VRDJ/クラブ演出におけるカメラワーク
皆さんこんにちは。
SHARPNELSOUNDという音楽レーベルで、DJ・トラッカー・コンポーザー・開発者として活動しているDJ SHARPNELと申します。
この記事は、memexさん主催のアドベントカレンダー「VR音楽活動のススメ Advent Calendar 2020」20日目の記事として書かせていただきました。
VR空間で(自分が)DJするところをカッコいい映像に残したい!
VRのクラブで自分がDJしているところをカッコいい映像に残したいと思ったこと、ありますよね。
映像配信イベントに出演する際に、リアル側の人たちと同じくらいイケてるカメラワークで自分のプレイを撮影したい。Dommuneみたいなバッチバチなカメラワークで自分を撮ってほしい。でもワンオペ!
みたいなこと、よくあると思います。
この記事では、VRDJクラブでDJする際のカメラワークについて、これさえやっておけばとりあえずいい感じになる基本的なセッティングについて解説します。
VR内のクラブはUnityとVRMとVirtualMotionCaptureとEVMC4UとCineSwitcherでいい感じに作っておいてください。
作例
この記事でも紹介するカメラワークを組み合わせると次のような動画が制作できます。
DJを撮影するためのカッコいいカメラワークの基本
配信イベントにVR出演して、超いい曲をかけながらバキバキのカメラワークとアクションでブチあがりたい。誰もがそう思う時代です。
DJを撮影するためのカッコいいカメラワークには、いくつかの基本パターンが存在します。
まずは7つの基本パターンをきっちりおさえて、モニタの前のフロアをブチ上げましょう。
きほんのき①下手からダウンショットで上半身+機材
まずは基本ショットといえる下手(しもて)上方からDJに向けてのダウンショット。
このショットは、DJと機材の位置関係がはっきりしており、さらに背後に配置した映像の雰囲気もしっかり入るショットです。機材から少し離れてパフォーマンスしても、ばっちりカメラに映っているのでDJ全体のアクションを撮るのに最適。
忙しく次の曲を探したり繋いだりする合間に、少しカメラ側に視線を送るだけでモニタの前はブチ上げです。
きほんのき②DJブース正面からのあおり
最前列、どセンター。
着席コンサートなら神中の神席である最前どセンは、クラブにおいても最前列のパーティピーポーとともにブチ上がりまくれる超絶神ポジではないでしょうか。
そんな神ポジションからブースを見上げた際に見えるのがこのショットです。
鬼カッコいい映像を背後に、DJ機材を華麗な手さばきで操るDJのかっこよさを最大限に見せるべく、淡々とミックスしているときにこのカットを使いたいところ。
ミックス中は手元やカウンターに集中しがちですが、時々カメラ目線を意識してみましょう。思いがけないアイコンタクトに、モニタ前最前列はブチ上げです。
きほんのき③フロア後方上手客席側からの俯瞰
実際のクラブイベントで多くの場合目にすることになるのが、フロア中央~後方からのこの風景です。このショットでは、DJを中心にブース全景が入ることで、照明演出や映像など箱全体のスケール感をあたかもクラブにいるような感覚で楽しめます。
特に、プロジェクトションマッピングなどで映像演出に力を入れている場合はこのショットと次に紹介する「きほんのき④」の遠距離ショットうまく組み合わせます。
ブレイクからドロップにかけてフラッシュやムービングなどのライティングやVJ映像で空間全体をバチバチに仕上げることで、フロアと一体化したモニタの前はブチ上げです。
きほんのき④フロア後方天井からの俯瞰
こちらも「きほんのき③」同様フロア後方からのショットですが、天井からつるしたカメラや音響ブースにセットされたカメラをイメージしています。DJを中心としてブース全景が左右シンメトリックに映せるとともに、機材も同時に見せられるため、フェーダーワークとシンクロするような演出で映えるショットになります。
ブレイク前のドーン(SE)の瞬間に暗転して、いい感じの歌が流れはじたあたりでDJだけに光があたるような演出ができれば、エモさのあまりモニタの前のフロアはブチ上げですね。
きほんのき⑤機材とDJを背後から狙うバックショット
現実世界では(VRでも)イベント関係者のみ入ることが許されるDJブース内ですが、ここにもカメラは入れておきたいところ。DJの肩越しに見るフェーダーさばきは、DJがもっともカッコよく見える瞬間といっても過言ではないでしょう。
センターには、あえてDJミキサーを持ってくることで、ミキサーを中心としたDJシステムとDJの関係をキレイに映し出すことができます。フェーダーやEQでバチバチのミックス最中こそ、このショットで手元をしっかり見せたいところ。
いつの間にかモニタの前は、ブッキングに苦労してやっと出てくれたゲストDJが見せるバチバチのフェーダーワークとサウンドで盛り上がるフロアをステージ脇から見つめるオーガナイザーの気持ちとシンクロしてブチ上げです。
きほんのき⑥機材直上からのダウンショット
DJ機材の直上から押さえるこのショットは、まさにDJの手さばきにうっとりできるDJマニアの為に生み出された構図です。
2004年に発売されたJeff MillsのDJ Mixビデオ作品「Exhibitionist 」でも多様されたこのショットは、繊細なフェーダーワークとサウンドがシンクロする様子をつぶさに観察でき、DJがいかに音に対して主体的に向き合っているかを見せるカメラワークとして非常に秀逸です。
なかなか思いつかないトランジションルーティンを華麗な手さばきを見せつけながらバッチリつなげば、モニタの前のフロアもJeff MillsのChanges of Lifeがカットインで一瞬かかったときバリにブチ上げです。
きほんのき⑦ブース正面からのズーム
映像をバックにDJを中心にしたブース正面からのショットは、OBS単体でクロマキーアバター+映像+静止画で作れるVTuberの基本構図です。普段Vのトーク配信やゲーム実況などで見慣れている分、奥深いショットといえます。
「きほんのき②」で紹介した正面からのあおりに近い構図ですが、DJと手元と映像のバランスがとれており、DJのフェーダーワークと演出を存分に楽しめる、バランス栄養食というかCOMPのような高い完成度を持ったカメラワークといえます。
これまでいくつかの基本のカメラワークを紹介しましたが、この正面ショットを間に挟むことで映像的な安定感や安心感を動画全体にもたらします。
安心感、安定感あるカットだからこそDJにしっかり視線が集まります。グルーヴを体全体で感じながら、アクションやパフォーマンスで自らブチ上がることで、モニタの前のフロアもつられてブチ上げです。
ワンオペVRDJだけどカメラスイッチしたい!
総務省の統計によると日本における2020年の単独世帯の割合は35%を超えており、VRDJもその多くは単独世帯もしくはワンオペVRDJと考えられています。
(出典)2015年まで総務省統計局「国勢調査」2020年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)2018(平成30)年推計」(2018)
これまで紹介した基本カメラワークをUnity内のシーンに実装したとして、ワンオペVRDJがプレイしながらカメラワークを切り替えるための方法について解説します。
CineMachineとCineSwitcherによるワンオペカメラスイッチの実現
あきら氏のVirtualMotionCapture、Segmentation Fault氏のEVMC4Uと共にワンオペ3D VTuberが3種の神器として神棚に最新バージョンを奉納しているのがオレンジ氏が開発・公開しているCineSwitcherです。
このCineSwitcherは、ワンオペVTuberでもバチバチのカメラワークを可能にするために作られたソフトで、Unity標準パッケージのCineMachineと組み合わせて使用します。
使い方はオレンジ氏の公式紹介動画を見てください。マジで2分でできるのでビビります。
この記事で紹介したカメラワークをCineMachineのBlendListCamのvcamとして設定し、CineSwitcherに登録します。
鬼かんたんですね。
あとはキーボードのNumキーをたたけば任意のカメラに切り替わって、ブチ上が・・・りそうであがらないのがVRDJです。
ゴリゴリにミックスしてるときにカメラワークまで手が回りませんよね。トリガーも表情とかに割り当てちゃってるし。
そんな時にお勧めなのがフットスイッチです。
フットペダルでワンオペVRDJのカメラ切り替えをもっと手軽に
両手が常時忙しくなりがちなワンオペVRDJ時に重宝するのが、足でキーボード操作ができるフットペダルです。
SHARPNELSOUNDでは、こちらの「 USB3連フットペダルスイッチ マウス操作対応 RI-FP3BK 」を普段使用しています。
似たような製品も出ているので、おそらくOEM品で同じようなものかと思います。
この製品のよいところは、各ペダルのキーバインドを自由に変更して書き込むことが出来る点にあります。ソフトウェアを介さずHIDで直接動作するため、CPUに無駄な負荷もなくキーボードと同じレスポンスで操作が可能です。
真ん中のペダルに「R」キーでランダムカメラ、左右のペダルは①の下手ダウンショットと⑦正面ショットの切り替えキーを設定して、キメアクションにカットが追従できるようにしています。
この他にもTimelineを使ってカメラ切り替えを自動化する方法もあります。
いろいろ試して自分にあったスタイルを見つけましょう。
ワンオペVRDJもカッコいいカメラワークで画面の前のフロアをブチ上げよう!
VRでDJするだけでも大変なのに、カメラワークとかいる?と思われるかもしれません。
いまや世界各国のトップDJやフェスティバルによるオンラインでのDJ配信全盛の時代です。リアル側のDJ配信では、ライティングや映像、そしてカメラワークにいたるまでかなり凝った演出が行われています。(時にはドローンカメラも!)
VRならではの演出に激アツなカメラワークで、ぜひ自分のプレイもカッコいい映像に仕上げていきたいですね。
今日買った激アツトラックをモニタの前のフロアに届けたい。
そしてブチ上がりたい。みんなで。
そんな気持ちで日々ワンオペVRDJに取り組んでいる皆様の参考になれば幸いです。
DJ SHARPNEL
謝辞
いつもかわいい【3Dモデル】Shaclo -シャーロ- by ⊿S.I.N様
アバターに命をふきこんでくれるVirtualMotionCapture by あきら様
バーチャルの世界に連れていってくれるEVMC4U by Segmentation Fault様
世界を色んな角度で見せてくれるCineSwitcher by オレンジ様
この記事を書く機会をくださったVR音楽活動のススメAdvent Calender主宰memex様
参考文献
DJ SHARPNEL著「なれるバーチャルDJ」(SHARPNELSOUND)