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外貨準備のドル離れ~過去最低比率に~

ドル比率は過去最低を更新
金融市場ではもっぱら米雇用統計の急改善とこれに伴うドル/円相場の急騰が話題です。今回のテーマではないため詳述は避けますが、非農業部門雇用者数(NFP)の変化をもう長い目で見ますと、半年平均では鈍化傾向にあるものの、3か月平均では底打ち傾向にあるようにも見え、利下げシナリオが頓挫するとまでは思わないものの(Fed watchを見ると一部11月利下げ見送りも織り込まれています)、大幅な利下げを正当化するのも難しい状況に見受けられます。11月FOMCの▲50bp利下げはとりあえず潰えた、といったところでしょうか:

こうした目先のお話は日経COMEMOで別記事でやるとして、今回はもっと別の議論です。直近、外貨準備の構成通貨内訳が発表されており、その数字が面白いものであったため、紹介したいと思います。報道ではあまり取り上げられておりませんが、リザーブマネーの動きは為替市場の底流変化を見極める上で重要ゆえ、知っておく価値はあります。過去にもこのテーマでは議論しており、前回は24年3月末時点のデータについて、円比率が上昇していることに焦点を当てた分析をしてみました:

今回、9月30日に IMFが発表した外貨準備の構成通貨データ(COFER)では24年6月末時点のデータが明らかになっています。世界の外貨準備は24年6月末で前期比▲36.2億ドルの12兆3474億ドルと微減でした。今年4~6月期を振り返ってみますと、3月末と6月末で比較した場合、名目実効ドル相場(NEER)は約+1.8%上昇しています。これだけを思えば世界の外貨準備に占めるドル比率は価格効果で嵩上げされた可能性が推測されるところです。

しかし、実際は今回のCOFER データで目を引いたのはドル比率の低下でした2024年6月末時点のドル比率は前期比▲0.70%ポイントの58.22%と2023年12月末時点に記録した史上最低値(58.42%)を更新しています。ドル比率は2020年12月末以降、2022年9月末を除いた14四半期で60%を割り込んでいます。2020年12月末時点で60%を初めて割り込んだ際は大きなニュースになったものですが、もはやそれが新常態になっている感があります

常に80%弱を誇っていた2000年代初頭と比較すれば、四半世紀を経て外貨準備運用の世界に新しい潮流が根付いているのは間違いないでしょう。この時代背景や為替市場、特にドル相場に対して持つ意味などを考察してみたいと思います。

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