陸上・福島千里さんの企画で〝心のノート〟にメモったこと。
きのう、陸上の福島千里さん(33)が引退会見を開きました。
🏅100mの11秒21、200mの22秒88は今も日本記録
🏅五輪は北京、ロンドン、リオと3大会に出場
🏅2011年の世界陸上で日本女子初のW準決勝進出
🏅日本選手権は100mで7連覇、200mで6連覇
と、長く日本の短距離界をけん引してきた選手です。小4から陸上を始めて23年、おつかれさまでした!
福島さんについては『報道ステーション』で企画を担当したことがあります。2010年、100mの日本記録を出したタイミングでした。
実はその企画が、僕の放送作家人生に大きな財産を残してくれたんです。
企画はどんな内容だったか。
筋骨隆々の陸上短距離界において、スレンダーな福島さんはどうして速いのか? その答えは「上下動が少ない独特な走り」にあった、というものでしたが……。
なんと、完成まで大苦戦!
原因はインタビューを文字起こししたもの(キャプション)にありました。
速さの理由を尋ねても……、
「とにかく速く走る。スーって感じ」
意識していることを尋ねても……、
「前に前にって思っています。前に、前に、前に、前に」
普通のインタビューだと、ここに何回か「何故?」を重ねていくことで、より具体的になっていったり、本人も気付いていない思いが出てきたりするものなんですが、福島さんの場合はそうなっていかない。
最初にキャプションを読んだ僕はこう思いました。
「つまらん、困った!」
しかし、それは大きな間違いだったんです。
解決策はインタビュー映像にありました。
チェックしてみると、つまらないと思っていた部分が、なんかおもしろい。
理由は、福島さんのほわ~っとした話し方と表情。
言っていることは抽象的だけど、雰囲気が独特だから聞けてしまうんですよ。
「人の言葉って、文章で読むのと映像で見るのとで印象が変わることがあるんだ」
これは僕の放送作家人生における大発見でした。
企画は好評。キャプションを読んだ時点で、こんな未来が待っているなんて、思ってもいませんでした。
💫💫💫
『宇宙兄弟』という漫画に、デニール・ヤング(ヤンじい)というキャラクターが登場します。NASAで宇宙飛行士候補生を相手に戦闘機による飛行訓練を行なっていた教官です。
ヤンじいには名言があって……、
覚えておくべき知識や情報は「頭のノートにメモっとけ」
心に刻んでおくべき気構えは「心のノートにメモっとけ」
〝頭〟と〝心〟……、二つのノートを使い分けろと言うんです。
12年前、僕が福島さんの企画で学んだことは、今も心のノートにメモってあります。