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総裁選と金融市場【現時点の頭の整理】

総裁選、市場の争点定まらず
さて、市場のニュースは今日のところはFOMCの大幅利下げに集まっていますが(これは後ほどやります)、9月27日に投開票が迫った自民党総裁選についても相場との関連で照会が増えています。正直、経済政策について相場を動かすほどの争点が浮上しているわけではないですが、現時点の情報に基づいて簡単な論点整理はしておきたいと思います:

票読みは筆者の専門外ですが、今回は過去最多となる9名が立候補していることから、1回目の投票で過半数を得る候補が現れず、上位2名に対して国会議員票(367票)と地方票(47票)を用いた決選投票が行われると目されているようです。麻生派以外の派閥が解消に向かったことも相まって国会議員票は分散が予想され、決選投票に勝ち残るためにはまず一般党員票を如何に集められるかが鍵と言われています。この一般党員票にまつわる世論調査がメディアによって相当乖離があり、市場予想が定まらないのが現状です。最近では高市氏の急伸が話題となっています(同時にその背景にあるリーフレット問題?も報じられているようですが、因果はよくわかりません)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA183IX0Y4A910C2000000/

現状、優勢と報じられる候補として石破茂元自民党幹事長、高市早苗経済安保担当相、小泉進次郎元環境相、河野太郎デジタル改革担当相などの名前が挙がっています。一方、茂木敏充自民党幹事長、林芳正官房長官などについては党員票で劣後するとの評も目立つようです。いずれにせよ、現時点で必勝を約束された候補が見当たらないことから、総裁選自体は重要な材料であるものの、金融市場でどのように消化すべきかという焦点は定まっておらず、また、有力候補の政策にも具体性がないことから「リアクションに困る」というのが現状に見えます

強いて言えば、現時点で入手可能な情報を元にした場合、有力候補として石破氏、高市氏、小泉氏、河野氏の名前が上がり、今回は厳しいとしても将来のホープとしての小林鷹之元経済安全保障担当相が取り上げられることも多い印象です。以下ではこの5名に絞って簡単に考察を与えてみたいと思います。これら5名は新政権下でも要職に就く可能性が高いとすれば、注目しておく価値はあるでしょう。
 
ポリシーミックスで見る各候補の立ち位置
金融市場が興味を持つのは各候補の経済政策スタンス、より具体的には財政・金融・通貨政策の方向性に尽きます。金融政策と通貨政策は理論的に一致すべきなので、別個に考える必要はありません。以下では簡単にポリシーミックスの基本的組み合わせに照らして、各候補の現在地を整理してみたいと思います。ちなみに類似のテーマでは9月25日(火)にモーサテプレミアムのセミナーが開催される見込みです。私も出ます。宜しかったらご視聴くださいませ:

https://www.youtube.com/watch?v=Qu5vULv6_-c

ではポリシーミックスに照らし、各候補の現在地を考えてみましょう。

まず、財政政策に関して言えば、現状、石破氏と河野氏以外は引き締め的な色合いを封印しているように見受けられます。特に、石破氏は金融所得課税の必要性を訴えた印象が金融市場に色濃く残っているので、当選の暁には株式市場の荒れ模様が懸念されるでしょう。岸田首相も就任当初に言及した同案で手痛い市場の反発を食らい、資産運用立国論が本格的に盛り上がり、稼働する今年までは「マーケットにアンフレンドリーな首相」というイメージは付いて回りました。やはり資産運用立国を謳った元年に金融所得課税を強調することはいささか印象が良くないかもしれません。河野氏も折に触れて財政規律の必要性に言及してきた経緯があります:

これに対し、小林氏などは「経済が財政に優先する。 経済を冷え込ませるような財政運営はあってはならない」とかなりはっきり述べています:

高市氏も「何よりも経済成長は必須」、「戦略的な財政出動」など財政については拡張路線を支持しているように見えます。これは小泉氏も同様のようで「経済なくして財政なし」といった発言がありました:

財政政策に関しては、現状、石破氏/河野氏とそれ以外という区分けで見ておけば良い…今のところ、筆者はそのような印象を持っています。


一方、市場が注目する金融政策へのスタンスに関しては、高市氏がアベノミクスの継承者としてのイメージを前面に押し出し、「金融緩和は我慢して続けるべき、低金利を続けるべき」と旗幟鮮明です。裏を返せば、それ以外の候補はこれといった情報発信をしていません。強いて言えば、河野氏(や茂木氏)は7月利上げ直前に、利上げを求めるような発言が話題になったものの、今回の選挙戦においてこれを強弁しているわけではありません。小林氏もこれといった言動が見られません。

恐らく高市氏以外の候補において、金融政策については「喋りたくない」が本音なのだと察します。全候補にとって物価高対策が国民の支持を取り付ける上での最優先事項には違いないでしょう。であれば、ようやく正常化に着手した日銀を今一度緩和路線に引き戻し、円安を助長させるような言動は本来的にリスクでしかないはずです。その意味で高市氏の立ち位置は非常に特殊なのですが、だからこそエッジが立ち、特定層からの支持を惹きつけているとの見方もできましょう。

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