〝長文アレルギー〟は「書けない」のではなく「書き方を知らない」だけ。
創作大賞の募集がはじまって、1週間が経ちました。
大手メディアから書籍化・映像化のチャンスということで、昨年は3万4000もの応募があったそうです。今年はもっと増えるでしょうね。
しかし一方で、
「自分に創作の才能なんて……」
「そもそも、そんな何万字も書けないよ」
と思った方も多いのでは?
長い文章を書くのが苦手。
話がふくらまない。
おもしろさが今ひとつ伝わらない。
実はかつての僕自身もそうでした。そこで今回は〝長文アレルギー〟の方に伝えたいことがあります。
あなたが長い文章を「書けない」のは、まだ「書き方を知らない」だけです。
僕が学んだ長文の書き方、それはこのサイクルを意識することでした。
フリを作る
ふくらませる
立ち止まる
はじめに「フリ」とはなにか。一言で定義するなら……、
書き手が伝えるべきことに、
読者の意識を向けさせるための「布石」「前置き」
でしょうか。
長文が苦にならない人は「フリ」が丁寧です。量も、質も。
逆に長文アレルギーの文章は、得てして「フリ」が足りません。起こった出来事を羅列するだけになりがちです。
夏休みの宿題で書かされた日記をイメージしてください。あんな感じ。
まずは「フリ」の〝回数〟を増やすことからはじめましょう。
期待感を煽ったり、疑問を投げかけたり、意味深な言葉でほのめかしたり、実に様々な「フリ方」があります。
では、どこで「フリ」を作ればいいのか。タイミングは三つあると思ってください。
僕はそれぞれ〝大フリ〟〝中フリ〟〝小フリ〟と呼んでいます。
経験上、抜け落ち気味なのは〝中フリ〟です。
書き手の立場からすると、話題や場面が変わるタイミングって「フリ」がなくても違和感なく話が進んでしまうんですよ。
しかし、ここを意識できると自然と文章は長くなっていきます。実際に僕は〝中フリ〟を覚えたことで大きく変われました。
次の段落、あるいは次の章に進むときがチャンスです。
次は「ふくらませる」について。
こちらは実例を紹介しましょう。
2017年に『報ステ』で放送した、バドミントン・奈良岡功大選手の企画。
当時、僕たちは彼の原点といえるエピソードに注目しました。
それは、青森の実家で行なっていたという、壁打ち。
部屋の壁とラリー、ラリー、ラリー、ラリー、ラリー……。そんな練習を7年も続けていたら、遂には壁に穴が開いてしまったというんです。
このエピソードをふくらませるとしたら、どうしますか? 僕が出したアイデアはこうです。
「何発打ったら穴が開くか、実験してみよう」
自宅の壁と同じ材質のもの、そしてシャトルを自動で打ち出すノックマシンを用意して、穴が開くまで数えてもらいました。
結果、何万発だったかな……?
後に、ディレクターからは「かなりしんどいロケだった」と聞かされました。打ち出されたシャトルを拾って拾って拾って、マシンに装填して装填して装填して、終わりも見えなくて、体力的にも精神的にも辛かったと。
僕が平謝りしたのは言うまでもありません笑
あと、おもしろかったのが競歩の企画。
見た目は地味なんですけど、生で観ると速い速い。
鈴木雄介選手が持つ20km競歩の世界記録(1時間16分36秒)は、なんと平均時速15.7kmで移動していることになります。
しかし、数字だけ言われてもピンと来ない。そして、どうせならもっとふくらませたい。そこで採用したのが、次のアイデアです。
不動産広告などで見かける「徒歩10分」は、競歩の選手が歩くと何分になるのか?
正解は通常の3分の1、およそ3分でした。
話をふくらませる方法はいくつかある(例え話で置き換える、ディティールを描くなど)のですが、中でも「やってみた」系はオススメです。
創作においても、登場人物を動かしてみる。是非やってみてください。文章はぐっと長くなります。
最後に「立ち止まる」なんですが、ちょっと謎ですよね。
実はこれ、少し長く書けるようになってからのお話です。
そもそも長い文章って、読むと疲れませんか?
長くなった分だけ情報が詰め込まれているのだから、当然です。そこで重要になってくるのが「立ち止まる」という考え方。
僕は「読む」という行為は「泳ぐ」ことに似ていると思っています。
短距離(短文)なら、無酸素で泳ぎ切れる。
しかし、長距離(長文)を泳ぐには〝息継ぎ〟がほしくなる。
具体的には、書いてきたこと軽く整理してあげる、キーワードをくり返してあげる、笑い話などで緊張を解してあげる、切り口を変えて目線を下げてあげる……、などなど。
〝息継ぎ〟のブロックを設けることで、文章は長くなります。しかし、読者の疲労は回復します。
余裕が出てきたら、試してみてください。
さて、今回の記事を読んで、少しでも〝長文アレルギー〟が軽くなるといいのですが。よかったら、こちらも参考までに(↓)。
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