5W1H で “はたらく” をデザインする
5W1H は、ビジネスコミュニケーションの基本ですね。
When(いつ)
Where(どこで)
Who(誰が)
What(何を)
Why(なぜ)
How(どのように)
プレゼンやビジネス文書を作成する際に便利なフレームワークです。
5W1H はビジネス以外にも使えます。
例えば、自分らしい “はたらき方” をデザイン(設計)するのに役立ちます。自分がはたらく上で重視する要素、自分のはたらき方を決める方法を可視化してくれます。
本稿では、5W1H を使って、多様な “はたらく” の考え方を検討しながら、私の ”はたらく” を紹介したいと思います。
5W1H で旅をデザインしてみよう
“はたらく” の5W1H の話に入る前に、準備体操として、旅行の計画を立てる際の 5W1H を考えてみましょう。
Why : 旅行の目的
What : 何をするか
Where : どこへ行くか
Who : 誰と行くか
When : いつ行くか
How : どうやって行くか
これらのうちどれを一番に重視するか、またはどれを最初に決めるかです。
「なぜ旅をするのか?」から考える人はちょっと面倒くさそうなので触れないでおきます。
What から考えるのが一般的でしょうか。
例えば、温泉、ダイビング、寺巡りなどです。
What が決まると Where が絞られてきます。
What「温泉に入りたい」 ⇒ Where「箱根」
What「ダイビングしたい」 ⇒ Where「沖縄」
What「寺巡りしたい」 ⇒ Where「京都」
Where から決める人もいるようです。
例えば、「アイスランドに行きたい」
そこで何をするかは二の次で、とにかくアイスランドに行きたい人です。
What から決める派と、Where から決める派。
でも私は、旅行の 5W1H のうちダントツで重要なのは Who(誰と行くか)だと思います。
恋人と行くか。
友達と行くか。
家族と行くか。
一人で行くか。
温泉に行こうと決めて箱根で素敵な旅館を見つけたとしても、同行する相手がイマイチだったら、その旅行はあまり楽しくないでしょう。
逆に、好きな人と一緒なら、What や Where に関係なく、最高の旅行になると思いませんか?
私の旅行の 5W1H は以下の順序で決まります。
When から決めるのは「この日しか休みがとれない」から始まる悲しいパターンでしょうか。
How から決める人っているんだろうか。
”乗り鉄” の方は、移動が How ではなく What や Why に昇格してそうです。
How を単なる移動手段ではなく、どうやって旅行をゲットするかと捉えると、「パネルクイズアタック25 で優勝して行く」というツワモノもいるかもしれません。
Where 起点で “はたらく” をデザインする人
Where = どこではたらくか
例えば、「A社ではたらきたい」
これは、就職ではなく ”就社” と言われる考え方です。
What(何をするか)よりも、A社ではたらくことを最も重視するわけです。
仕事の内容よりも企業文化を重視する人と言えます。
仕事の内容は常に変わるものだし、必ずしもやりたい仕事ができるわけではないのに対し、企業文化というのはたいてい強固で持続的なものなので、Where 起点で “はたらく” をデザインする人は安定したはたらき方が期待できます。
就社的な考え方を批判する向きもあるようですが、私は悪くないと思います。
自分に合った社風は、長くはたらく強力な動機になります。
リスクとしては、企業文化や社風は入社してみないとわからないこと。
相手の本性は結婚してみないとわからない、とほぼ同義です。
「海外ではたらきたい」というのも Where 起点の一例ですね。
私の経験を踏まえると、業種や職種なんかよりも、海外ではたらくことのほうがはるかに重要な要素でした。
Where は、古典的だけど根強く、今でも十分有効な考え方だと思います。
What 起点で “はたらく” をデザインする人
What = 何をしてはたらくか
例えば、「人事の仕事がしたい」「〇〇の開発がしたい」
Where と並んでポピュラーな考え方ですね。
やりたい仕事ができるなら、はたらく場所にはあまりこだわらない人です。
スペシャリスト志向で、いくつもの企業を横断的に渡り歩きながらキャリアを積んでいく人もいます。
最近、この What に変化が起きていると感じます。
何をしているのかよくわからない人が増えました。
私の長年来の友人が某日本企業のイノベーションラボをリードしています。彼の仕事内容を聞いても私は理解できません。日々何をしているのか聞くと、いろんな業界の人と会って雑談しているだけです。
What がはたらくをデザインする王道だったのはすでに過去の話で、What を考えることは意味がなくなりつつあるのかもしれません。
Why 起点で “はたらく” をデザインする人
Why = なぜはたらくか
以前はそんなことを考える人はほとんどいなかったと思います。
面接官が「なぜその仕事をしたいのですか?」とくだらない質問をするので、就活生が自己分析なるものを始めました。
そして、こんなこじつけに近い思考法を身につけたのです。
Why「はたらく人を幸せにしたい」⇒ What「人事の仕事がしたい」
Why「家事労働をラクにしたい」⇒ What「家事製品の開発がしたい」
しかし、今の時代に考えるべきなのは、なぜその仕事がしたいかではなく、「そもそもなぜはたらくのか」だと思います。
「はたらかない」選択肢もあるのに、ということです。
はたらくことが大前提だった時代には考える必要のなかった問い。
「私はなぜはたらくのか」
社会、あるいは人とのつながりを持っていたいから?
何かをつくる、考える、表現することが好きだから?
はたらくことの中で知識、経験、学びを得たいから?
Why は、あまりこじらせる必要はないですが、一度は考えてみるべき、かつ定期的に振り返ってみるべきものだと思います。
How 起点で “はたらく” をデザインする人
How = どのようにはたらくか
Why と同じく現代的な視点です。
どこではたらくか、何をするか以上に、はたらくスタイルを重視する人です。
自由度を重視する人が増えていると思います。
時間や場所に縛られない。規則や組織の不文律に煩わされない。
仕事を人生の中心に位置づけてバリバリはたらくスタイルも How の一例です。
仕事に夢中になっていると格別の高揚感がありますから、そういうスタイルも幸福追求のカタチだと思います。
How は、その人の生き方の問題と直結しています。
How を重視する人が増えてきたということは、はたらくことを生き方(どう生きるか)と結びつけて考える人が増えてきたということでしょう。
How は、はたらく人が最終的に行き着く考え方のような気がします。
When 起点で “はたらく” をデザインする人
When = いつはたらくか
「働き方改革」が労働時間の問題ばかり議論していたことに呆れましたが、ここで言う When は、労働時間やフレックスタイムのことではありません。
長い人生の中のどの時期をはたらく期間に充てるかということです。
生まれてから20年勉強し、40年労働し、20年余生を過ごして死ぬ、という既定路線のライフサイクルは過去のものとなりました。
誰もが自分の人生時間を自由にデザインすることができる時代です。
例えば、
A) 25歳~45歳の 20年だけはたらく。45歳~は趣味やコミュニティ活動など好きなことをして生きる
B) 30歳まで勉強してから 30歳~40歳の 10年はたらく。40歳から5年勉強し直したあと、45歳~55歳の 10年はたらき、55歳でまた学び始める
C) 30歳までは遊ぶ。30歳~40歳で勉強する。40歳からはたらく
Aさんは FIRE型。
Bさんは勉強とはたらくを交互にバランス良く配置する人生設計。
Cさんは遊びと学びを人生の前半にもってきて、後半をはたらく期間に充てる。
When は、生涯全体を見据えた設計、あるいは戦略と言っていいでしょう。
私は Who で “はたらく” をデザインしてきた
どれを起点にするか、どれを最も重視するかは、年齢や経験とともに変わり得るものです。
私の場合、最初 What を起点に就職し、その後 Why を問い続けたあと、Where が重要と気づいて海外を拠点と定め、現在は How(自由にはたらく) が起点になっています。
それでも、最も重視してきたことは、ずーっと変わっていません。
旅行の 5W1H で Who(誰と行くか)が最も重要だと言いました。はたらくことにおいても、私は Who(誰とはたらくか)を一番に重視します。
正確に言うと、With whom や For whom です。
それはなぜだろう。
体の内側からモリモリッと力が湧いてくるのは、人に心が動いたときみたいです。人といっても、有名人とかではなく、”お客様” のような抽象でもなく、直に接する具体的な人のことです。
「この人とともにはたらきたい」
「この人のためにがんばりたい」
そう心から思える人の存在が私の原動力らしいです。
そう思わせてくれる人の特徴はさまざまです。
おそろしく頭のキレる人だったり、公平無私で高潔な志を持つ人だったり、単に人としてかわいい人だったりします。
私をワクワクさせるのは、凄い技術でもアイデアでもなく、ましてや経済的成功や地位ではもっとなく、ただただ私を心酔させる人との邂逅なのです。
Who からもらうハッピーを最大化すべくその他の要素をデザインします。
Who がいる場所ではたらき、Who と目的を共有し、Who とともにはたらくことで How(= はたらき方)がますます私らしくなっていく好循環。
私の “はたらく” モデルを図式化しました。
こうして図にしてみると、いろんなことが見えてきます。
まず、驚くほどシンプルです。
スナップショットだけ見れば、私のはたらき方は How と Who だけでほぼ説明できてしまいます。
そして、はたらき方とは “私らしさ” そのものだとわかります。
自由と人間を愛する価値観がモロに表れています。
あなたの “はたらく” を描いてみてはいかがでしょう。
そこには、あなたのはたらき方だけではなく、あなたの生き方、ひいては、あなたそのものを発見することになるかもしれません。