残っていた翌日に舞台『エレクトラ』で、その神さまの名前を再び耳にするとは夢にも思わなかった。
全能の神ゼウス。
世界は今やさらに混沌として、自国や自分の利益中心主義が強まってきている。
ギリシア悲劇は21世紀の現在にそのありようは、意味はあるのだろうかと途中まで眠気と闘いながら観ていた。白石加代子と高畑充希の声はとても心地よい。心地よい声は眠気を誘う。演劇が好きな人ならご存知だろうが、芝居を観ながらうとうとするのはとても気持ちがいいのだ。
神は我欲に翻弄される人間をさらに翻弄し、赦し赦されることを望むようで、ことさら二幕ではその傾向が強くなる。そのあたりからぐっと現在の世界との関連性が感じられてきた。
ギリシア悲劇の時代も今も人間はいくらハイテクになろうと本質的なところでは、あまり変わっていないようだ。
この難劇を若い二人の俳優高畑充希と村上虹郎が好演していて頼もしい。
グザヴィエ・ドランといい、若い才能が表現の世界には綺羅星のごとく現れる。
それは世界にとってきっといいことだろうと思う。
舞台『エレクトラ』は三軒茶屋パブリックシアターで大勢のひとが観ている。