今後の情報発信について
メンバーシップ導入について
いつも筆者のnoteをお読み頂きまして、大変有難うございます。今回は今後の情報発信の在り方についてのお知らせとなります。日経新聞さんとのお仕事を契機に始めたnoteでありますが、これまで500本以上の記事を配信させて頂き、気づけば1万2000人近くのフォロワーが付いて下さるようになりました。個人的に色々なDMを頂戴することも増えており、大変励みになっております。過去2年間の論考が奏功していることもあり「言う通りにして良かった」という声も多く頂きます。しかし、私は投資推奨をしているわけではございません(もちろん、所属機関を代表するものでも一切ありません)。あくまで経済・金融分析を通じ、私が今感じていることを業務時間外を利用して発信させて頂いております。そこから得られるフィードバックから自分の目線の正しさ(あるいは正しくなさ)を知る機会としても重宝しております。もし投資が上手くいったのであれば、情報を受け取った方の才覚かと思います。
そのような中、「無料にしない方が良いのではないか」という嬉しいご意見も多数頂きます。結論から言えば、今後も日経COMEMOを通じた(皆さまにとっては無料の)情報発信は続けさせていただくつもりです。広く私が考えていることを知って頂きたいためです。しかし、諸事情もあり、今年4月以降は一部記事にはメンバーシップ制(現時点では定期購読マガジン)を導入させて頂くことにもいたしました。
導入を考えた3つの理由
そのように考えた理由は3つございます。
まず、私の分析記事の多くは拙著(これから発刊されるものを含む)などに収録されている主張を元にしています。その意味で本質的には有料情報です。また、現状では本当に多くのメディアで連載させて頂いており、それらの分析と趣旨が被ることも多々ある状況ですが、今や多くの連載は有料会員向けの記事に切り替わりつつあります(私にお金が入るわけではありませんが)。「最初は無料公開でもしばらくすると有料になる」という媒体も増えているようです。こうした中、noteの論考だけ無料開放しておくのは難しい状況がございます。
メンバーシップ導入の背景にはもう1点がございます。それは剽窃防止です。今回、個人的な思いとしてはこちらへの対処策という側面を重く見ています。実は、昨年来、筆者の記事をそのまま盗用して他サイトへの寄稿に使うという悪質な事例が複数報告されています。引用して頂くのは誉れ高いことと受け止めますが、黙って丸ごとコピペして引用元も提示しないというのは流石に悲しい気持ちになります(中には仮にも教鞭を執っておられる方のケースもあり、大変残念です)。もちろん、少額のメンバーシップが完全な防御壁になるとは思いませんが、多少は機能するかと期待します。
最初2つの理由はやや後ろ向きな話になってしまいましたが、3つ目の理由として、国として「資産運用立国」を掲げ、金融教育の重要性を説く世相に鑑み、自分でも何かできることはないかという思いもあってメンバーシップは1つの手段になると考えたことも一因ではあります。普段はプロ(いわゆる機関投資家や大企業事業法人など)を相手にお仕事させて頂いておりますが、その知見が少しでも国策に資するのであれば嬉しいとは思います。
今後のイメージ
基本的にこれまで私がnoteに寄稿してきたような長期的かつ構造的な議論は全てメンバーシップ限定の記事にさせて頂く予定です。筆者のnoteを好んで読んで下さる読者の方々は恐らく構造的な目線、時間軸で言えば長期的な目線に立った分析姿勢を評価してくださっているケースが多そうです。まさにそうした意図で執筆しているつもりですので嬉しく思います。巷では「サクッと簡単解説」のようなコンテンツがブームの様相ですが、そのようなコンテンツをもう卒業された方、もしくはもっと深く学びたい方が足を運んでいただいている、そんな印象を持っております。
メンバーシップで収益を得ようとは全く思っていませんので「月5本で500円」に設定させて頂きます。私のコラムは相応に分量もありますので5本でも読みごたえは十分感じて頂けると思います(※ちなみにこれまでもずっと月5本でした)。書籍やテレビ、youtube出演なども増えて参りましたので、それらと絡めてコンテンツを充実させていく可能性は今後ありますが、まずはこれで走らせて頂きたいと思います。なお、これから読んで頂く方もいらっしゃると思いますので、初月は無料にさせて頂きます。
現状、テレビ東京さんの「モーニングサテライト」を筆頭に毎月、色々なメディアで定期的にお話させて頂く機会に恵まれております。その媒体の種類も多岐に渡っていますので「どれを見たら良いのか分からない」という声も受けたことがございます。とりあえず、月5本の分析を読んで頂ければその時点で私が一番大事に考えていることが分かる構成にするつもりです。
日経COMEMOでは短期的な話題を
同時に、これまで同様、日経COMEMOの識者としても日経記事に絡めながら論考を提示して参りたいと思います。こちらは今まで通りお読み頂けます。メンバーシップ記事ではより長期的・構造的な話(これまでのnoteを読んで頂ければ大体ご理解頂けると思います)であるのに対し、COMEMOでは短期的・時事的な話と時間軸の長短で棲み分けを作っていくつもりです
※そもそもCOMEMOは日経記事引用とセットですので、時間軸としては短い話が適していると思っていました。私のものだけ、今まで異質に長かったはずです。なお、COMEMOの本数やペースについてはこれまでと同じものが保てるかどうかは走りながら考えます。
株式取引や為替取引などを通じて金融市場動向に関心を持つ方々は「今月の米雇用統計が+〇万人だった」、「今月のCPIが予想より良かった・悪かった」、「FRBの利下げがいつか」などといった短いテーマについての解説をいち早く知りたいのだと察します。確かに日次で取引される方は「長期的に正しくても短期的に間違える」ことは許されないでしょうから、「サクッと分かります」のような簡単解説への需要は相応に理解できます。
基本的に筆者の本質的な考えに触れる部分はメンバーシップで取り扱うテーマとしたいと思っていますが、いわゆる中銀解説や指標解説の類は日経COMEMOで(即ち無料で)、可能な限り発信出来たら良いなと思っています(日経記事とセットで発信する親和性も高いと思います)。いわゆるこうした類は「サクッと分かります」系のコンテンツに類すると察しますが、基本的にこうした指標の早打ち解説の類は世に溢れかえってますから、私は有償の価値はもうかなり薄れているように感じます。
大局的視点の提供
繰り返しになりますが、投資推奨の類は一切やりません。私のやるべきことは大局的視点の提供だと思っています。デジタル赤字、家計の円売り、CFベース経常収支など、過去2年間のnoteで申し上げてきたことがかなり現実世界でも市民権を得てきた感触があります(1年前、サービス収支に注目する議論は殆どなかったはずです)。CFベース経常収支の議論も沢山取り上げて貰えるようになってきました。ちょうど3月にもアップされました:
こうした経緯ゆえに、当方のnoteもご評価頂いていると察しますし、色々なお仕事も頂いています。しかし、「想定内」が続くほど金融市場は甘いところではありません。むしろ「想定外」が発生した時に動揺しないための大局観を養うために毎日勉強あるのみだと思います。
Labo(実験場)として
読者の方々からのフィードバックなども参考にしながら、これからの日本円、ひいては日本経済を一緒に勉強していければいいなと思います。「経済・金融情勢の分析」というと格好が良く聞こえますが、所詮エコノミストは世に通じていない人も多いと感じます。そのためにこうした場を借りて情報発信することで、自身の考えが今を生きる人々のそれと大きく乖離していないのかは逐一観測していく必要があると思います。メンバーシップに「Labo(研究所、実験室)」と名付けたのは、分析の発信を通じて読者の皆様だけではなく、私自身の考えも変容するかもしれないという実験場としてのイメージを込めました。
このような試みが今や国策にまで昇華されるようになった「金融教育」という分野に対し、市場参加者の端くれとして貢献できることになればとても嬉しいです。もしご関心を持って頂ければ是非、覗いてみてくださいませ。