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香港人に日本食の本気を教えてあげる
「会社の飲み会に出ない」は、私のポリシーです。
コロナ前から、歓迎会・送別会・クリスマスパーティー・新年会といった、オフィシャルなイベントには出席しないことにしています。
少人数で「軽く一杯」みたいなお誘いもすべてお断りする原理主義者です。
しかし、何事にも例外というやつはあるのでして。
香港でローカル社員を部下に持つ立場として、部下の働きをねぎらう機会と部下のお誕生日、つまり年に 2~3回程度、食事に招くことはあります。
そういうときは、サシで行くか、多くても 4人まで(自分含め)と決めています。
5人以上になると、会話が 2つのグループに分かれることがありませんか? あれが苦手なのです。(さびしがりなんだろうか)
コロナによって会食の人数が 2人まで(のち、4人まで)に制限されたとき、私向きのルールだなと思いました。
日本食が充実した香港で、日本人である私が香港人を食事に招くわけですから、お店選びは日本食レストラン一択になります。
彼らは、ホンモノの日本食を知りません。例えば、回転寿司には行ったことがあっても、カウンター越しに職人が握るお寿司屋さんには行ったことがないのです。
最高の日本メシを食わしたるわい!
と、この私が燃えないわけないじゃないですか。
せっかくなので、香港一の日本食をぜひ堪能してもらいたい。
まぁ、香港一かどうかは私の主観になってしまいますが、ホンモノで一流の日本レストランでなければなりません。
✅ マスト条件
オーナーが日本人。シェフが日本人。店員が英語を話す。
✅ クライテリア
東京一には当然かなわないとしても、東京にあってもお客が入るレベル。
✅ こういうお店は NG
いろいろ手を出しすぎ(例: お寿司屋さんなのに、鉄板焼きもある)
ローカルの嗜好を採り入れる(例: 豚骨ラーメンに、激辛メニューがある)
海外の日本食あるあるメニュー(例: わかめサラダ、銀だら西京焼き、等)
要するに、現地人の舌に媚びず、まちがった日本食テンプレートに走らず、余計なことをしない、堅気で愚直な日本レストランが最強なんです。
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今までに、
香港一のお寿司屋
香港一の天ぷら屋
香港一の焼き肉屋
香港一の豚カツ屋
香港一の和居酒屋
などで、香港人たちの反応を楽しんできました。
ホンモノの寿司職人(日本人)が握った大トロとか、見た目からしてすでにヤバいわけですが、それを口中に運んでゆっくり味わっている香港人に対し、私はマイクロフォンを向けるジェスチャーで、
「コメント、プリーズ」
「Tuna が、溶けました。そして消えました。それに、この Rice は、初めて口にする味です。甘いような、不思議な旨味があります」
食レポかっ!
正直に白状します。
部下のためとか言いつつ、ホンモノの日本食を香港人に食べさせてコメントを求めるこの遊びを、一番楽しんでいるのは私自身です。
自己満上等!
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昨年の暮れ、部下を 2名ほど連れて香港一の焼き鳥屋に行ってきました。
この焼き鳥屋さんは、東京の白金(というよりほとんど広尾)にある名店が香港に出したお店なので、文句なしで “香港一” を名乗っていいと思います。
焼き鳥はオーソドックスなやつが好きなので、このあたりから始めます。
間違いないやつですね。大阪では「ネック」と呼んでいます。
キャンディもケルヴィンも、焼き鳥🔰です。最初はやや不安そうでしたが、せせりを見てホッとした様子。前回、海鮮系の居酒屋でかなりマニアックな海の珍味に挑戦させたので、内心警戒していたのでしょうか。
では、ふた品めを。
これも大丈夫そうですね。大阪では「スキン」と呼んでいます。(嘘です)
次も私の好きなやつを。
こいつには卵黄(生)がついてきますが、香港人は問題ないみたいです。
(ちなみに、ヨーロッパ人は卵を生で食べると死ぬと信じています)
徐々に難易度を上げていきます。
聞き慣れない名前ですが、メスのぼんじりのことだそうです。
キャンディがひと切れ食べて、考え込んでいます。
「これはどこのお肉ですか?」と訊いたので、
「鶏のお尻です」と答えました。
キャンディとケルヴィンが、一瞬顔をしかめました。
私「おいしくないですか?」
キャンディ「脂がすごくて・・・とても・・・おいしい、です」
メニューを見てみたい、とケルヴィンが言うので、店員さんに持ってきてもらいます。
キャンディとケルヴィンが、興味津々な顔でメニューを見始めました。
キャンディ「What is this・・・Heart?」
私「Yes, 鶏の心臓 (Heart) です」
はつのことです。大阪では「ハート」と呼んでいます。(これは本当です)
私「おいしいですよ。食べてみますか?」
2人とも、首をぶんぶん横に振りました。
では、私の分だけ注文してみようか。
2人とも、一瞬だけ見て、「あちゃー」という顔をしています。
へぇ~意外だなぁ。
トロの握り寿司の旨さがわかる舌を持ち、和牛の刺身も、白子やコノワタもクリアした君たちでも、鶏の心臓はダメなんだね。
中国人、もとい香港人は何でも食べる世界チャンピオンだと思ってた。
こんな格言があったっけ。
四つ足のものはテーブルと椅子以外、二つ足のものは人間以外、飛ぶものは飛行機以外、水中のものは潜水艦以外、何でも食べる中国人
んなわけないわな。
彼らにも苦手なものがあるのです。とくに、レバーなども含め内臓系がダメな人は多いようですね。
(ちなみに、香港人を「中国人」に一括りするような発言は NG です)
むしろ日本人こそが、「何でも食べる」世界王者なのかもしれません。
宗教上のタブーがなく、生の魚介や肉を美食し、本来捨てる部位(放るもん=ホルモン)もおいしくいただき、魚の頭を煮付けにしたり、獣の骨をダシに使ったりして、「捨てるところがない」なんて言っている日本人。
私は、日本の食文化に誇りを感じます。
さて、今年は香港人たちに何を食べてもらおうか。
日本食アンバサダーとして、これからも日本食ハラスメントに邁進します。