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サービス収支の経済学(前編)~24年国際収支の総括~
鮮明になる「成熟した債権国」の立ち位置
ドイツ総選挙がトップニュースとなっているところですが、これはまた追々考察を深めるとしましょう。総じてすべてが予想通りの結果であり、むしろ何か論評に値するようなことが起きるとすればこれからだと思いますので、今少し事態を見極めてから筆を執りたいと思います。
今回はより、長いお話をさせて頂きます。先月は以下の考察において、近年国際収支統計の中でもドラスティックな構造変化に直面しているサービス収支に関し、「赤字10兆円時代」を懸念する論考を発信しました:
こちらは非常に反響がありまして、今月、テレビ東京「モーニングサテライト」でも解説させて頂いたばかりです:
これまでnoteでは日本の経常収支について「統計上の数字」に固執せずキャッシュフローからその実態をつかむ重要性や、近年赤字を拡大させている「その他サービス収支」、とりわけこれを主導しているデジタルサービスへの支払いに着目する重要性を議論してきました。この点、2月10日には2024年通年分の国際収支統計が明らかになったので、改めて日本経済の現状と展望を対外経済部門の視点から整理しておきたいと思います。
モーサテ「プロの眼」の解説を一段と掘り下げる形で解説させて頂きます。
2024年の経常収支は+29兆2615億円と現行統計で比較可能な1985年以降で過去最大を記録しました。これまで過去最大の黒字であった2007年(+24兆9490億円、下図の点線赤四角部分)を優に更新したことになります。
しかし、2007年の経常黒字の半分以上(+14兆1873億円)が貿易サービス収支黒字であったのに対し、2024年の経常黒字は第一次所得収支黒字(+40兆2072億円)で全て稼いでいます。2024年の貿易サービス収支は過去3年間で最小ですが、歴史的に見れば大きな赤字水準(▲6兆5152億円)です。ちなみに、第一次所得収支黒字の40兆円台は初です。もちろん過去最大です:
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「貿易ではなく投資で稼ぐ」という「成熟した債権国」としての姿が一層鮮明になったと言えますが、問題は国民がその恩恵に浴することができていないという現状でしょう。
・・・と、ここまでが一般的に報道される国際収支統計にまつわる情報だと思います。
以下ではより子細に分解したうえで各論を掘り下げていきます。今回、書いてみたところ6000文字くらいになりそうなので、前後編に分けることにいたしました(さすがに6000文字をスマホで全部読むというのは苦行過ぎると思いますので・・・)。
「長期シミュレーションの結果だけ知りたい」という方は後編から呼んでも大丈夫です(そこだけ読んでも分かるように書いています)。まず、前編では2024年の国際収支おさらいを中心として解説します。その上で後編で長期シミュレーションを解説します。
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