菊と枕
長身で端麗な若い女性が、美術学校を出た中学校の教師に嫁ぎましが、自分の期待に外れた夫に失望して夫と言い争うようになり、言い争いを避けるために俳句を趣味にすると決めますが、やがて俳句への情熱が承認欲求に変わり、一般の人から見て、行動が常軌を脱したようになる、松本清張の傑作短編集(1)の2作目の「菊枕」は、俳句に情熱をかける女性の波風大きい人生の話で、最初から最後まで興味深く読めました。
https://www.amazon.co.jp/%E6%88%96%E3%82%8B%E3%80%8C%E5%
人が趣味を持つと決めた時は、心の空虚や飢餓を埋めたり、精神的な安らぎや安定をもたらしてくれると、期待して始める場合もあるでしょうが、かえって趣味が人を精神的に追い詰めることもあると、この小説は示しているように感じました。
この「菊枕」に登場する人物にモデルはいるのだろうかとググってみると、主人公の ぬい は杉田久女という女性俳人を題材にしたようです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%89%E7%94%B0%E4%B9%85%E5%A5%B3
杉田久女の関係者の方は、「菊枕」の主人公と杉田久女が同一視されることに批判的なようです。杉田久女の俳句や人生をネットで見ると、批判的になるのももっとものような気がします。
「菊枕」の小説は、読み応えのある作品だったという読後感がありました。
しかし、人物の参考にされた杉田久女が、どのような俳句を作ったか、その俳句が後の人々の心に残るかは書かれていません。杉田久女の人生は、他の作家も小説にしたり、テレビドラマや劇にもなってるので、もし今後にそれらの作品を読んだり見たりして、内容が引き込まれるようなら、感想を書いてみたいと思います。