2021年3月24日『ザ・カーナビーツ物語』発売‼️
ジュリーこと沢田研二さんや、岸部一徳さんが所属していたグループ・サウンズ時代を象徴するバンド、ザ・タイガースが1971年1月24日、日本武道館で行われた「ザ・タイガース ビューティフルコンサート」で解散して50年。そして沢田研二さんが本格的なソロデビューシングルとなる、岩谷時子作詞、宮川泰作曲『君をのせて』が発売されたのが1971年11月1日(沢田研二さんはザ・タイガース在籍時の1969年12月15日に初のソロアルバム『JULIE』をリリースしているが、実質的なソロキャリアのスタートは『君をのせて』である)で、それから50年。付け加えると、井上堯之、大野克夫、岸部一徳(当時は修三)、大口ヒロシ、そして萩原健一が在籍していた伝説のバンド、PYGデビューして50年。
様々な50年が重なっているのである。やはり、ザ・タイガース、ザ・テンプターズ、そしてグループ・サウンズブームの祖である、ザ・スパイダース。この3つの黄金バンドから2人づつで構成された三位一体バンドPYGの結成、活動休止はある時代の終焉を象徴している。グループ・サウンズブームは星の数ほど有名、無名関わらず様々なジャンルのバンドを生み出した。その歴史はブームの枠を超越して現在奏でられる音楽の土台となっている。ベンチャーズ、ビートルズから派生したサウンドは60年代の若者を魅了し歴史を編んでいったのである。
グループ・サウンズ時代の終焉から半世紀、50年もの月日が流れた。それを総括する本が上梓された。2021年3月24日に発売された『ザ・カーナビーツ物語』である。尊敬する作家であり、友人でもある名和広先生編著、そしてザ・カーナビーツのギタリストであった越川ヒロシさんが監修するという豪華で貴重な書籍である。
越川さんが語るグループ・サウンズブームの黎明期秘話、歴史的存在である「東京ビートルズ」の思い出など冒頭から引き込まれてしまう。そしてグループ・サウンズのアイコンである沢田研二、萩原健一とのエピソードは興味深い。そしてザ・カーナビーツ最大のヒットである『好きさ好きさ好きさ』の誕生秘話も必読である。
この本で肝となるのは、著者である名和氏も書いているが、越川氏の記憶力である。初公開になる秘話が満載だからである。出演した番組、ライブをした時期が正確に記載されているからである。グループ・サウンズ研究本は多数あれど、ブームの渦中にいた当事者がここまで詳細に語る書籍はある意味初めてではないだろうか。
ここからは私の感慨混じりの感想になる。グループ・サウンズブームは前記したが現在のミュージックシーンの原型を作り上げた。それは日本芸能史の分水嶺といえるだろう。
この本の出発点は名和氏とアイ高野との邂逅であることも興味深い。アイ高野からザ・カーナビーツの本を書くように促されるが、翌年の高野の死により企画は頓挫するように思われた。
そこから6年後に歴史は動く。アイ高野7回忌追悼ライブである。そこで越川氏と出会い、名和氏と酒場で杯を重ねるような関係性になる。そして2019年に「カーナビーツが解散してもうじき50年になるんだよね。ここらでカーナビーツの目から見たGSブームを総括した本を出したいんだけど……」。この言葉が正式な出発点となるのである。アイ高野、越川ヒロシ氏。そして名和広氏。運命に導かれるように出会った3人の歴史は本著により、可憐な華となり結実したと言えるだろう。
グループ・サウンズを正式な形として残そうとした名和広先生の尽力に心より敬意を表したい。
そしてザ・ヴィレッジ・シンガーズの笹井一臣、ザ・モップスの三幸太朗、そして越川ヒロシ氏。司会は名和広先生の座談会は、全ての文字が貴重な証言録である。
是非ご購入いただいてご一読いただきたい名著である。
ザ・カーナビーツ物語: カーナビー・ビート・サウンドにしびれて♪ (MyISBN - デザインエッグ社) https://www.amazon.co.jp/dp/4815025975/ref=cm_sw_r_cp_api_i_DTKV2PXR1ASQDAKNNZR3