沢田研二 LIVE 2024ツアー「甲辰 静かなる岩」2024年9月22日(日) 市川市文化会館 大ホールライブ評
沢田研二 LIVE 2024ツアー「甲辰 静かなる岩」2024年9月22日(日) 市川市文化会館 大ホールライブ評
今回のライブについての内容は様々な方々が書いていらっしゃるので、ここではメンバー交代に伴う私の心境を記載していきたいと思う。曲目は今回のツアーを通じても「LOVE(抱きしめたい)」が変化したりとマイナーチェンジはありましたが、基本的な構成はそれほど変化は無かったのではないだろうか。沢田研二のコンサートは曲目は安定しており、ローリング・ストーンズの様に積極的な選曲の入れ替えは無い。しかし、沢田研二のライブは曲目は安定しているが、安定しているからこそ、愛すべき曲目を全身全霊を込めて歌い上げる姿がファンの胸を常に打つのである。その強靭な力でもって歌い続ける原動力となったのは、やはりバックバンドではないだろうか。ザ・タイガースからPYG、そしてヒット曲を量産してきた井上堯之バンド。オールウェイズ、ココロ、ジャズマスターと沢田研二は常に変化を恐れずメンバーチェンジ、新しい血を入れることによって、毎回なツアーで新鮮度を保って来たのである。無論、現在のファンの中で1番馴染み深いのは鉄人バンドであろう。沢田、還暦記念の東京ドーム、大阪京セラドームでの80曲ライブを成功させた記念すべきメンバーである。そして、沢田は鉄人バンドを解体して、古希にの時に長年のソウルメイトと言えるメンバー、ギターリストの柴山和彦と2人でツアーを行う。この時にドタキャン騒動が起こるが、それは別の話である。何年かこのコンビを継続し、2人の強固な絆を感じたのであった。そして、今回のツアーで衝撃的なニュースが入ってきた。次回のコンサートツアーで、キーボードの斎藤有太氏以外、全メンバー交代である。そして一時期を除いて40年以上沢田と行動を共にした柴山氏の離脱は衝撃的であった。人生において別れは多々あるものだが、沢田にとって最大の決断であったに違いない。そしてBARAKAのメンバー。特に依知川伸一氏だろう。再合流したと思ったが、別れは突然来た。そしてその他のメンバー、ギターの高見一生、ドラマーの平石正樹とテクニシャンが集結した、日本を代表するプログレバンドだ。考えてみれば、沢田研二と日本に誇るバンドを同時に観れた貴重な機会であったのではないか。そして忘れてはならないのはコーラスである。音楽劇で盟友関係にあったすわ親治、山崎イサオである。この2人の存在感はバンドに重みを加えていたと言えるだろう。このバンドが解体され、次回はキーボード以外新しい布陣になる。その意味を考察してみると複雑な気持ちになる。沢田なりの前進の証と捉えることが出来るが、過去に憐憫しない姿勢を貫いたと言えるかもしれない。特に柴山和彦さんとの別れは象徴的であった。
今回のライブは無論、しめやかな雰囲気はなく、最初からロック全開であった。コーラスを入れたメンバーが沢田と並んで「ス・ト・リ・ッ・パ・ー」を歌い上げる。この光景を観るのは僕はもう最後かと思うと熱い感情が込み上げてくる。そしてパーティ・ソング「TOKIO」。会場のボルテージが一気に上がる。感傷的な気持ちは消え去り80年代の熱狂に誘われる。そして私がこれまで生で聴くのを希求していた「あなたに今夜はワインをふりかけ」が会場に響き渡る。阿久悠作詞、大野克夫作曲の名曲である。70年代の煌びやかな歌謡曲の世界観が蘇る瞬間である。そして80年代を彩る名曲「おまえにチェックイン」。そしてコロナ時代には封印されていた水芸も復活の「カサブランカ・ダンディ」。そして安井かずみの世界観が会場を包み込む名曲、「追憶」。76歳のニーナが聴けると20代の沢田研二もファンも思っていなかったに違いない。そして、近年に発売された曲では前向きで人生の応援歌とも言える「明日は晴れる」。石川県の震災、豪雨災害の中でも我々は支援をし、前向きに生きていかねばならない。沢田なりのメッセージに私は感じられた。そしてこのコンサートでの盛り上がるポイントである「恋のバッドチューニング」。カラーコンタクトをしていた姿が脳裏にフラッシュバックする。40年以上経てもロック・スタンダードナンバーとして色褪せない魅力を放っている。高見氏のうねる様なギターが楽曲に光彩を加えている。そしてザ・タイガースの出発点となった新宿A・C・Bを題材とした「A・C・B」歌詞も「2024年でも歌は流れた」と変えられ、沢田が未来に向かう姿勢が感じられる。そしてファンと沢田研二を繋ぐ曲と言える「マンジャーレ!カンターレ!アモーレ!」。沢田と共にファンも手を振り、一体感が生まれる。そして、「ヤマトより愛をこめて」。沢田のしっとりした歌声が会場を包む。何回もライブで歌われた名曲だが色褪せない魅力を放つ。そして本編は静かに幕を閉じる。
そして、沢田は赤い旗を纏い1人でステージに現れた。石川、能登半島の震災や、自民党総裁戦について、意見を述べたりと世間に対して意見する姿勢を大切にしているのを感じた。そして50歳過ぎてからライブが楽しくなり、還暦ライブで、ザ・タイガース再結成の話題があったこと、去年のさいたまスーパーアリーナで加橋かつみに来てもらいたかったが、残念ながら叶わなかったこと。沢田は30分間饒舌に話続けた。メディアには直接意見を表明しないが、ライブでは時事問題を自身の意見を織り交ぜながら話すのが慣例となっている。沢田のロック気質が垣間見れる貴重な時間となっている。
そしてアンコールは還暦コンサートの冒頭でも歌われた「そのキスが欲しい」会場のボルテージは最高潮に。そして息長くライブで演奏されているロックチューン「気になるお前」。そして柴山さんと2人で演奏していた時にも披露された「さよならを待たせて」。覚和歌子が沢田研二に残した名曲である。いつまでも歌い継いでもらいたい。そしてラストは「LUCKY/一生懸命」である。この曲は現在のバンドで創り上げた、私個人にとっても思い出深い曲となった。考えてみればこの曲で2年間ツアーをしていたことになる。人生に別れはつきものだ。人は必ず死に、この世から消える。沢田研二と現在のメンバーとの繋がりは消える事はない。来年以降のバンドでも30年ぶりに復帰したメンバーがいると聞く。そして、救いは昨年のさいたまスーパーアリーナのライブ映像が残っていることである。いつでも映像でこのメンバーと会える。そこには別れはない。永遠がある。そして別れはあるが、来年に新しいバンドで沢田研二は進化する。それを私は見守っていきたいと考えている。
1.ス・ト・リ・ッ・パ・ー
2.TOKIO
3.あなたに今夜はワインをふりかけ
4.おまえにチェックイン
5.カサブランカ・ダンディ
6.追憶
7.渚のラブレター
8.明日は晴れる
9.恋のバッドチューニング
10.A・C・B
11.マンジャーレ!カンターレ!アモーレ!
12.THE VANITY FACTORY
13.ヤマトより愛をこめて
アンコール
14.そのキスが欲しい
15.気になるお前
16.さよならを待たせて
17.LUCKY/一生懸命
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