私が空の旅に望むこと
一時帰国するため、じつに 2年半ぶりに機内の人となった。
そしたら、エアラインに対する長年の苛立ちを思い出した。
私は auditor 時代に年間 80回ほどヒコーキに乗っていたが、じつはヒコーキでの移動が大嫌いだ。
ヒコーキが怖いとかではない。ヒコーキが嫌いな最大かつほぼ唯一の理由は、無駄な時間が異常に長いことである。
私ほどのフリークエントフライヤーでも、パスポートコントロールとセキュリティチェックを素通りすることはできない。せいぜいファストトラックが使えるだけだ。
席に着いてから離陸するまでの時間も異常に長い。全乗客が搭乗を終えるまで出発できないのは理解できる。だが、ビジネスクラスやファーストクラスの乗客を先にボーディングさせる(=機内でより長い時間待たせる)ルールはまったく理解に苦しむ。
以前は逆だった。ビジネスとファーストは最後にボーディングするものだったのだ。そのほうが理にかなっている。最後までラウンジでゆったり過ごすことができるからだ。
グレードの高いクラスほど機内での待ち時間が長くなるのは、どう考えてもおかしい。
とにかく、たかが乗り物で移動するだけのことなのに、理不尽な待ち時間が多すぎるのだ。
せめて飛行中くらいは有意義に過ごしたい、と考える。
私は機内で映画や音楽を楽しむ。
とくに映画に没入しているとき、最悪最凶の敵が機内アナウンスだ。
そもそも私は、エアラインは乗客を目的地に運ぶことだけしてればいい、と考えている。機内食も免税品販売もオマケも不要だ。
ただ、それを楽しみにしている乗客もいるだろうから、「廃止せよ」とまでは言わない。
しかし、機内アナウンスは百害あって一利ない。
とくに長時間のフライトでは、機内での退屈な時間に耐えなければならない。寝て過ごすのが最良の対処法だが、映画を観て過ごすのも悪くない。
仕事が多忙だった頃、機内は誰にも邪魔されずに一人の世界に浸れる貴重なひとときだった。搭乗前のメンドクサイ手続きに耐えた後、せめて機内で映画を楽しむ時間くらいは最大化したかった。
それを邪魔してどうする。
とくに日本のエアラインは機内アナウンスが多すぎて、殺意が増す。
今回利用した某エアラインは、以前にも増して機内アナウンスが多かった。
「当機は、あと 1時間ほどで降下を開始いたします」
そのアナウンス要る??
それを聞いて、乗客は何したらいいの?
「シートベルトサインは点灯いたしませんが、万一の揺れに備え、お座席のベルトを常にお締めくださるようお願い申し上げます」
ほなベルトサインずーっと点灯させといたらええやん。
他にも意味不明な機内アナウンスのオンパレードだったが、とくに気絶しそうになったのがこれ。
「携帯電話を座席の隙間に落とされた場合は、無理に取ろうとなさったりせず、客室乗務員にお知らせください」
ツッコむ気にもなれない。
映画に入り込み、はらはらと落涙しているときに、このアナウンスによってすべてが中断される瞬間を想像してほしい。
とくに日本の客室乗務員はしゃべりがスローすぎて、なおさらイライラする。その後に続く、聞くに堪えない英語がさらに追い討ちをかける。
日本のエアラインは、乗客が求めるものとは真逆のことをしている。
私がエアラインに望むこと。それは、「邪魔するな」の一言に尽きる。
機内アナウンスなどゼロでいい。規制上の義務かなにかで、機内アナウンスをやめるわけにはいかない事情もあるのだろうが、機内アナウンスをオフにできる機能を実装してくれたら、私はそのエアラインを一生使い続ける。