聖なる夜に間違いを正しておこう
クリスマスはキリストの国ならどこでも似たようなもの。
と思っている日本人は多いのではないでしょうか。
まず「クリスマス」は英語であって、ドイツではこれを「ヴァイナハテン」(=「聖なる夜」の意)と呼びます。フランスでは「ノエル」です。
この時期ドイツでは、「セント・ニコラウス」という言葉をよく聞きます。
以前、私はこれを「サンタクロース」のドイツ名だと思い込んでいました。
セント・ニコラウスは子供たちにプレゼントを配ると言うのだから。
しかもドイツでは、ニコラウスという男性名はクラウスと短縮されます。
「セント・ニコラウス」とはすなわち「サンタ・クロース」のこと、と考えるのが自然でしょう。
しかし、そんなことを口にしたらとんでもない恥をかくところでした。
サンタクロースとセント・ニコラウスは、なんと別人なのです。
サンタクロースは架空の産物ですが、セント・ニコラウスは実在した人物です。4世紀のトルコでビショップだった人。
サンタクロースのあの赤い衣装は、セント・ニコラウスのビショップの法衣に由来する、との説もあるようですが、これも間違い。
ビショップの法衣はライラックと呼ばれる紫に近い色です。
緋色の法衣は、枢機卿が身にまとうもの。
枢機卿が子供たちにプレゼントを配るヒマがあるとは思えませんね。
しかも、セント・ニコラウスが子供たちにプレゼントを配るのは、12月25日ではなく、12月6日なんだそうな。
12月6日は、セント・ニコラウスが亡くなった日。
というわけで、どうやらサンタクロースとセント・ニコラウスは何の関係もなさそうなのです。
12月25日は、イエス・キリストが生まれた日、ということになっていますが、これもじつは作り話だそうです。
キリストが生まれる以前から、12月25日は何か特別な日でした。
冬至(1年で最も夜が長い日)と関係があるんだとか。
キリスト教の成立後、すでに民衆の間で特別な日となっていた12月25日を教会が無理やりキリストの生誕日に仕立て上げたのです。そのほうが浸透させやすかったから。
なんかムチャクチャな話ですね。
もっとムチャクチャな話があります。
北欧の国では、クリスマスは 12月13日なんだそうな。
しかも、プレゼントを配る人はセント・ルチア。
ヲイヲイ・・・。
また違う人が出てきたよ。
今度は女子だし。
レディーサンタですかぁ?
さらにさらに。
スペインのクリスマスは 1月6日だと言う。
おーい、年越しとるがな。
で、プレゼントを配るのは 3人の王様なんだとぉ。
はあ? 誰ですか?
サンタさんはどこ行ってしもうたんや。
そろそろあなたはこう問いたくなるでしょう。
12月25日にサンタクロースがプレゼントを配る国ってあるの?
じつは、ないのです、ヨーロッパには。
驚かれたでしょうか。
「クリスマスにサンタさんが来る」という文化は、アメリカ人がごくごく最近つくりあげたプロモーションにすぎないのです。
バレンタインデーやハロウィンと同じ次元なのです。
製菓会社のキャンペーンと変わりませんね。
ただヨーロッパも、日本ほどではないけれど、US発のコマーシャリズムの影響を受けていて、12月25日にプレゼントを交換する人も少数ながらいます。こういう現象は、ヨーロッパのアメリカ化と言えます。
まあ、クリスチャンでない者にとっては、以上のような違いなどそもそもどうでもいいことなのかもしれません。
クリスマスは、日本の恋人たちにとって大切な日のようですが、クリスマスをそれほど重視しない都市があることを私は知っています。
それは京都。
そのむかし、私は家庭教師として平安女学院、通称「平女」の生徒を教えていました。
彼女は言いました。
日本の首都は京都だと思っています。
聖なる夜ですね。
これといって信仰をもたない私が、1年で1日、なーんとなく神聖な気分になる時間。
プレゼントがなくても、誰とも会わなくても、なぜだか幸せな気分に包まれる特別な夜。
メリークリスマス。