見出し画像

ファミリー会議、紛糾す

前回のあらすじ
長男ドイツと長女フランスはロシアに対し、ウクライナ侵攻をやめるよう、それぞれ働きかけていた。
そんな折、アメリカがウクライナへの支援をやめるとの情報が入る。
ヨーロッパ・ファミリーは動揺しつつも、ウクライナはヨーロッパの手で守る、とファミリーの結束を固めるのだった。
一方、三女スイスは相変わらず「我関せず」の姿勢を崩さず、養子UKはアメリカとヨーロッパの間を狡猾に立ち回っていた。

その日、ファミリーの事実上のリーダーである長男ドイツがファミリー会議を召集した。

独「皆も知ってのとおり、我らファミリーは最大の危機に直面している」

蘭「兄貴、アメ公の動きやな?」
独「そうだ。ウクライナをめぐって、アメリカが独断でロシアと交渉している。これは我らファミリーにとって屈辱であり脅威でもある」
ル「アメリカがロシアに有利な条件を提示しているのが気になりますね」
独「そのとおりだ、ルクちゃん。ウクライナは一部の領土を失うことになるだろう」
ル「でも兄さん。ウクライナはファミリーではありません」
独「だが、今やファミリーの一員であるポーランドと境界を接する隣人を見捨てるわけにはいかぬわ。次の標的はバルティクスとポーランドになる」

そのとき、ポーランドがすまなさそうに口を開いた。
ポ「私は・・・後からファミリーに入れてもらいましたが、もとはといえばソビエトの情婦だった女です」

場がシーンとなった。

伊「まあまあポーさん、昔のことはいいじゃない。今は僕たちファミリーの一員なんだからさ」
独「イタリア、よくぞ申した。我々はポーランドを守る義務がある」

(どの口が言うのだ。昔ポーランドにしたことを忘れたのか?)
と養子UKは思った。
(兄貴はポーさんにゾッコンやったからなー)
と三男オランダは思った。

仏「兄者。ポーランドの前にウクライナをどうするおつもりか?」
独「この戦争に勝たせるのは無理だ。よって戦後の体制について考えたい」
ル「NATOへの加盟は無理だと思いますよ」
独「ルクちゃん。そもそもNATOとはなんだ?」
ル「WW2後、共産陣営の脅威に対抗するために作られた軍事同盟です」
独「それは知ってるが、ロシアはなぜそんなにNATOを恐れるのだ?」
「むかし兄さんがムチャクチャ暴れたからでしょう」

ふたたび、場がシーンとなった。

独「フランスよ。お前の意見を聞きたい」
仏「停戦には賛成。ただ、ドナルドダックの思いどおりにはさせとうない」
蘭「姉ちゃんの言うとおりや。ワシらの問題になんでアメ公がしゃしゃり出てくるんじゃい」
伊「しょーがないよう。NATOはほぼアメリカさんの軍隊なんだからさ」
独「くそっシャイセ・・・結局そこか」

議論が行き詰まったそのとき。

ル「世界の勢力マップを再定義してみませんか?」

一同、次女ルクセンに顔を向けた。

ル「冷戦が終わったといっても、圧倒的な軍事力を持っているのはアメリカとロシアです。そこで第三極を作る」
独「俺たちが?」
ル「はい。天下三分の計です」
独「だが、俺たちには核兵器がない」
ル「兄さんは持ってなくても、姉さんは持ってますよね」

長女フランスが目で頷いた。

ル「UKさんもね」
と、ルクセンはUKに秋波を送った。

英「怖い怖い(汗)第三次世界大戦を起こす気ですか?」
ル「起こさないためです。アメリカがヨーロッパから撤退したら、軍事力の空白が生まれます。戦争を起こさないためには、私たちファミリーが大国に匹敵する力を持つのが得策ではないでしょうか」

そのとき、三女スイスが現れた。
瑞「ルク姉ちゃん!アホなこと言いな!」
ル「スイス!」
瑞「なんで世界戦争が起こる前提で話してんねん!」

ル「じゃあ国連に働きかけてくれるの?」
瑞「ウチは永世中立国や」
ル「中立中立って叫んでれば安全なわけ?」
瑞「全人口分の核シェルター作って、国民が最後の一兵になっても戦う意志見せたら、誰もよう攻めてこんわ
ル「私は兄さんと姉さんの間で何度も国境を書き替えられてきた。おかげで共通の言語も文化もない。あなたのとこもそうでしょ」
瑞「兄上も反省してますわよね(満面微笑)」
独「ゴメンて。二度としません(満面苦笑)」

ファミリーには複雑な過去があった。
黒い歴史を決して忘れないこともヨーロッパ・ファミリーのDNAなのだ。

伊「国連といえば、ファミリーには常任理事が5人中2人いるんだよね」
瑞「姉上とUKさん。もう一人おったら過半数とれるね」
伊「もう一人か。ロシアさんともアメリカさんとも組まないとしたら」
「あとはチャイナやで」

場が冷やかな笑いに包まれた。

仏「ドナルドダックかくまのプーさんか。究極の選択やのう」
蘭「カレー味のウンコかウンコ味のカレーかみたいなもんか」

英(下劣すぎる・・・こんな連中と関わっていたら私まで品性を疑われる)

養子UKは、ヨーロッパが今度こそ本気でアメリカと訣別する気でいるのを感じていた。しかし・・・と思う。
アメリカ抜きでヨーロッパの平和を守れると考えているなら、やはりこいつらは現実が見えていない。
天下三分の計だと?ヨーロッパのどこにそんな力が残っているのだ?
この連中は帝国主義時代で時計が止まっている。
「欧州軍創設」などとヤバい話に巻き込まれないように気をつけよう。

かたや、次女ルクセンは小国の悲哀を感じていたのである。
結局、アメリカもチャイナも、ロシアの勝利を歓迎しているんだわ。
大国が得をする世界は、大国にとって好都合だものね。
小国の私たちが生き残る道は連帯しかない。兄さんや姉さんもわかっているはず。
UKさん。逃がしはしないわよ。