ピックデュエルを競技環境に 5話「整備」
4話「草案」のリストで実際に束を作成し、何度かゲームを行ってみました。プレイを通した感覚から、ゲームの細部を詰めていきたいと思います。
今回はゲームというより、運営的な要素が主になってきます。
ピックの流れ
ピックの仕方は様々あります。5枚めくって1枚取る、10枚めくって2枚取るなど、取り方はほぼ無限です。ただ、これらの方法はとにかく時間がかかります。しかし競技環境にするなら、ピックに長い時間をかけるわけにはいきません。
そこでmtgのドラフトの取り方を使います。8枚のカードを全プレイヤーに配り、1枚取って隣のプレイヤーに渡します。そうすると8枚で1周し、5回繰り返すことで全員がデッキを組み上げることができます。ピックにかける時間を30分とすると、1ピックあたり45秒です。
少し競技性をプラスしていきましょう。
8枚目のピックは、残った1枚のカードを押し付ける形になります。欲しいカードとは程遠いものが送られてくることも、しばしばあるでしょう。
そこで、デュエルマスターズでは珍しいですが、サイドボード制度を採り入れます。本来5周で十分なところを、あえて1周余分に行うことで、一人48枚のカードをピックさせます。そこから8枚取り除いてデッキを組むのです。
サイドボードは対戦前に自由に入れ替えができます。すべてのゲームがマッチ戦だとかなり時間がかかってしまいますので、決勝のみマッチ戦を行うこととします。基本的には1戦目に相手のデッキを見極め、2戦目前にサイドボードからメタになるカードを採用するといった具合でしょう。
時間も整理していきましょう。
1周終わった間ごとに、デッキ確認時間を2分取ります。1周終わりは、全員が8枚目のカードを取ったタイミングです。またピック終了後のデッキ編集時間も5分ほど取ります。
このとき、ピック開始からデッキ編集終了までを30分とした場合、1周あたり約2分半、1ピックあたり約15秒の時間があります。しかしカードは取るごとに減っていきます。8枚目は1枚しかないため、実質1ピックあたり約20秒。これを適切に振り分けると、はじめ2枚は30秒、3~5枚目は20秒、6枚目以降は10秒になり、8枚目を取った時点から確認時間が始まります。この時間でデッキ方針からメタまで読んでいきます。
流れは以下のようになります。
1枚目(30秒)残り7枚→2枚目(30秒)残り6枚→
3枚目(20秒)残り5枚→4枚目(20秒)残り4枚→
5枚目(20秒)残り3枚→6枚目(10秒)残り2枚→
7枚目(10秒)→8枚目のカードを取る=確認時間へ
1周目(2分半)→確認(2分)→2周目(2分半)
…6周目(2分半)→編集(5分)
計30分
おそらくテスト試験官のようなタイムキーパーが必要です。実際、mtgのプロツアーでは、ジャッジによる厳格なタイムキープが行われています。
平等な情報戦
ピックするカードは他のプレイヤーには見せません。ただし、束内のすべてのカードは枚数まで開示されています。なので、他のプレイヤーがどんなカードを取ったかを推測しながらゲームを進める必要があります。
カードの開示は、さすがにすべてのカードを並べて見せるわけにはいきません。なので、ゲーム開始前に配布資料を作成するのが良いとされました。今の時代、カード名さえわかればスマホでも検索できますし、仮に検索できなくても、運営が答えられれば問題ないと判断したからです。
人数によっては、回したカードが戻ってくる場合があります。4人で回す場合は、5枚目のピックからは知っているカードになりますね。8人のプレイヤーでやる場合は、あえて4人ずつに分けてピックすることで、競技性が増しそうです。
禁止カード
これはルール上仕方ないですが、禁断や零龍は束には入れられません。また、GRも12枚揃えることができないため、使用不可です。そうなると必然的に、GR召喚するカードなども使用不可になります。
ただし、超次元ゾーンに関しては話は別です。なぜなら立派な戦略として機能するからです。
例えば、束の中に「時空の踊り子マティーニ」と「超次元サプライズ・ホール」が入っていたとしましょう。すると、対戦相手の超次元にマティーニがいた場合、嫌でもサプライズホールのことを念頭に置いてゲームをプレイする必要が出てきます。本当はマティーニを出すカードは1枚も入っていなかったとしてもです。
ブラフに使うだけではありません。ピック時の戦略にも超次元は意味があります。超次元をピックした場合、デッキに入れられるカードの枚数が増えますが、その分余分に取れるカードの枚数が減ります。余分なカードが減れば、その分デッキの練度は落ちますし、他のプレイヤーに関与できる機会も減ります。それを差し置いて超次元を取るかどうかは、完全にプレイヤー次第になります。
このように、超次元は大きな駆け引きを生んでくれます。フルでデッキに入れたとしても8枚ですので、ピック総数に影響がないのもポイントです。
ただし、超次元を入れる際は必ず裏面で区別できないようにしましょう。超次元用に、両面が透明なスリーブを後から配るのも忘れないようにしましょう。
トラブル防止策
たくさんの人が同じカードに触れることは、悲しいですが何かしらトラブルが起きる要因になります。
とりあえず、あらかじめウェットティッシュや除菌シートなどを用意しておくべきでしょう。使用するカードをすべて除菌することも、手間ではありますが有効です。衛生的な部分は大抵の場合、こういった事前準備でケア出来ます。
あまり考えたくはありませんが、盗難や器物破損に対しても対策は必須です。デッキはデッキシートに記入し、サイドボードも追加で記入欄を設けておけば、全体としてどのカードがどこにあるかは把握できます。
カードの破損に対しては、残念ながら退場措置を取るしかありません。最悪の場合、弁償してもらうなんてこともありえます。
皆が気持ちよくプレイできるように、他のプレイヤーに配慮する心がけをお願いしたいものです。デュエルマスターズの競技イベントルールにも、プレイヤーは非紳士的行為を慎むことが義務付けられています。しかし、起きてしまったトラブルには、きちんと対応できるように定めておきましょう。
呼称について
ゲーム全体で扱うカード群を議論する際に、「束」という単語だけでは何を指しているかわからない場面が多々ありました。なのでとりあえず、公式っぽい名前を付けてみたいと思います。
ゲーム名=デュエマサバイバル
束全体=バイオーム
配られた束=キャプチャー
なんかそれっぽいですよね。これらは「今回はアナカラーバイオームです」とか「キャプチャーは10枚です」みたいに使います。ちなみに、サイドボードは間違えなさそうなのでサイドボードのままです。
おわりに
さて、今まで長々やってきましたが、ようやく競技環境レベルまで落とし込めたんじゃないかと思います。
ところで薄々気づいていましたが、要はこれってキューブドラフトなんですよね。ですがただのキューブドラフトではありません。固定カードプールでの競技性を追求し、限られた資源から生き残りに死力を尽くして戦う。まさにサバイバルな競技なんです。
正直いくらでも変化は可能です。しかしそれは、ここまで作ってきた基礎の中での変化になると思います。それは環境、つまりバイオームの違いであり、変わらない本質的な部分がこの中にあるはずです。それを言語化し、整理してきたつもりです。あとは、環境を作るだけ。
次回で最後になります。もう少しお付き合いください。
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