ドイツの産業空洞化とユーロ~エネルギー高に押し負ける「永遠の割安通貨」~

ユーロ高とドイツの産業空洞化
前回のVW社のドイツ脱出を取り上げたnoteは沢山読んで頂きました。本件に関しては、先週(9月13日)にご出演させて頂いたテレビ東京「モーニングサテライト」の「経済視点」でも少しだけお話させて頂きました。得てして欧州を題材とした経済・金融議論は金融市場全般を対象にした議論よりも読み手を選ぶものですが、日本においてこのテーマは関心が高いようです。今後、テレビや動画でも解説を求められそうな雰囲気を感じます

上述のnoteでも少し言及しましたが、ドイツの産業空洞化に関してはエネルギーコスト以外に通貨高を理由に挙げる向きもあるようです。今回はこの点について考察を進めたいと思います。

確かに、ロシア・ウクライナ戦争後の利上げ局面を経てユーロには金利が付くようになり、名目実効為替相場(NEER)は統計開始以来のピークを更新し続けているます。主に対ドル、対円での水準しか話題にならないユーロ相場においてあまり知られていない事実かもしれません:

こうしたユーロ相場と現在のドイツ企業部門の動きを重ねた上で、慢性的な通貨高が産業空洞化の一因になった日本の経緯とドイツを重ね合わせようという論調も見受けられます。日本の産業空洞化にまつわるアンケート調査は前回noteにも掲載しましたが、再掲しておきます:

しかし、筆者はドイツの産業空洞化というテーマを通貨高に帰責させるような論調には全く賛同しません。ユーロ相場の歴史においてそれが「最高値」であることと、ドイツにとって「高過ぎる」ことは全く別の問題でしょう。不調をきたしているとはいえ、世界3位(昨年までは4位)の経済大国であるドイツにとって、「ユーロが高過ぎる」と感じる状況は起こりようがなく、ドイツ企業による対外直接投資(端的には海外生産移管)の加速を説明する要因として説得力は乏しいと言わざるを得ません。

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