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〈アークナイツ〉1/2スケールのTHRM-EXが完成するまで。

DMM.make AKIBAには約20名の「テックスタッフ」と呼んでいる技術スタッフが在籍しています。

機材の使い方のレクチャーや技術的な相談の他に、会員・非会員問わず様々な受託開発も行っています。

▼テックスタッフについて▼


このnoteでは、人気スマートフォンゲーム「アズールレーン」「アークナイツ」などを展開する株式会社Yostar(ヨースター)様より依頼を受けて開発したロボットの製作について書いていきます。

▼Yostarについて▼


ご依頼いただいたのは「アークナイツ」の新オペレーター「THRM-EX(サーマル・イーエックス)」の1/2スケールのロボット開発。

▼完成したロボット▼

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前後左右に移動、回転できる他、ドーム部分を光らせたり、内蔵スピーカーで音声を発することができます。

完成したロボットは昨年12月24日に開催されたアークナイツ1周年記念イベントでお披露目されました。

▼イベントの様子▼ (THRM-EX登場シーンから再生されます)


開発を担当したお2人に完成までについて聞きました。

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村田 至(むらた・いたる) *写真右
大学卒業後、建築物の外装リフォーム会社に務め、工業デザインモデル製造を専門とする企業に転職。携帯電話など様々な試作製品の開発に携わる。2014年DMM.comに入社後3Dプリント事業に携わりながらDMM.make AKIBA立ち上げサポートを行い、2015年より現職。

椎谷 達大(しいや・たつお) *写真左
オートバイ整備士や溶接工、フォークオペなど現場仕事を転々とした後、大学の夜間学部で機械工学を専攻。 大学卒業後は電子部品設計や自動車設計などに従事。2015年より現職。



製作はイラスト1枚から。

椎谷 「依頼をいただいた時にYostarの方からいただいたのはこのイラスト1枚と3次元モデルでした。

3次元モデルと言ってもゲーム上のデザインとしてのモデルだったので、そのまま立体物に落とし込めるようなデータではありませんでした。

▼実際のイラスト(出典:Yostar)▼

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実際にロボットにする想定でデザインされているわけではないので、見えていない部分やイラストでは存在していない部分もありました。

ゲームではコンピュータの負荷を減らすために、なるべくポリゴン数*を減らして見た目を表面上のテクスチャで表現しようとするんです。

例えば表面が分割しているような表現を2次元であれば線を1本重ねれば済みますが、ハードウェアを製作しようとすると実際に分割しなければなりません。

イラストを参考にしながらアレンジしてモデリングする必要がありました。

*ポリゴン:映像やゲーム用の3DCGモデルの制作で用いられる3点以上の頂点を結んでできた多角形データのこと

▼モデリング中の様子▼

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かなり想像力を働かせてキャラクターのイラストレーターの気持ちになりながら開発していましたね(笑)

イラストからなるべくかけ離れないようにしながら、部品をどう分解したり搭載したりするかを考えました。以前トラックの搭載設計をしていた経験もあるのでその経験も活かされました。

もちろん要所要所でYostarの方に確認していただきながら製作しています。」



見た目を崩さず設計する。

村田 「イベントに間に合わせなければならなかったのでモデリングが全て終わる前から加工作業も同時に行っていました。

上の部分だけでも30kgくらいあって、参考にしたモデル通りにそのまま作ると自重で壊れてしまいます。軽量化するために見えない部分は空洞だらけなんですよ。」

▼DMM.make AKIBAのCNC加工機*で加工している様子▼

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CNC加工機:フライス削り、穴あけ、3次元切削などの異種の加工を1台で行うことができるコンピュータ数値制御(Computerized Numerical Control)の工作機械


椎谷 「自動車の多くはモノコック構造*なので外側のボディ部分が全体の衝撃を受けますが、このロボットはそうではないので下部分にフレームを組む必要がありました。

フレームとどう接続するかなど細かい部分はもちろん元にしたモデルにはないので見た目になるべく影響が出ないように設計しています。

モノコック構造:自動車の多くに採用されているボディとフレームが一体化している構造。ボディ全体で衝撃を分散して受け止めることができる

▼ロボットを支えるアルミ製のフレーム▼

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フレームなどを組み立ててモーターを搭載したあと、実際に走らせて動作確認を行いました。制御用のプログラムも私が書いています。

足の部分にはイラスト同様に横移動もできるメカナムホイール*を使用しています。構造上4輪全てが接地していないと走れないので、サスペンションを付けることができず衝撃に弱くなってしまいます。

上に載せているパーツがデリケートなので、衝撃を和らげるためにフレームを2層構造にして間にゴムのダンパーを付けました。」

メカナムホイール:任意の方向に移動できるように特別に設計されたホイール



信頼のおけるパートナーたちとつくる。

椎谷 「パーツの塗装はDMM.make 3D PRINTの塗装のプロフェッショナル2人に協力してもらいました。普段の受託開発でもよく一緒に開発しています。

ドーム部分は世界最多導入数を誇る3Dプリンターメーカーのformlabs様にご協力いただいて3Dプリントで製作しました。高精度な造形力と透明度の高いクリアレジンでキャラクターの細部まで再現することができました。

formlabs様はDMM.make AKIBAのスポンサーでもあり、今回の製作にあたって多大なるご協力をいただきました。

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DMM.make AKIBAが所有している機材や人材で足りない部分は信頼関係のある協力会社の皆さんにお願いしています。普段からお願いしている工場があるのでコミュニケーションも円滑です。」



さいごに。

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納品後、Yostar担当者様よりコメントをいただきました。

“製作にご協力いただいた、DMM.make AKIBA様、formlabs様、ありがとうございました!

生放送をご覧いただいたドクターの皆様からも、「細部の作りこみ」や「再現度の高さ」等に対する驚きの声を多数いただきました。「実物が見たい!」という声も多く、ドクターの皆様に楽しんでいただけたのではないかと考えております。

1枚のイラストから立体物を制作するということで、難しい部分も多々あったかと思います。1周年記念の制作物として、最高のクオリティで仕上げていただき、本当にありがとうございました!
今後のリアルイベント等で、ドクターの皆様に直接お見せできることを、楽しみにしております!”


ご依頼いただいたYostar様、製作にご協力いただいたformlabs様、ありがとうございました!

イベントでは自爆してしまった(?)THRM-EXでしたが今後はイベントなどでお目にかかれるとのこと。読者の皆さんにもぜひ直接目にする機会があれば嬉しいです。


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